名優の人生をキャリア中心に振り返ってみましょう。今回は、『ナイル殺人事件』や『ベルファスト』と話題作が続き、俳優としても監督としても活躍するケネス・ブラナーをクローズアップします。(文・大森さわこ/デジタル編集・スクリーン編集部)

ケネス色の濃い監督作5選

『ヘンリー五世』(1989)

画像: 『ヘンリー五世』(1989)

舞台人だったブラナーの映画監督デビュー作で、ヘンリー役も演じる。パワフルな戦闘シーンも話題を呼び、彼の出世作となる。当時のパートナー、エマ・トンプソンも出演。

『ヘンリー五世 ケネス・ブラナー』Blu-ray(6,380円)、DVD(4,400円)/2022年3月25日発売
Henry V © 1989 Renaissance Films Plc. All Rights Reserved.

『ピーターズ・フレンズ』(1992)

画像: 『ピーターズ・フレンズ』(1992)

80年代に大学を卒業した仲間同士が10年後に友人の屋敷で再会する。演出と出演のブラナーの心情も託された展開。ティアーズ・フォー・フィアーズなど選曲のセンスも光る。

『ハムレット』(1996)

画像: 『ハムレット』(1996)

10代の時、『ハムレット』の舞台に魅了されたブラナーの渾身の1作。4時間に渡り、豪華な映像が展開。ブラナーはハムレット役。オフィーリア役はケイト・ウィンスレット。

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TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

『マイティ・ソー』(2011)

画像: 『マイティ・ソー』(2011)

兄弟の葛藤などを軸に神話的な世界が展開するマーベル・コミックの映画化。ブラナーは演出を担当。『ベルファスト』には少年バディが原作コミックを読んでいる場面がある。

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© 2022 Marvel

『ベルファスト』2022年3月25日(金)公開

自身を形成した少年時代を描く、もう一つの新作はケネス史上最高傑作の声!

画像1: 『ベルファスト』2022年3月25日(金)公開

ブラナーの少年時代の体験とフィクションを織り交ぜながら描いた珠玉のドラマ。好奇心あふれる少年バディの目に写る60年代の街の風景が美しいモノクロ映像で切り取られる。家族との優しい時間や近所の人々との温かい交流が描かれるが、宗教をめぐる対立が激化し、一家の生活も変わる……。ベルファスト出身のシンガー、ヴァン・モリソンのソウルフルな歌も効果的に盛り込まれ、少年の心に刻まれた世界がイキイキとよみがえる。

厳しくも優しい両親に愛情を注がれ育つ

画像2: 『ベルファスト』2022年3月25日(金)公開

パは別の場所で働き、週末だけ戻る。マは子供の不正行為は許さない気丈な性格。

話し相手はおじいちゃんとおばあちゃん

画像3: 『ベルファスト』2022年3月25日(金)公開

ポップにはユーモアのセンスがあり、若い時にほれ込んだグラニーを今も愛している。

家族みんなで揃って映画やゲーム

画像4: 『ベルファスト』2022年3月25日(金)公開

一家で『チキチキ・バンバン』(1968)や『恐竜百万年』(1966)を見る。バディはミニカーも集めている。

大好きなベルファストという街

画像5: 『ベルファスト』2022年3月25日(金)公開

60年代後半、カトリックとプロテスタントの宗教対立が激化。バディの家も被害に合う。

【インタビュー】
“ 感情的になるのも悪くない。気付きがあり、深い感謝の念が生まれるから”

── 当時のベルファストでの家族の思い出を聞かせてください。

ベルファストは物語に事欠かない街だ。特に1960年代の後半のベルファストは、街の歴史上最も過酷な激動の日々だった。衝撃的な事件や暴力が日常化し、僕や家族も巻き込まれてしまった。

あの日々はずっと僕の頭にあって、僕らが故郷で過ごしたあの時代の物語をいつか脚本にしようと思っていた。

── 劇中とてもリアルでした。

この映画に出た人も観てくれた人も、映画の中の会話の〝リアルさ〞を褒めてくれた。とても大事なポイントだよ。当時の会話をかなり正確に再現できていたと思う。そして当時の人々の行動についてもね。

彼らは休日に近隣の住人と集まっては歌ったりしていた。勤め先も同じなら、遊ぶ時も一緒。各家庭の事情は筒抜けだし、いいことばかりでもない。だが〝子育てには村全体の協力が必要〞ということわざ通りの場所だったね。

── 出演者にもこだわりが。

あの国と縁が深いキャストだ。ジェイミー・ドーナンはベルファストの出身で、ホーリーウッドという街に住んでいた。祖父役のキアラン・ハインズは僕の実家からたった1キロ半の場所に住んでいた。カトリーナ・バルフもアイルランド出身。ジュディ・デンチも半分はアイルランド系だ。彼女がキャストにいるといい俳優が集まるんだよ。ジュディは共演者たちの助けで、アイルランドに対する理解を深めていた。

何か知らないことがあればみんなが教えてくれて助かったようだが、ジュディは勉強家だから自分でも調べる。アイルランドのアクセントは、本物らしく聞こえて、かつ明瞭じゃないと困る。他の地域の人に聞き取れないからね。聞いてすぐに理解できない発音はダメだ。この映画では出演した俳優たちがとても前向きなエネルギーを加えてくれたと思う。

彼らは〝家族〞だったね。ジュードと彼の兄役のルイス・マカスキーには、すぐに兄弟のような絆が芽生えていた。実はロックダウン中に撮影を行ったことが出演者どうしの絆を強めた気がする。一緒に隔離されたことで家族のようになれたんだ。

── 実体験の映画化はいかがですか?

これは〝理解〞についての物語だ。しかしそれは完璧である必要はない。自分が誰であり、どこから来た人間かをきちんと自覚することで人は力を得る。もしそれが自分だけのためなら、どこかに書き出せば事は足りてしまうけど、それを他人とも分かち合いたいと思ったら、物語として世に出すことになる。

それは人生とじっくり向き合うことも意味する。僕が今回の映画作りで学んだのは、感情的になるのも悪くないということだ。いろいろな気付きがあり、深い感謝の念が生まれる。

『ベルファスト』
2022年3月25日(金)公開

イギリス/2021/1時間 38分/パルコ ユニバーサル映画
監督:ケネス・ブラナー
出演:カトリーナ・バルフ、ジュディ・デンチ、ジェイミー・ドーナン、キアラン・ハインズ、ジュード・ヒル
Ⓒ 2021 Focus Features, LLC.

Photos by Getty Images  Photo by Aflo

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