高校生のひと夏の冒険を描いた傑作青春ムービーがBlu-ray＆DVDで登場！沖田修一監督に笑って泣ける本作の制作秘話、ユーモアの秘密を聞きました。（取材・文：奥村百恵、デジタル編集：スクリーン編集部）
ガールミーツボーイ、アンドファーザー？
『子供はわかってあげない』
「マンガ大賞2015」で2位にランクインした田島列島の長編デビュー作を、『南極料理人』『横道世之介』『モリのいる場所』などで知られる沖田修一監督が映画化。
高校生の青春物語を描いた“ガールミーツボーイムービー”の本作で、主人公の朔田美波を演じるのは『未来のミライ』「義母と娘のブルース」など話題作への出演が続く上白石萌歌。美波の相手役・門司昭平を石井裕也監督作『町田くんの世界』の主演に大抜擢され話題を呼んだ細田佳央太が演じ、美波の実の父親役を豊川悦司、門司の兄役を千葉雄大、美波の母親役を斉藤由貴、美波の現在の父親役を古舘寛治が演じるなど豪華俳優陣が集結。
藁谷友充（豊川悦司）
美波の実の父親で現在は海辺の町に暮らしている。人の心が読める超能力を持っており、新興宗教の元教祖。
朔田美波（上白石萌歌）
アニメ「魔法左官少女バッファローKOTEKO」が大好きな、水泳部女子の高校2年生。マイペースな性格。
門司昭平（細田佳央太）
字がうまいうえに絵もうまい、ちょっぴりシャイな書道部男子の高校2年生。好きなアニメが美波と一緒。
門司明大（千葉雄大）
門司くんの兄だが、見た目は女性。心優しい性格で、古書店に居候しながら探偵を営んでいる。
また劇中に流れるアニメ「魔法左官少女バッファローKOTEKO」には富田美憂、浪川大輔、櫻井孝宏、鈴木達央、速水奨など人気声優陣が顔を揃えた。
物語は、もうすぐ夏休みのある日、高校2年生の美波が、学校の屋上でちょっと変わった書道部員の門司くんと運命的に出会うことから始まる。ひょんなことから幼い頃に別れた父親探しをすることになった美波は、探偵である門司の兄の助けを借りて父親との再会を果たす。そこへ門司くんが突然訪れ、二人は海辺の町で夏休みを過ごすことになり……。
INTERVIEW
『子供はわかってあげない』監督・脚本
沖田修一
“チームのみんなと笑えるようなものを作る”
という気持ちはいつも心のどこかにあるような気がします
――美波役の上白石萌歌さんと門司役の細田佳央太さんのお芝居が瑞々しくて素晴らしかったです。監督はお二人にどのような演出をされたのでしょうか。
現場での演出というよりは、クランクイン前に二人と過ごす時間を設けて、関係性を作ることをまず大事にしました。年齢を重ねると彼らのような若い俳優さんと“仲良くなれるだろうか？”と思ったりするので（笑）、遊びながら本読みをしたりしてコミュニケーションを取ったりしていましたね。
あと、この映画はユーモア溢れる楽しい作品なので、そういう雰囲気を少しでも二人に感じ取ってもらえたらという気持ちで接していました。
――劇中に登場する「アデュー！」や「○○なのさ」などキュートで楽しい台詞も印象的でした。
脚本を共作したふじきみつ彦さんに「原作にない台詞を山のように書いてください」とオファーして、出来上がったものをもとに台本を完成させていったのですが、若い子達がしゃべる言葉って自分達が面白ければいいというニュアンスのものが多いんですよね（笑）。
僕の若い頃もそうだったし美波も割とそういうタイプで、ちょっと独特な台詞になっています。「アデュー！」は原作だと違う人が言っているのですが、それを美波の台詞として使いました。
――上白石さんはadieu（アデュー）名義で音楽活動されていますが、それは偶然だったのでしょうか？
全くの偶然です。撮影当時そのことは知らなかったので、わざと「アデュー！」を美波の台詞にしたと思われるのは癪で（笑）。でも印象に残ったのなら良かったです。
――Blu-rayには70分を超える特典映像が収録されていますが、メイキングを拝見したら門司くんと豊川悦司さん演じる友充がお酒を飲むシーンで、門司くんのコップに食塩が入ったお水を入れるサプライズをしていて思わず笑ってしまいました（笑）。
ドッキリを仕掛けるつもりは全くなかったんですけどね（笑）。食塩を入れた意図としては、門司くんは未成年なのでお酒を飲むのが初めてで、もちろん実際にお酒を飲んでもらうわけにはいかないので、普通のお水をコップに入れていたんです。
でも途中で少し味がする感覚があったほうがお芝居しやすいんじゃないかなと思って、それでお塩をちょっと入れてもらったはずが…映像を見たら結構な量入れてましたね（笑）。
――沖田監督の作品は思わずクスっと笑ってしまうような楽しいシーンが多いイメージがありますが、そういったユーモラスなシーンを撮る時に大事にしていることは何かありますか。
むかし友人達と遊びながらビデオカメラを回して映画を作ったことがあるのですが、それが僕にとっての始まりだったので、“チームのみんなと笑えるようなものを作る”という気持ちはいつも心のどこかにあるような気がします。大事にしているのは“臆病にならない”こと。コメディ映画は笑いの加減がすごく難しくて、劇場で声を出して笑うお客さんが少ないと、自分の映画が面白いのかどうか判断しづらかったりするんです。
だけどきっとみなさん心の中では笑ってくれているに違いないと信じて、自分が面白いと思うものを作るようにしています。ただ、たまに自分の作品を観ていて“あー！やってしまった！”と恥ずかしくなることも（笑）。それでもチャレンジ精神は忘れずに、これからも作り続けていきたいです。
――最後に読者にメッセージをお願いいたします。
自分でもたまに観返したくなるような軽やかで楽しい映画です。きっと一度観たら“美波ちゃんと門司くんまた会いたい”と思っていただけると思うので、ぜひBlu-rayやDVDで何度でも楽しんでいただけたら嬉しいです。
PROFILE 沖田修一
1977年、埼玉県生まれ。短編映画の自主制作などを経て『このすばらしきせかい』（06）で長編デビュー。2012年公開の『キツツキと雨』が第24回東京国際映画祭の審査員特別賞、ドバイ国際映画祭で日本映画初の3冠を受賞するなど国内外から注目を浴びている。その他監督作に『南極料理人』(09)、『横道世之介』（13）、『おらおらでひとりいぐも』(20)などがある。
『子供はわかってあげない』Blu-ray&DVD 好評リリース中！
本作のBlu-ray＆DVDが好評リリース中。Bl-ray版にはメイキングや未公開シーンなどここでしか見られない映像を含め約70分の特典映像を収録。さらに、プロダクションノートや劇中アニメ「魔法左官少女バッファローKOTEKO」の設定資料などが収められた豪華ブックレットも封入。もはや永久保存版なのでお見逃しなく！
Blu-ray豪華版：￥6,380（税込）
三方背アウターケース仕様
封入特典：ブックレット（44P）
特典映像：劇中アニメ「魔法左官少女バッファローKOTEKO 」（フル尺版）、イベント映像集、メイキング映像、未公開シーン集
DVD通常版：￥4,180（税込）
特典映像：予告編＋特報
発売元：アミューズソフト 販売元：ポニーキャニオン
Ⓒ2020「子供はわかってあげない」製作委員会 Ⓒ田島列島／講談社
