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杉山すぴ豊
アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
『スパイダーマン』新作に悪魔メフィスト登場?
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編がリリースされ大きな話題となりました。トム・ホランドくんによればこの予告編で描かれるのは「氷山の一角」だそうです。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』も後半の驚きの展開は予告編に一切出てこなかったですよね。またマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は予告編をわざとファンがミスリードするようにつなぐので、この予告だけで内容を推理してもハズれる可能性は大(笑)。
一見、ピーターを助けるためにドクター・ストレンジが魔法を使ったことでマルチバース現象が発生し、スパイダーマンが大変なことになる、という展開っぽいですが、ドクター・ストレンジがそんなに間抜け?実はコミックでは似たような話があって、メイおばさんの命を救うためピーターがメフィストという悪魔と契約し彼の人生が変わる。
このとき世界の人々はスパイダーマンの正体がピーターだったことを忘れたり、ピーターとMJの幸せな生活がなくなったりします。結構、この予告編でドクター・ストレンジが言っていたことに近い。もしかするとこのドクター・ストレンジは悪魔メフィストが化けている?『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の予告であのミステリオがヴィランだと思った人は(一部のコミック・ファンを除いて)ほとんどいないと思います。ただ予告を観てこうなるだろうな、と思ったことを気持ちよく裏切ってくれるのもMCUの楽しさです。
“館”から飛び出した『死霊館』新作
さて悪魔、気持ちよく裏切ってくれる、と言えば人気ホラー映画シリーズ最新作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』もかなり変化球。この死霊館シリーズは様々なスピンオフが作られているので色々なホラー映画のパターンが盛り込まれていますが、基本ラインとなる本家『死霊館』は本シリーズの生みの親であるジェームズ・ワンが監督し、また“館”という名前のとおりお化け屋敷ものです。そして実話に基づいています。
しかし『悪魔のせいなら、無罪。』は本家の3作目でこれまで同様実話をベースにしていますが、ジェームズ・ワンが監督をせずプロデュースにまわり、また“館”が舞台ではないのです。“無罪”という言葉からわかるとおり一種の法廷スリラー。悪魔に取りつかれ殺人事件を犯した青年の無罪を証明するため、主人公たちが活躍するというもの。
このシリーズの主人公ウォーレン夫妻は心霊探偵のような動きをします。スティーヴン・キング原作でデヴィッド・クローネンバーグが監督した名作『デッドゾーン』やキアヌ・リーヴスのオカルト探偵を演じた『コンスタンティン』の路線です。死霊館らしい怖さは健在ですが、この主人公夫婦が“館”にとどまらず、外に出ることでこのシリーズの新たな可能性を示唆してくれます。
なおジェームズ・ワン監督は、本作を監督する代わりに『マリグナント 狂暴な悪夢』というホラーを担当しています。なんとこの作品R18+というから相当怖かったり残酷なシーンがあるということでしょうか?死霊館シリーズもかなり怖いですが、ホラービギナーが楽しめるライトさもある。エグいシーンは少ない。ワン監督としてはライト・ホラーとして成功している死霊館から一回離れ、思い切り過激な恐怖映画を作りたくなったのかもしれません。ワン監督の次回作は『アクアマン』続編。18禁ホラーを手掛けたあとのアクアマンがどうなるか楽しみですね。
DCにアクアマンありマーベルにネイモアあり
ご存じのようにアクアマンはDCが誇る海底人ヒーローですがマーベルにもサブマリナーことネイモアというヒーローがいます。彼もまた海底王国アトランティスの王。
ただしコミックでの登場はネイモアの方が早い。一応ヒーローですがヴィランとして登場し他のヒーローと戦うことも多い。このネイモアがMCUの『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー(原題)』に登場との噂あり。アトランティスがティ・チャラ/ブラックパンサー亡き後のワカンダを攻めるという展開かもしれませんね。