『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で、その禁断の世界が開く「マルチバース」。今後のマーベル映画の鍵となるといわれる重要な概念を、これまでの経緯、これからの可能性も含めて改めて学びましょう!(文・杉山すぴ豊/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』より ©Marvel Studios 2022

LESSON1
自分たちの世界と並行して別の世界が無数に存在する!

画像: 『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』より ©Marvel Studios 2022

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』より

©Marvel Studios 2022

マルチバースとは自分たちのいる世界(バース)とは別に他の世界が並行して無数に存在する、という考え方です。「多元宇宙」とか言われたりもします。パラレルワールドと考えるとわかりやすい。ユニバースの「ユニ」は「一つ」のという意味ですが、これに対し「マルチ=複数」というわけです。

例えば「お婆さんが川で桃を拾って桃太郎が生まれ鬼退治をする世界」を1つの基準とするならば、そのバリエーションとして「お婆さんが川で桃を拾わないことにより桃太郎が生まれず鬼が元気な世界」「拾った桃から女の子が生まれる世界」等が別次元に無数存在するということです。

マーベルのコミックでは基準となっている世界は〝アース616〞と呼ばれています。なのでここで起こった物語・設定・歴史がベースとなっているため「正史」という言われ方もします。先の例で言うと「桃太郎が生まれる世界」に該当します。

なのでアース65では、死んだはずのスパイダーマンの恋人グウェンが蜘蛛の超能力を持ってスパイダーグウェンとして活躍していますし、アース1610では〝アベンジャーズ〞に該当するチームの名は〝アルティメッツ〞です。

また、アース2149はヒーローたちが皆ゾンビになったマーベル・ゾンビーズの世界。このように「正史」とは違う設定のヒーローやヴィランが登場。なおニック・フューリーはアース616では白人、アース1610は黒人で、映画の方はアース1610の設定を取り入れているわけですね。

LESSON2
MCUでは映画&ドラマで散りばめられてきた「マルチバース」

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)においてマルチバースの概念がもたらされたのは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)。この時はマルチバースという表現はされていませんが過去をいじると歴史が変わり別の世界が生まれてしまう可能性が示唆されます。

MCUのドラマシリーズ「ロキ」(2021)では正史となる世界の時間の流れ/歴史を〝神聖時間軸〞と称し、その管理をTVA(Time Variance Authority)という組織が担っている。TVAはその歴史の流れを乱す出来事を〝分岐イベント〞、それを起こす張本人を〝変異体=ヴァリアント〞と呼び取り締まっています。

画像: 姿の異なる並行世界の“ロキ”たち(写真は『ロキ』(2021)より)

姿の異なる並行世界の“ロキ”たち(写真は『ロキ』(2021)より)

分岐イベントの発生は神聖時間軸で認められた以外の歴史を生むのでマルチバース現象が起こるというわけです。それに先立つ「ワンダヴィジョン」ではワンダの覚醒した能力によって〝もう一つの現実世界〞が発生しました。これもマルチバースにつながる? そして「ホワット・イフ…?」(2021)では、この宇宙には可能性=たら・ればの数だけマルチバースが存在するとされています。

このようにMCUでは〈そもそもマルチバースは存在する〉〈超絶な力を持つ者によってマルチバースは発生する〉〈過去をいじることでマルチバースが発生する〉と説明されています。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)ではミステリオが別のバースから来たと偽っていましたが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)では本当にマルチバースを横断する事象が起こり、別バースにいたスパイダーマンやヴィランたちがMCUの世界に現れるという事態になってしまいます。

画像: 「スパイダーマン2」(2004)の世界からMCUにドック・オクが登場!(写真は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)より)

「スパイダーマン2」(2004)の世界からMCUにドック・オクが登場!(写真は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)より)

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