ご本人は『ホラー作品ではなく、純愛映画です!』と前置きしつつも、怖くて面白いリカの魅力を語ってくださいました!
生身の人間だと思ったら、映画版は超越していました(笑)
――SCREEN誌面の方でも、『ホラー映画特集』を考えてまして……。
「ホラー映画かなぁ~~(笑)? そうかなとも思いますが、恋愛映画でもあるのかな(笑)?」
――失礼しました(笑)。今回、ドラマから、まさかの映画化! そもそも、『リカ』というキャラクターに対して率直に思ったことは何でしょう?
「あまり演じたことのない役なんです。猟奇殺人をするような、怖いだけの人物に描かれているわけではなかったんです。リカなりの正義の言葉を発するところがありますし。本当はすごくサイコな人間なんですが、それだけではないリカの魅力がそこにあったのでお受けしました。ただ……普通では考えられないような、舌打ちをするとか、‟死ねばいい”と平気で言うところとか。それこそ、普通に『28歳』と言い切るとか……。果たしてそんなリカを演じて、視聴者のみなさんに受け入れていただけるのかな?という心配はありました」
――実際、演じてみて、反応はいかがでした?
「結果的には一般視聴者の方に受け入れていただけて嬉しかったです。まず私が『28歳』と言い切るような、そんな面白い役ってないじゃないですか! それに、裏で舌打ちするならまだしも、平気で目の前の相手に対して舌打ちする人物なんて、なかなかいないですよ(笑)。そんな面白い要素がいっぱいのドラマで、周囲の方たちも喜んでくれていました」
――迷いのないリカのキャラクターが好きです(笑)!
「すごいですよね(笑)。リカは他人なんてどうでもいいわけですから! 清々しいです(笑)」
――映画版のリカはパワーアップしていますね。
「生身の人間だと思っていたら、映画版は超越していましたね(笑)。‟え!? リカ、飛んじゃうんだ~?”と驚きました。普通の映画だと思って観ていただくと、痛い目みますね(笑)。面白がってもらえると思いますし、切なさも増したラブストーリーに仕上がっていると思います」
――ドラマから映画を通して、リカの抱える闇の部分って、高岡さんはどう分析されていますか?
「リカの場合はちょっとだけ特殊な家庭環境で生まれました。もちろん、生まれ育った環境で子どもは変わるとも思いますが、リカは、彼女自身が特殊な人間なんだと思います。誰のせいでもなく、リカという人物は突然変異的で、生まれ持った性質だと思います」
――そんな特殊なリカですが、共感できる部分ってありますか?
「自分の愛の邪魔をする人はすべて排除するというところは、まったく共感できないです。もはや共感とかの範囲の話ではなく、あり得ないと思っています。ただ、愛する人に対してのまっすぐな想いやピュアな気持ちは共感できます」
――リカみたいな方は少ないと思いますが、高岡さんの思う‟危険な女性のタイプ”ってどういう方だと思います?
「リカの場合は恋愛ですが、何かに依存するタイプは危険なんじゃないかなと思いますね」
――ちなみに、リカの可愛いと思う面はありますか? 映画だと絵があまり上手くないところが……(笑)。
「あのシーンはすごく可愛かったですよね。プロデューサーの方が、ヘタ上手な絵を使いたいとこだわっていたんですよ。私が描いた絵ではないですよ(笑)! まだ会えていない運命の男性(市原)に対して妄想を膨らませ、‟じゃあ、似顔絵を描こう”‟それを3Dプリンターに起こして人形にしよう”という発想は、普通はしないですよね(笑)。あれはリカの究極のピュアな部分ですよね」
――ピュアが過ぎますね!
「ピュアが過ぎると怖いんですよ(笑)」
‟ターミネーター”とSNSで盛り上がるも、本人的には目からウロコ
――ドラマで見せた高岡さんの走行シーンがSNSで話題でした。
「追いかけるシーンで‟どうしたら、速く見えるか?”と監督やカメラマンと試行錯誤していた中で、‟それすごく面白い!”という話になったのが、あの走行フォームです。すごく疲れる動きだったんですが、速く見えて、かつ、面白く見えるんだったらと思い走っていました。ドラマを観た方が‟ターミネーターみたいだ”と盛り上がってくれたんですけど、本人的には‟そんなに面白かったかしら?”と目から鱗でした(笑)」
――面白いし怖かったです。
「言われた私はピンときてなかったのですが、シュワルツェネッガーじゃなくて、追っかけてくる方(T-1000)じゃない!?って、独りで突っ込んでました(笑)」
――洋画のオマージュを散りばめているのかな?と勝手に解釈していました。宙から舞い降りる高岡さんが、メリー・ポピンズのように見えましたし。
「そう言われる方もいました。特にポーズを指定されたわけではないのですが、空から降ってきたら、誰しもああいう気分とふるまいになるんだと思います。ふわっと両手を広げて、すうっと降りてきて……。今度、ぜひ、降ってみてください(笑)!」
――(笑)。あんなに優雅に舞い降りたのに、躊躇なく注射器を刺しましたよね?
「ね~(笑)。油断できないですよね~(笑)」
――高岡さんが、これまでいちばん怖いと思った映画って何かありますか?
「ほぼホラー映画は観ないのですが。うーん、ホラーじゃないかもしれないけれど、『羊たちの沈黙』。それがいちばん怖かったかな……」
――リカも同じようなことしていますよ(笑)。
「あはは。そうかもですね(笑)。でも、食べてはいないけどね、リカは」
――レクター博士みたいには?
「まさか!……あ!でも、もしかして……!? いや、そこまではやってないはずです(笑)」
――本作でいちばんの観どころはどこでしょう?
「ワイヤーアクションは、過去に一度しか経験がなかったので、この年齢でやらせていただけると思ってもいなかったです。体を張った撮影は、想像以上に、この作品の面白さをさらに底上げできたシーンになったと思います。ドラマから映画化されて、そのシーンがエンターテイメント作品として大きな要素になっているので、ぜひ注目して欲しいです!」
高岡早紀/Profile
1972年12月3日生まれ、神奈川県出身。88年デビュー。女優・歌手と長きにわたり活躍。94年に『忠臣蔵外伝 四谷怪談』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。近年の主な出演作に映画『雪の華』(19)、『ファーストラヴ』(21)、ドラマ『桜の塔』(テレビ朝日)、『おかえりモネ』(NHK)等。初のエッセイ本「魔性ですか?」が発売中。
『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』
6月18日(金)公開
山中でスーツケースに入った死体が発見された。被害者の身元は、3年前、逃走犯の雨宮リカ(高岡早紀)に拉致されて行方不明になった本間隆雄(大谷亮平)だった。警視庁捜査一課の奥山次郎(市原隼人)は、潜伏中のリカをおびき寄せるため、偽名を使いマッチングアプリでリカを探し出すことに成功するが、次第にリカにのめり込んでいく――。
監督/松木創 原作/五十嵐貴久「リカ」「リターン」(幻冬舎文庫)
出演/高岡早紀、市原隼人、内田理央、尾美としのり、マギー、佐々木希 他
配給/ハピネットファントム・スタジオ
©2021映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』製作委員会