“ボウイ”になる前の“ボウイ”とは?
『スターダスト』
デヴィッド・ボウイのように誰もが顔を知っている人物にスクリーン上で新たな息を吹き込むのは至難のワザである。しかし、この映画の製作者たちは彼が有名になる前の下積み時代を描くことによって、それに成功した。『スターダスト』で描かれるのはボウイになる前のボウイの姿である。
舞台は1969年。シングル「スペース・オディティ」はヒットしたものの、その後、大きな当たりがないボウイはアメリカにプロモーション・ツアーに出るが、ビザの関係でコンサート会場では演奏はできず、マネージャーのロン・オバーマンと共に車で旅に出て、さえない場所で少しだけ演奏者との取材に応じたりと、散々な日々を送る。ただ、旅の後、ボウイは革新的な代表作『ジギー・スターダスト』を産み落とす。
ボウイを演じるのは英国の新鋭男優のジョニー・フリンで、ミュージシャンでもある彼は自身で歌もこなす。顔も声もボウイとは違うが、成功を夢見る無名の若者とマネージャーのロードムービーと思って見ていくと、不思議なリアリティも感じられる。
「音楽はマスク(仮面)」と考えるボウイは、何よりも“イメージ”作りにこだわったが、そんな彼の成功の種が、この旅の中に潜んでいたことも分かる。
CHECK1
名盤「ジギー・スターダスト」誕生前夜
不滅の魅力を持つ72年の傑作アルバム『ジギー・スターダスト』で成功をつかむボウイ。宇宙からやってきたジギーという架空のロックスターを演じることで、独特のステージングを見せる。ギタリスト、ミック・ロンソンと共に派手な衣装を身に着け、両性具有的な雰囲気を作り上げ、グラムロックの大ブームを起こす。劇中にはロンソンも登場し、衣装についてボウイの妻アンジーがアドバイスする場面もあり、ジギー誕生前夜が描かれる。
CHECK2
ファン必見!秘蔵エピソード満載
当時、マーキュリー・レコードのロン・オバーマンと共に全米のプロモーション・ツアーに出たボウイは彼の口利きでラジオ番組に出演するが、思わず過激な発言をして彼を激怒させる。ニューヨークでは憧れのアンディ・ウォーホルに会いに行き、ベルヴェット・アンダーグラウンドのコンサートも見るが、そこでも肩透かしを食らう。また、女性的なドレスをトランクに入れ、入国管理員のひんしゅくも買う。そんな数々の秘蔵エピソードが登場する。
CHECK3
映画を彩るボウイゆかりの楽曲たち
映画にはボウイ自身の曲は登場しないが、彼がカバーしていたジャック・ブレルの曲「アムステルダム」をジョニー・フリンが歌う場面があり、後半にはブレルの「マイ・デス」も登場。ボウイが好んだリトル・リチャードの「シェイク・ア・ハンド」も劇中で流れる。また、精神を病んだ兄とボウイとの葛藤も描かれ、兄と一緒に愛聴していたアンソニー・ニューリーの「ホワット・カインド・オブ・フール・アム・アイ」も効果的に使われる。
3月9日(水) 発売
『スターダスト』
ブルーレイ:5,280円(税込) DVD:4,290円(税込)
封入特典:ポストカード(2枚)、ライナーノーツ
映像特典:インタビュー(ジョニー・フリン)、オリジナル予告
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
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