イントロダクション
1997年に公開され(日本公開は1998年)、世界中で話題となったヴィンチェンゾ・ナタリ監督の密室サスペンス・スリラー『CUBEキューブ』。そのナタリ監督が初めて公認したリメイク版が日本で製作された!謎の立方体が連なる不条理かつ殺人的な密室に閉じ込められた6人の男女。ここがどこなのか、なぜ閉じ込められたのか、脱出可能なのか、何もかもが不明。果たして彼らは生き残ることができるのか?
6人の男女を演じるのは菅田将暉、杏、岡田将生、田代輝、斎藤工、吉田鋼太郎の面々。監督は清水康彦。映像デザイン・撮影を栗田豊通、コンセプトデザインをカイル・クーパーと、洋画ファンにもおなじみの名前がスタッフに参加している。
ストーリー
目が覚めた時、そこは謎の立方体(CUBE)の中だった──そこに閉じ込められたのは男女6人。彼らはそれぞれエンジニア、団体職員、フリーター、整備士、会社役員、中学生と何の共通点も接点もない。
なぜ自分はここに入れられたのか明確な理由もわからないが、このCUBEは上下前後左右六面が、全く同じ様子のCUBEに繋がっていて、ある立方体の部屋では熱感知式レーザー、ワイヤースライサー、火炎放射器など殺人的なトラップが仕組まれており、むやみに動けば命の保証はない。それでも6人は決死の覚悟で部屋から部屋への脱出を試みる。
そんな彼らが気づいたのは、部屋にはそれぞれある数字が記されており、その暗号を解かなければ抜け出すことは不可能ということ。体力と精神力は尽き果て、緊張と不安は増していく。やがて隠されていた人間の本性も露わになり、絶対絶命の彼らは果たして謎に包まれた迷宮を脱出することができるのか?
覚えておきたいキーワード!
1.素数
1より大きい自然数で、1と自分自身でしか割り切れない数。CUBEの部屋にはそれぞれに3桁の数が記されているが、それが素数か否かで大きな違いが?
2.デカルト座標
『直交座標』の別名。X軸、Y軸、Z軸( 縦、横、高さ)の3つの数字で場所を指定する座標。CUBEに記された3組の3桁数字はこれと関係が?
3.フラクタル図形
同じ操作を自分自身に繰り返して得られる図形のこと。今回のCUBEの側面を見ると大小様々な正方形が並んでいるが、これもフラクタル図形の一種。
登場人物はこちら
後藤裕一(29)(菅田将暉)
頭脳明晰なエンジニア。状況を冷静に受け止め脱出方法を探る。次第に過去のトラウマと向き合うことに。
甲斐麻子(37)(杏)
人一倍冷静沈着な団体職員。冷たい性格に見えるが他の5人を見守っているような様子も垣間見える。
越智真司(31)(岡田将生)
人懐っこいがパニックになりやすいフリーター。自分が虐げられているという意識が強く、権力や年上が苦手。
井手寛(41)(斎藤工)
リーダーシップを発揮する整備士だが時に暴走的。瀕死の妻のために脱出を非常に焦っている面もあり。
宇野千陽(13)(田代輝)
過去の出来事により心を閉ざしている中学生。誰も信じられず、特に大人には不信感を持っている。
安東和正(61)(吉田鋼太郎)
出世のために何でもやってきた広告代理店役員だが罪の意識も見せる。やる気のない若者や子供が嫌い。
オリジナル版も見ておくと面白さ倍増!
究極のワン・シチュエーション・スリラーとして世界的にヒットしたカナダ映画。謎の立方体に突然閉じ込められた6人の男女。彼らは自分が置かれた状況もわからないまま、死のトラップが仕掛けられたこの「CUBE」から脱出を試みるが……
<オリジナルとの違い>
オリジナルも本作もCUBEの中に閉じ込められる男女は6人。だが、その顔触れは全く違うといってもいい。オリジナルでは警官や医師、数学科の学生、サヴァン症候群の持ち主などだったが、今回は整備士、会社役員、フリーター、中学生など世代も職種も様々。そこから生まれる現代的な人間ドラマは日本版ならではのものだ。
他にもCUBE自体にも違った点が。まずCUBE内面のデザインだがオリジナルでは非対称性と混沌を加えたイメージだったのだが、今回は“シェルピンスキーのカーペット”と呼ばれるフラクタル図形を思わせるデザイン。そこに仕掛けられた死のトラップもオリジナルにはなかったものが飛び出してくるので、ぜひ映画を見て確かめてほしい!
原案 ヴィンチェンゾ・ナタリインタビュー
オリジナル『CUBEキューブ』の監督であり、今回の日本版でもクリエイティブ・アドバイザーとして参加しているヴィンチェンゾ・ナタリがインタビューに応えてくれた。
「リメイクの話をいただいてとても嬉しかったよ。実はアメリカでもリメイクの話があったんだけど、日本で作る話の方が興味が持てたんだ。その方が異なる文化的側面を持ち込めて新鮮なものができると感じたんだ。おそらく日本と『CUBE』は良い組み合わせになると思った。今回僕は、脚本に意見を出したり、かつて使用しなかったアイディアを提供したりと、大きな外枠についてのみ参加させてもらった感じだった。あまり自分の意見を押し付けるようにしたくなかったんだ。新しい物を作るのが見たかったんだけど、監督の清水(康彦)さんはそれをやり遂げてくれた。彼は素晴らしい仕事をしたと思う」
オリジナルとの違いについても大変好意的に語ってくれた。
「新鮮だったのはキャラクターの間に生じる世代間の衝突だね。これがストーリーの軸になっている。オリジナルを作った時には全くなかったアイディアだけど、清水さんはこの点にフォーカスして良い意味で社会的な意志表明をしている。CUBEのデザインも良かった。新しいCUBEはキャラクターの感情に反応する描き方も相互的に作用している点もスマートだね。しかもオリジナルでうまく機能したことを理解してくれているのも良かったね」
CUBE 一度入ったら、最後
2021年10月22日(金)公開
日本/2021/1時間48分/松竹
監督:清水康彦
出演:菅田将暉、杏、岡田将生、田代輝、斎藤工、吉田鋼太郎
© 2021『CUBE』製作委員会