亡き同性パートナーの母親とその孫の家に間借りをするジエンイー(モー・ズーイー)。ある日、母親が急死し、殺人を疑われ罪を認めるが……。家族を守るため罪を背負う青年の姿を通して、血のつながりを越えた家族の絆を描いたヒューマンドラマをチェン・ヨウジエ監督が描く。日本語が堪能なチェン監督が、作品誕生の背景などについてインタビューに応えてくれました。

――子役のバイ・ルンインはオーディションで決めたのですか?

「キャスティングオーディションで、同じ年の子どもたちとひと味違うと感じました。彼はほぼ大人の俳優と同じ感覚の持ち主でした。だから、大人のアドバイスがいらないんです。逆に彼の方から僕にアドバイスをしてくれたこともありました。例えば、『このセリフは、子どもの世界だとわざとらしいよ』とか教えてもらいましたね(笑)。オーディションの中でいちばんこの役を理解していたと思います」

画像: ヨウユー役:バイ・ルンイン

ヨウユー役:バイ・ルンイン

――オーディションの場から、彼は違いました?

「実は討論しあったんですよ。この役はどうしてこういう行動をとるのか?とか。彼が役に対する理解を極めていたんですよ。僕はあまり演技を見るオーディションをしないんですよ。脚本と役に対しての理解を見たいんですよね」

――監督の作品だとそうなんですね?

「役へのアプローチの仕方が重要になります。解釈は人それぞれだから、何通りもあると思いますが、僕と同じルートを辿っているかというのをオーディションで確かめるんですよ。だから彼ともオーディションを3回して、じっくり話しました」

画像: ――監督の作品だとそうなんですね?

――本作では、山が特別な場所として描かれてます。大事な場面で使った理由は?

「まず、台湾の山はとても美しいと思うんですよね。個性的で。海外にも雄大な山はたくさんありますが、台湾の山は一つ一つが違う顔を持っているんです。台湾の山というのは、例えば海外に住む台湾人が台湾の山を見ると、『これは故郷だ』という気持ちになるんです。台湾人にとって山は故郷と同じくらいの扱いなんですよね。映画のなかで、山の景色を出したいのはそういう理由もありました。ストーリーの中では、山こそが彼らの居場所だったんですよ。山はすべての生き物を平等に見ているんです。山の中のテントが彼ら(ジエンイーとリーウェイ)にとって、誰からも咎められることのない家なんです。映画全体が『家』というものに対するコンセプトですので、山自身も台湾人にとっても家だし、二人のキャラにとっても家なんですよね」

――監督が個人的にオススメしたい台湾の絶景スポットとかありますか?

「僕が映画を撮った山は、霧の多い雪山なんですね。登山するには難しいところですが、3800メートルくらいの高さでとても美しいんです。もう一つは緑がたくさんある山なんですけど、合歓山です。すごくたどり着きやすい山です。車で行き、駐車場から2時間ぐらい登ったら着くような身近な山です。もし、台湾に来られる機会があれば、ちょっと足を延ばせば行ける山なのでオススメです。映画のなかでは触れてないですが、合歓山の星空がものすごく有名なんですよ! 星を見る広場があって、みんなそこに夜空の星を行くんです」

――監督がこれまで影響を受けた映画監督ってどなたかいらっしゃいますか?

「色んな監督の影響を受けていると思いますが、日本の是枝裕和監督の作品は、昔からたくさん観ています。実は、『歩いても 歩いても』の小説の中国語版は、僕が翻訳しました。あの映画がものすごく好きなんですけど、小説を先に翻訳していたので、映画を後に観たんですね。すると、映画でしかできない表現を魅力的になさる方ですごくすばらしかったんです。樹木希林さんのシーンはゾクっとしたぐらいで印象に残っています。是枝監督の作品の中で何度も繰り返して観たのは、その作品ですね」

――日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

「見どころのひとつは、モーの演技です。俳優が素晴らしいのはもちろんですけど、彼とは、細かい演出をし合ったので、彼の演技をよく観て欲しいです!」

チェン・ヨウジエ

画像: 『親愛なる君へ』チェン・ヨウジエ監督が描く‟家庭”の在り方

1977年台南生まれ。多数の映画・テレビドラマで監督、脚本、俳優、プロデューサーを務める。大学時代に16ミリフィルムで短編映画『私顏(原題)』、『シーディンの夏』を撮影。『シーディンの夏』が金馬奨最優秀短編映画賞を獲得。脚本・監督作品『⼀年の初め』、『ヤンヤン』が国内外の映画祭で高い評価を得る。ドラマ「太陽を見つめた日々 シーズン1,2」、テレビ映画『野蓮香(原題)』や、有名歌手のMV等も多数監督。映画『太陽の子』ではプロデュースと共同脚本・監督を、先住民テレビ局のテレビ映画『巴克力藍的夏天(原題)』ではプロデュースを務める。さらに俳優としても TV ドラマ「波麗士大人(原題)」、「鏡子森林(原題)」等、多数のドラマや短編映画に出演。本作『親愛なる君へ』は4本目の長編監督作品となる。

親愛なる君へ
7月23日(金)シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開

配給: エスピーオー、フィルモット
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