〝世紀のイケメン〞ケヴィン・コスナー
80年代から90年代にかけて〝世紀のイケメン〞としてハリウッドに君臨したケヴィン・コスナー。92年の『ボディガード』で人気は頂点に達した。当時、映画のキャンペーンで初来日したが、確かに独特のオーラがあり、会場にいた人々(特に女性)はみんなケヴィンに夢中になった。
94年には『ワイアット・アープ』で再来日したが、そのイケメンぶりは続いていて、ハリウッドのスター・パワーを見せつけた。正義感が強い役が似合い、好感度の高い爽やかな容姿だったが、あらためて歩みを振り返ると作品のクオリティや話題性にも恵まれていたことが分かる。
1955年1月18日、カリフォルニア州のリンウッドの出身。カリフォルニア州立大学を出た後、俳優をめざすようになり、サウス・アクターズ・コーポで演技を学ぶ。初期の出演作『再会の時』(1983)等では出番をカットされるが、『ファンダンゴ』(1985)に初主演。87年の大ヒット作『アンタッチャブル』で脚光を浴びた。すでに30歳という遅咲きだった。
その後は『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)等の話題作に出演し、監督・製作・主演の大作『ダンス・ウィズ・ウルブス』(1990)はオスカーの監督・作品賞受賞。『JFK』(1991)ではオリヴァー・ストーン、『パーフェクト・ワールド』(1993)ではクリント・イーストウッドなど、ハリウッドの人気監督とも組んだ。
ただ、90年代の後半になると『ウォーターワールド』(1995)、『ポストマン』(1997、監督も)などの失敗作があり、後者はラスベリー賞の最低男優賞や最低監督賞も受賞。
しかし、その後、西部劇調のテレビドラマ「ハットフィールド&マッコイ」で見事に復活し、数々の演技賞も獲得。『マン・オブ・スティール』(2013)ではスーパーマンの父親役を演じて注目された。近年は『ドリーム』(2016)、『モリーズ・ゲーム』(2017)等の助演で評価され、渋い魅力も見せるようになった。
サイコスリラーの新作『すべてが変わった日』では不幸な環境にいる孫息子を取り戻すために妻(ダイアン・レイン)と共に戦う元保安官の役。寡黙ながらも、いざという時には頼りになるタフな主人公を好演している。
私生活では離婚と再婚を経て5人の子供の父親(現在の妻はデザイナーのクリスティーン・バウムガートナー)。モテ期を経て、今は成熟した男優となったコスナー。スランプも乗り越え、イケメンからイケオジになることで、長いキャリアを獲得している。
『すべてが変わった日』チェックポイント
『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』などでクラーク・ケントの両親役で共演しているダイアン・レインとの夫婦役は安定の呼吸。
女家長・ブランチ(マンヴィル)が暴力で支配する異様な一家。話が分からない彼らから孫を取り戻し家族を守るために、果敢に立ち向かう。
“求められるっていうのはいつでも嬉しいよね”(インタビュー)
── 観客にこの映画を見てどんな体験をしてほしいと思いますか?
まあ、よく“観客に何を感じてもらいたいですか”という質問をよく受けるんですが、私の答えはありきたりで、“お金を払うだけの価値があったと感じてほしい”ということだね。ちゃんと座って映画を一本観るには時間を要するし、映画館に足を運ばなくちゃならないし。
だから映画を観た後に、ずっと忘れられない何かを感じてくれたらいいと思うね。多くの映画、作品で溢れているので、これも観なくてもいいやと感じられてしまうのは嫌だな。今、(こんな状況だから)映画に行列ができるってこともないと思うけど、でもだからこそ皆に見てほしいと思うよ。
──トーマス・ベズーチャ監督との撮影はどうでしたか?
「脚本を書いた本人だから、書かれたものに愛着がある。スクリーン上に出ていてもそうでなくても、書かれていることを大事にする僕の性格をよくわかってくれたと思う。それはダイアンに対しても同じだったと思う。監督は僕にこの役をやってもらいたいとおもってくれたわけで、求められるっていうのはいつでも嬉しいよね」
── 楽しかったシーンなどで特に印象に残っていることはありますか?
実は僕はリハーサルが大好きでね。他の人がリハーサルを一生懸命やっているのを見るといいなと思う。たとえ映画に入らなくなったシーンだったとしても、リハーサルをすることで新しい発見があると感じるんだ。僕はこの仕事が大好きだからね。リハーサルから得る情報は多いよ。幸せを感じるね。
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