戦争映画×SFスリラーのサスペンスアクション
クロエ・グレース・モレッツが第二次世界大戦期の女性戦闘機乗員というタフな役に挑んだサスペンスアクション。物語は1943年、連合国軍の拠点であるニュージーランドのオークランド空軍基地から始まる。サモアに飛び立とうとしている爆撃機に、モード・ギャレットと名乗る女性米軍大尉が乗り込んできた。彼女の任務は、あるカバンをサモアに届けることで、その中身は機密という。
機の乗員は女性が戦闘機に乗り込むことに、あからさまに嫌悪感を示し、モードは狭い球形銃座に押し込められてしまう。ところが、離陸早々、空軍兵の間で〝空の魔物〞として恐れられている怪物グレムリンが出現。さらに敵国、日本のゼロ戦が襲来して機は窮地に追い込まれる……。
戦争映画にSFスリラーの要素を盛り込んだ物語は緊迫感満点。女性の強さを描いたドラマも見どころだ。女性蔑視が当たり前だった時代に、ある秘密を抱え戦火に飛び込み、スキルを活かして過酷な状況を打開していく。そんなヒロインをクロエがアクションとともに演じる。
監督は、ニュージーランドでキャリアを築いた女性監督ロザリンヌ・リャン。トロント国際映画祭ではジャンル映画の特集企画であるミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を受賞。
【CHECK】
ほぼ独り芝居からの…感情爆発!
クロエにとって今回のモード役が大きな挑戦になったことは想像に難くない。なにしろ、前半は狭い銃座に押し込められた状態。無線を通じて他の乗員と交信はできるので他の声は聞こえるが、スクリーンに映るのは、ほぼクロエだけなのだ。そんな独り芝居状態に緊迫感を宿らせつつ、銃座から解放された後半では感情を爆発させたり、敵との戦闘を演じたり。セクシャルハラスメントとの格闘の体現含めて、ここでのクロエは、まさしく熱演を見せている!
クロエ・グレース・モレッツ インタビュー
〝60作以上の映画に出演してきたけど、これほど難しいことは今までやったことがなかったわ〞(クロエ・グレース・モレッツ)
「モードは詐欺師的なヒロインよ。私が惹かれた理由は、彼女が完璧なアメリカ人ではなかったから。女性の主役を描くのに大切なのは、私たちにも私たちなりの問題があり、良い部分も悪い部分あると描くこと。彼女のふたつの性格をつくり上げるのがとても楽しかった。
ボールターレット(※爆撃機に搭載された球形の銃座)には2週間と2日閉じ込められたの。大きな障害となったのは、小さな空間ということだけではないの。閉所恐怖症だから、それも大変だったけど、毎日10〜12ページにわたるセリフを撮影しなければならないことも大変だった。この映画のほとんどのセリフは彼女が見ていない状況で交わされ、観客が唯一目にするのは、彼らの発言に対して私が演じるリアクション。5歳から仕事をして今22歳で、60作以上の映画に出演してきたけど、これほど難しいことは今までやったことがなかったわ。
核心をつく言い方をすると、この映画の物語は女性の怒りを描いているの。あの時代に女性であることの政治的な意味を掘り下げたの。性別で排除されるという現実についてね。それに対しての戦いも描いている。また、それが人を限界まで追い込む様子もね。彼女は追い詰められる。そして自分と荷物を取り戻すためにすべてを尽くす彼女を観客は観ることになる。悪条件にもかかわらずそうする。だから忍耐の物語なのよ。最後には観る者を少し揺るがせると思うわ」
『シャドウ・イン・クラウド』
2022年4月1日(金)公開
2021/ニュージーランド、アメリカ/83分/カルチュア・パブリッシャーズ
監督:ロザンヌ・リャン
出演:クロエ・グレース・モレッツ、ニック・ロビンソン、ビューラ・コアレ
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