杉山すぴ豊
アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
ようやく見られる『ニュー・ミュータント』のアニャ・テイラー=ジョイの活躍は必見!
今回からまたSCREENさんの方で連載コラムを書かせていただけることになりました。これも読者の皆様のおかげです!本当にありがとうございます。
さていままでの『すぴのアメコミ・ワンダーランド 』はアメコミ映画が中心でしたが、今回からはタイトルを『アメコミ!ホラー! SF !すぴのジャンル・ジャングル』と称しアメコミに加えいわゆるジャンル・ムービー(ホラー、SF、アクション系の映画。この手の作品はファン層がはっきりしていて、ジャンル分けも容易だからこういう風にくくられることがあります)全般をとりあげていきます。
アベンジャーズがとびだし、『13日の金曜日』のジェイソンと出くわし、ゴジラが吠える!みたいなワクワクする世界に皆様をお連れするガイドを目指します。どうぞよろしくお願いいたします。
さて記念すべき第一回はアメコミ・ヒーロー物でもありホラーでもある『ニュー・ミュータント』。2021年2月3日からデジタル先行配信、3月31日にブルーレイ&DVDが発売。
ミュータント(突然変異、新人類)ときいてピン!ときませんか? そうこれは「X-MEN」コレクション。そしてファンにとって「ついに見れる!」と声をあげたくなる作品です。
というのも本作は当初2018年の4月13日に全米公開予定だったのですが、すったもんだのあげく2020年8月28日にやっとアメリカ公開、そして年をあけて日本上陸です。
なぜこんなに時間がかかったのか? X-MENはマーベル・コミックが原作ですがマーベルがディズニー傘下でMCU=マーベル・シネマティック・ユニバースを展開する前に20世紀スタジオに映画化権を渡していました。
なのでコミックではアベンジャーズvs.X-MENとかあるのに、ヒュー・ジャックマンが出演する「X-MEN」コレクションは20世紀スタジオ、ロバート・ダウニーJrのアベンジャーズ系はディズニーで両者は交わらず。20世紀スタジオはX-MENのコミックに登場するサブキャラを使ったスピンオフ映画も作り始めます。
例えば『デッドプール1&2』。そして今度はX-MENにまだ参加していない若きミュータントたちを描いた『ニュー・ミュータント』の製作に着手。ところが一旦が出来上がった作品を20世紀スタジオは気に入らず公開が延期。
そうこうしていたら20世紀スタジオ自体がディズニーに買収。これに伴い「20世紀スタジオのX-MEN系映画」は一旦キャンセル。MCU版X-MENに向けての準備が始まります。
もし『IT』 の少年たちがミュータントだったら……?
ここで宙ぶらりんなってしまったのが最後の「20世紀スタジオのX-MEN系映画」でありながら未公開の『ニュー・ミュータント』の“処遇”。しかしディズニーは本作を気に入り劇場公開を決定。
ファンは喜びましたが今度はコロナ禍で公開&リリースが伸びたわけです。冒頭でも触れましたが本作の特長はホラー要素。A24、ブラムハウスの台頭、ジェームズ・ワンの『死霊館』バース、スティーブン・キングがブームとアメコミ・ヒーロー物と並んでホラー映画が元気です。
従って人気の2ジャンルの融合=ヒーロー物×ホラーは脈があると考えたのでしょう。『ニュー・ミュータント』では悪霊熊や笑う怪人などオカルトな敵と戦います。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)のあの少年少女たちがもしミュータントだったらペニーワイズとどう戦うか?みたいな映画です。当初の公開予定が4月13日だったのもホラーらしく13日の金曜日を初日にしたかったから。
興味深いのは20世紀スタジオが公開を延期したのはもっと怖くしたから。逆にディズニーはあまり怖すぎないから公開して良しとしたそうです。
個性派美女アニャ・テイラー=ジョイが“不良少女×剣と魔法”的なイリアナを演じており、これがヒーロー映画史に残るかっこよさ!彼女の活躍を観るだけでも一見の価値はあります。ちなみデッドプールは『ニュー・ミュータント(ツ)』のコミックでデビューしました。
デッドプールについてはライアン・レイノルズ出演でR指定(ディズニーなのに!)でMCUに登場させるということが発表されました。ならばアニャ・テイラー=ジョイもぜひ!(笑)