作品選びにお悩みのあなた! そんなときは、映画のプロにお任せあれ。毎月公開されるたくさんの新作映画の中から3人の批評家がそれぞれオススメの作品の見どころポイントを解説します。

〜今月の3人〜

土屋好生
映画評論家。「オミクロン」がギリシャ文字と聞いて、昔訪れたテサロニキ国際映画祭に思いをはせる…なんちゃって。

稲田隆紀
映画評論家。コロナ禍の影響をひしひしと感じている。この年齢になると1日、1日が貴重なのに。無為に時間が過ぎる。

金子裕子
映画ライター。ウォーキングにでかけた公園の梅は満開。スマホで写真を撮ってみたけど我ながらセンスなしの仕上がり(苦笑)。

土屋好生オススメ作品
選ばなかったみち

認知症の父と娘の24時間を追いながら人生という摩訶不思議なものの核心に迫る

評価点:演出4/演技5/脚本4/映像4/音楽4

あらすじ・概要

認知症を患う一人住まいの父親を病院に連れいくために娘が付き添い、2人でニューヨークの街中を走り回る。その24時間を追う父と娘の心の交流を描き、現在と過去、現実と幻想に揺れる濃密な時間の流れを描き出す。

原作が若年性認知症の実話とはいえ、医学的なアプローチを施した映画ではない。なにしろ原作者はイギリス人監督のサリー・ポッター、主演はスペイン人のハヴィエル・バルデムというのだから推して知るべし。しかもこの実話のモデルは監督の実弟というだけに、鋭い観察眼と巧みな表現力を駆使して人間の内奥に観客をぐいぐいと引き込んでいく。

それにしても主演のバルデムの演技の集中力に圧倒されると同時に、それを一歩突き抜けた自然体の演技に脱帽!そしてバルデムを引き立てる役に徹した娘役のエル・ファニングの成長ぶりには目を見張らせるものがある。

画像: 認知症の父と娘の24時間を追いながら人生という摩訶不思議なものの核心に迫る

確かに認知症患者特有の不安定な内面を巧みに構築した心理劇なのだが、それは決して特殊なものではなく誰しもが持つ迷いや不安に通じるものがあり、幾本もの道になぞらえた人生という摩訶不思議なものの核心に迫るのだ。これはポッターならではの人生讃歌であり、そこに父と娘の、いや人間と人間の心の絆を垣間見る思いがする。

© BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020

稲田隆紀オススメ作品
ゴーストバスターズ/アフターライフ

ストーリーばかりでなく演出にも“後を継ぐ”というテーマが反映されている

評価点:演出5/演技4.5/脚本5/映像5/音楽4.5

あらすじ・概要

母と兄の三人家族の少女はオクラホマの祖父の農場で暮らすことになる。そこにはゴーストバスターズの装備があり、祖父が一員であったことを知るが、あるきっかけで封印を解かれたゴーストたちは人間に牙をむく―。

圧倒的な特撮とアナーキーなギャグで、ニューヨークをハチャメチャにした1984年の『ゴーストバスターズ』、1989年の『ゴーストバスターズ2』に連なる最新作。ノリで押し切った父アイヴァンとは異なるコメディセンスの持ち主のジェイソン・ライトマンが、瑞々しい思春期の溌溂とした成長譚としてシリーズを好もしく継承している。

ジェイソンらしさを打ち出すべく、主人公をシングルマザーに育てられた少女に設定し、オクラホマの片田舎をオバケたちとの戦いの場に据えたあたりも好結果。祖父の農場でゴーストバスターズの道具を見出した少女が、祖父の思いを知り、地元の少年、家族も巻き込んでオバケ退治となる。

画像: ストーリーばかりでなく演出にも“後を継ぐ”というテーマが反映されている

脚本は『モンスター・ハウス』(2006)で注目されたギル・キーナンとジェイソンの共作で、オリジナルの脚本家ダン・エイクロイドのお墨付き付き。前2作と異なる世界で勝負しながら嬉しいサプライズも用意してある。“後を継ぐ”というテーマがストーリーばかりでなく、ジェイソンの演出にも反映されている。マシュマロマンの参戦も嬉しい。

金子裕子オススメ作品
355

『チャーリーズ・エンジェル』ハード版の味わいを持つ女性たちの痛快アクション

評価点:演出4/演技4/脚本3/映像4/音楽3

あらすじ・概要

秘密兵器=デジタルデバイスの回収命令を受けたCIAのメイスはある事情からドイツ連邦情報局のマリーと手を組む。そこにMI6のハディージャと心理学者グラシーが加わるが、謎の中国人女性リンが現れて…。

各国から5人の女性エージェントが集結しコードネーム<355>を結成。世界をカオスに陥れるかもしれない最強兵器=デジタルデバイスを巡って壮絶な闘いを展開する。最大の売りは、ジェシカ・チャステイン、ダイアン・クルーガー、ペネロペ・クルス、ルピタ・ニョンゴに、“中国の至宝”と称されたファン・ビンビンも参加の豪華キャスト。

それぞれが格闘技やコンピュータなど各分野のスペシャリストに扮して、肉弾戦はもちろん頭脳戦でも極悪な男たちをなぎ倒してゆく姿は爽快!懐かしの『チャーリーズ・エンジェル』ハード版の味わいがありながら、自主的に集結した彼女たちにボス=男性の支配が及ばないことも現代的で小気味いい。

画像: 『チャーリーズ・エンジェル』ハード版の味わいを持つ女性たちの痛快アクション

特にチャステイン&クルーガーが披露する、体を張ったアクションのキレのよさには感服するばかり。もちろんハイブランドのミューズやアンバサダーを努めてきたエレガントな女優陣だけに、ゴージャスなドレス姿で勢揃いするサービス・カットも忘れない。

こんなご時世の鬱憤晴らしには、もってこいのアクション・エンターテインメントだ。

© 2020 UNIVERSAL STUDIOS. (C)355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

This article is a sponsored article by
''.