逃避行の果てに待つものとは──?
愛する人のためにどこまでできるか。本作『彼女』は、そんな究極の問いに挑んだ映画。愛する人のために一線を越えてしまった女、そして一線を越えさせてしまった女。2人の女の愛を超えた逃避行の果てに一体何が? 原作は熱心なファンも多い中村珍の漫画『羣青』。激しい暴力描写と性描写から映画化は難しいとされていたが、Netflix映画として遂に実現。
主演は、『あのこは貴族』(2021)などの水原希子と、『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)などのさとうほなみ。意外なことに2人とも本作が映画初主演作。
水原は永澤レイとして、さとうは篠田七恵として、激しく感情をぶつけあいながらも、お互いを求めあう主人公たちを熱演している。彼女たちの脇を支えるのは、真木よう子、鈴木杏、田中哲司、新納慎也ら日本映画を代表する名優陣。主人公2人の高校生時代を演じる南沙良と植村友結の瑞々しい演技も見逃せない。
監督を務めたのは『ヴァイブレータ』(2003)や『さよなら歌舞伎町』(2014)などで孤独な者たちが愛を求める姿を鋭く描いてきた廣木隆一。同監督のNetflixオリジナル作品はドラマシリーズ『火花』以来。原作にはなかった要素も取り入れながら、配信作品ならではのハードな描写も交えて本作の世界観を作り上げた。
注目ポイント
関係性の変化がリアル!
順撮りで撮影された本作。二人三脚で過酷な撮影を乗り越えた水原とさとうの距離感の変化が、映画の主人公たちにも反映されている。後半は主演2人のイメージで脚本が当て書きされたほど。リアルに変わりゆくレイと七恵の関係性に要注目だ。
音楽も心に残る作品に
テーマ曲を手掛けたのはレジェンド・細野晴臣。孤独な主人公2人を優しいメロディで包んでいる。また、YUIの「CHE.R.RY」が重要なシーンで登場するほか、ノラ・ジョーンズやカーディガンズなどの楽曲が映画に彩りを添えている。
登場人物
永澤レイ(水原希子)
美容整形外科医。裕福な家庭に生まれ育ったが、同性愛者であることを家族に話せず苦しんでいる。現在はパートナーの美夏(真木よう子)と同棲中。
篠田七恵(さとうほなみ)※画像左
貧しい家庭で父親の暴力を受けながら育った。結婚を機に家から抜け出すが、夫からも壮絶なDVを受けている。レイとは高校時代にある約束を交わしていた。
Netflix映画『彼女』
Netflixにて全世界独占配信中
美容整形外科医のレイ(水原)は、バーで出会った男・孝太郎(新納慎也)を彼のマンションで殺害する。実はその前日、彼女は高校時代の同級生・七恵(さとう)と10年ぶりに会い、七恵が夫である孝太郎からDVを受けていることを知らされていたのだ。レイの決断と行動に怒る七恵だったが、見捨てることもできず、2人は逃避行に出る。
監督:廣木隆一
脚本:吉川菜美
出演:水原希子、さとうほなみ、真木よう子、鈴木杏、田中哲司