ジム・ジャームッシュらとともに、米インディーズの雄として一世を風靡した『イン・ザ・スープ』のアレクサンダー・ロックウェル監督。25年ぶりの日本公開作品『スウィート・シング』(10/29公開)を引っ提げて、インタビューに応じてくれました。出演した実の娘(ラナ)と息子(ニコ)の話になると、途端に目じりを下げて親バカ全開コメントを炸裂させるほのぼの取材の模様をお届けします。

――本作のクレジットにアルドルフォ・ロロの名前があり、『イン・ザ・スープ』ファンはニヤリとすると思います。スティーヴ・ブシェミが演じたこの役は、今でも監督にとって特別なキャラクターですか?

観客のみなさんが、気づいてくれてたら嬉しいなあ。自分の分身のような存在です。アルドルフォのキャラクターは、自分が映画を撮り始めた頃を彷彿させるんですよね。今回、クレジットしたのは、もしも、彼が後々、映画を撮ったなら、きっとこの映画を撮っただろうと想像するんです。だから、この映画を彼に託しました。アルドルフォは、自分の中で息づいているキャラクターなんです。『不可能なことはないさ』とか、『僕は映画を作って世の中に良いことをしていくんだ』という彼の精神や、夢を持って愛を持ってのエネルギーは僕の中でも生きている。大事な忘れたくないキャラクターなので、忘れないためにも今回のクレジットに託しました。

――ちなみに、本作はクラウドファウンディングを募ったそうですね。

非常に手間のかかる作業でしたが、『あなたの映画が観たいです』と思ってくれている人たちが支えてくれているので、こちらもやりがいはありましたね。アメリカのインディーズで、ハル・ハートリーという監督がいますが、彼もこういう手法で映画を撮ってます。今のアメリカで残念ながら、こうせざるを得ないのは、映画を撮る資金を得られない現状があるからなのです。しかし、クラウドファウンディングの場合は、映画を観たい人たちが支えてくれるので嬉しいものです。一人あたりの出資金は5ドルから、多い人で1万ドルというのもありました。みなさん、熱心に応援してくれるんですよね。本作では、だいたい500人くらいが集まってくれました。

画像1: アレクサンダー・ロックウェル監督、25年ぶりの日本公開作『スウィート・シング』は子煩悩全開で撮影

アメリカでのクラウドファンディング用に製作されたTシャツが、販売決定!

――本作は、オムニバスで参加した『フォー・ルームス』以来、25年ぶりの日本公開作品です。もちろん、日本で未発表の作品もあるのですが、監督業以外は何をして過ごしていらっしゃったんですか?

25年ぶり! ロロ君にカンパ~イ(笑)! 僕は映画を撮ってない間は狂っていました(笑)! 冗談ですが。普段は、ニューヨーク大学院ティッシュ芸術学部の方で、監督科に所属している学生たちに教えています。そこからもすごく影響を受けるんです。映画が大好きで、新しい作品を生み出そうとしている若い子たちと一緒になることは、僕にとってもいい刺激です。シャカ・キング、レイ・グリーン、クロエ・ジャオたちが、輩出されていきました。教えることで時間を費やしていましたね。あとは脚本を書いて書いて書きまくりました。まだまだ作品化していない脚本がたくさんあるんですよ。家に置いている書き溜めた脚本をたまに読み返しては、『これで映画を撮りたいな』と考えたりしています。脚本というのは、頭の中で映画を撮るような作業ですから、私にとっては、新しい作品を作る一つの工程なんですよね。

――最後に、25年も待っていた日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

愛しています(笑)! な~んて単純なメッセージからはじまりますけれども(笑)。本作は、音楽のように感情を揺り動かす映画です。まさに、ヴァン・モリソンの歌(スウィート・シング)のような映画で、色んな感情が溢れ返ってきて、その感情にのまれそうになるほどにエモーショナルな作品です。悲しみであったり、幸せであったり、慈しみの心であったり、いたわりの心であったり、そういう色んな感情が湧き上がってくるでしょう。この映画の核にある魂みたいなものが、観客のみなさんにも感染して、何か心が動かされることになると思います。なにより、劇場が再開しているタイミングで公開させてもらえるのは僕としてもラッキーでした。劇場で映画を観られるというのは本当に幸せですよね。コロナ禍でそれが奪われて、みなさんがどれだけ辛かったことかと思います。なので、劇場でみなさんにこの映画を観てもらえることも幸せに思います。

画像2: アレクサンダー・ロックウェル監督、25年ぶりの日本公開作『スウィート・シング』は子煩悩全開で撮影

アレクサンダー・ロックウェル

1956年、米・マサチューセッツ州ボストン出身。1982年、初の長編『Lenz』がベルリン国際映画祭で上映。1992年『イン・ザ・スープ』がサンダンス映画祭でグランプリを受賞。『フォー・ルームス』(クエンティン・タランティーノ、アリソン・アンダース、ロバート・ロドリゲスと共同監督)、『サムバディ・トゥ・ラブ』、『13 Moons』(日本未公開)などを発表。2011年には、『ピート・スモールズは死んだ!』(劇場未公開)でカルト的人気を集めた。

スウィート・シング
10月29日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺他全国順次公開

画像3: アレクサンダー・ロックウェル監督、25年ぶりの日本公開作『スウィート・シング』は子煩悩全開で撮影

普段は優しいが酒のトラブルが尽きない父アダムと暮らす15歳のビリーと11歳のニコ。父が強制的な入院措置となり、ビリーとニコは、母イヴとボーが暮らす海辺の家へ。2人は近所の少年マリクと友達になるが、ある日、3人の子どもたちは逃走と冒険の旅に出る!

監督・脚本:アレクサンダー・ロックウェル 
出演:ラナ・ロックウェル、ニコ・ロックウェル、ウィル・パットン、カリン・パーソンズ
配給:ムヴィオラ

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イン・ザ・スープ

1週間限定フィルム上映

アレクサンダー・ロックウェル監督の『イン・ザ・スープ』が、10/29より、新宿シネマカリテにて1週間限定フィルム上映決定!

©film voice inc.

画像4: アレクサンダー・ロックウェル監督、25年ぶりの日本公開作『スウィート・シング』は子煩悩全開で撮影

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