人気アメコミ系映画ライター・杉山すぴ豊さんが、アメコミ・ホラー・SFなど多様なジャンル映画の情報を"深い知識と深い愛"をもってお届けする本連載。今回は、ホラー映画『マリグナント 狂暴な悪夢』、マーベル・スタジオ最新作『エターナルズ』と、新風を巻き起こしている2作をご紹介!
カバー画像:『マリグナント 狂暴な悪夢』公開中 配給:ワーナー・ブラザース映画 © 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

杉山すぴ豊

アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。

過去作へのリスペクトに満ちた『マリグナント 狂暴な悪夢』

画像: 『マリグナント 狂暴な悪夢』公開中 配給:ワーナー・ブラザース映画 © 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

『マリグナント 狂暴な悪夢』公開中 配給:ワーナー・ブラザース映画

© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ジェームズ・ワン監督の『マリグナント狂暴な悪夢』はライター泣かせの作品です。“残虐な殺人事件が起こる。それを現場に居合わせたかのように夢で追体験してしまう女性マディソン。なぜ彼女はこのような悪夢を見るのか?その鍵を握る黒い影ガブリエルの正体とは?”というのが大体のあらすじですが、これ以上説明したらホラー好きの方ならピンときてしまう。僕が「この映画を観て『XXX』を思い出した」と作品名をいくつか挙げただけでも中身がわかってしまう。逆に言えば、それだけ過去のホラー映画へのリスペクトに満ちた作品であり、かつジェームズ・ワンらしいエンタテインメントに仕上がっています。

ネタバレにならない程度に言うと『サスペリア』に代表されるイタリアの血みどろ映画と初期の楳図かずおさんの怪奇コミックを掛け合わせ、そこにジェームズ・ワンならではのアクション映画テイストを加味した作品。本作は批評家受けはすごくいいのですが、ホラー映画ファンの中では評価が分かれているようです。「面白いか・つまらないか」ではなく「好きか・嫌いか」なんですね。

ジェームズ・ワンの名作『死霊館』シリーズが正統派のホラーであるのに対し本作はもっと暴力的。例えば『死霊館』シリーズにはアナベルちゃん人形という怖いキャラが出てくる。しかしアナベルちゃんが動き回って人を襲うわけではない(そこが『チャイルド・プレイ』のチャッキーくん人形と違う)。あの人形がいることでゾクゾクすることが起こる、という雰囲気的な怖さです。

それに対し本作のガブリエルはある意味直接的に人に襲いかかる、という物理的な怖さです。なおかつ18禁のバイオレンス・ホラーですから、この粗っぽさを気に入るかどうか。そう聞くと単なるモンスター物、殺人鬼ホラーと思うかもしれませんが、ここにちょっとひねりがある。いずれにせよ、怪異の正体であるガブリエルはホラー映画界の新スターと言っても過言ではありません。このコスプレをするのは相当勇気がいるでしょうね(笑)。

これまでのMCUと毛色の違う『エターナルズ』

画像: 『エターナルズ』大ヒット公開中 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン © Marvel Studios 2021

『エターナルズ』大ヒット公開中 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

© Marvel Studios 2021

さて賛否両論といえばマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『エターナルズ』。僕は圧倒的に「賛」。冒頭からワクワクしっぱなしでした。一方で「否」の意見があることも理解できます。映画の出来ということではなく、これまでのMCUと比べてちょっと毛色の変わった作品なんです。アベンジャーズ的な集団ヒーロー路線を期待すると違和感を覚えるかもしれません。

ただ元々、原作となった「エターナルズ」というコミック自体が、スーパーヒーロー物ではない。宇宙の神々ともいうべきセレスティアルズによって造られた超人族エターナルズと異形の種族ディヴィアンツの戦いを描いたSF×神話ともいうべきファンタジー。コミックでも初期のころは他のマーベル・ヒーローとあまり共演しなかったので、本作も今までのMCU映画との結びつきが少ないのです。

仮にもしMARVELロゴでなくDCロゴが冒頭に出てもすんなり観れてしまうでしょうから。特にイカリスの能力はスーパーマンに似ているし、アンジー演じるセナは貫禄あるワンダーウーマンといった感じです。なおMCUなのになぜかDCネタがあるんです。つまりMCUの世界にはDCコミックがあるということ!?(笑) けれどMCUらしさを過度に期待せず、独立した1本の映画として観ればとてもよくできたアクション・エンタテインメント。各キャラの超能力が違うのでそれらが入り乱れての集団戦は楽しい。いずれMCU版のX-MENが作られたらこういう風になるんだろうなあ、とそっちの方でも期待。

あえて言うなら『マイティ・ソー』路線に一番近いのですが、ソーがアベンジャーズ等他のヒーローと絡むことでより魅力的な存在になったように、この先エターナルズと他のMCUキャラとの共演が楽しみです。例によってエンド・クレジットの後におまけシーンが2つあり、MCUに新ヒーロー登場です。彼らについては後日解説しましょう。

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