プロデューサー陣が感じる本作の“新しさ”
ー細田監督はチャレンジャーで、常に新しいものに挑戦するとのこと。本作で挑戦した“新しさ”は世界に伝わったと感じていますか?
齋藤「伝わったと思います。細田監督の映画はいつも企画の切り口が違います。それには理由があって、映画はその時代を映すものだからだと思っているからです。ただ、監督はその時代その時代の変化だけではなく、時代が常に変化していっても変わることのない普遍的なものも映画に込めている。だからこそ、その時代にしか出来ないテーマやモチーフ、新しいチャレンジングな作品になりながらも、10年、20年経っても古びない映画になっているのだと思っています。
またもうひとつの実感として、これまで以上に世界へ伝わったという実感があります。一例として、米国での興行が、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)など大作映画がある中で、初登場7位になったこと。1300スクリーン以上で上映されたとはいえ、米国市場において、我々はインディペンデントの部類に入る。また同時に米国を始め、英語圏の数字と批評がとても高かったことも嬉しかった。興収と批評双方が高く評価される中で、各国の観客層や取材媒体、広告なども、これまでにないジャンルを越えた拡がりがあったのも、印象的でしたね」
ー谷生さんは、本作からガッツリとチームの中から関わったとのこと。肌で感じた今までとの大きな違いはありましたか?
齋藤「それ、聞きたい(笑)!」
谷生「ウフフフ。2012年6月から2018年11月いっぱいまで『金曜ロードショー』(以下、金ロー)のプロデューサーでした。担当になってすぐが『おおかみこどもの雨と雪』(12)公開のタイミングでした。そこで私は初めて細田監督作品に出会ったんです。そのキャンペーンと次の作品『バケモノの子』(15)公開時のインタビュー取材などを通して監督との関係を築かせていただきました。番組と連動した宣伝の一環でしたが、独特かつ幸運な立ち位置で応援する立場でした。
そして『未来のミライ』(18)公開のタイミングで、金ローのオープニングを変えようという決断をしました。これまでの趣向を少し変えて…ということになり、金ローに関わりの深い細田監督に頼むしかない、という結論に至りました。提案した際に目の前でコンテを描き始めてくださった光景は、今でも鮮明に覚えています。
そして今回20年越しでようやく映画事業部に来たところで、事実上初めてのプロデュース作としてメインで関わることになりました。コンテ、脚本の段階から“すごい作品になる”と感じました。コロナ禍での公開で、条件的には非常に厳しい環境でしたが、ある意味、時代が求めていた作品になれたのでは、とプロデューサーとしても個人としてもうれしく思っています」
齋藤「細田監督は“自分を抱きしめる映画”だと、ずっと言ってたよね?」
谷生「今の時代、一番確立するのが難しい自己肯定感を、テーマとしてとても強く感じることができる作品です。共感対象がすごく多い作品で、どの年齢層にも自分ごととして自己を投影できるようなキャラクターがたくさんいます。老若男女問わずにいるというところがすごく大きいと思っています。実際の興行では10代から40代くらいが中心でした。コロナ禍で映画館に行きたいけれど、行けないという声もすごく耳にしていたので、そういった層にBlu-ray&DVDで作品を届けることができるのは本当にうれしいです」
細田監督の次回作のヒントとは?
ー映画館で観られなかった方だけでなく、映画館で観た方にも「もっと観たい」という気持ちでパッケージを手に取るのではないでしょうか。
谷生「4K版もあり、劇場とはまた違う形でお楽しみいただける特典もついています」
齋藤「4K版も含めて、あの音楽と歌と映像を自宅でも観て感じて頂けるのはやっぱり魅力的だと思います。しかも、パッケージ用にリマスターもしていますしね」
ー本誌のインタビューでは次回作についてはまだ何も決まっていない、とのことでしたが、本作が次回作に与える影響などはどのように感じていますか?
齋藤「海外に行くと“日本とは、日本人とは、そして自分とは”といった、アイデンティティに向き合わざるを得ない中、そう言った問題意識の中で、各国の、多くの映画人や若者たちと、今とこれからの世界について、多くの語らいが出来たのは、この大変な時代の変化の中で、とても意義あるものになっていると思います」
谷生「フランスやドイツでのキャンペーンで、特にディスカッションの機会が多かったです」
齋藤「世界中の人々が、特に子どもや若者たちが今、何を感じ、何を求め、自分の未来についてどう考えているのか。細田監督が常に描いてきたものは、僕は未来だと思うのです。『時をかける少女』(06)はまさに、主人公の真琴そのものを、これからの未来の象徴として描いた。細田作品というのは、常に先が見えない時代や今という日常の中で、アイデンティティに向き合い、そして葛藤しながらも、バイタリティを持って、未来へと一歩踏み出していく、子どもや若者の成長とその未来を描いてきたのだと思います。そして、そう言った彼らの未来を肯定し、生きるに値する世界に君たちは生きているんだというと言うことを励ますような」
谷生「集大成と評されたこの作品を経て、この先どういう作品世界を細田監督が届けていくのか、個人的にも楽しみでしかありません。国内外の反応を見る限り“どこまですごくなるのだろう”という気持ちが強くて、心からワクワクしています」
齋藤「どんな映画になるのかはまだ本当に分かりませんが、きっとまた新しいモチーフやテーマ、そして表現にチャレンジしていくと思いますよ。」
谷生俊美(左)
日本テレビ グローバルビジネス局 映画事業部主任 プロデューサー。2012年から「金曜ロードSHOW!」プロデューサーを務め、2018年より現在の部署に異動。『竜とそばかすの姫』が初映画プロデュース作品となる。
齋藤優一郎(右)
スタジオ地図 代表取締役プロデューサー。2011年に細田守監督と共に「スタジオ地図」を設立。マッドハウス所属時に手掛けた『時をかける少女』(06)以降すべての細田監督作品をプロデュース。米国映画アカデミー会員。
『竜とそばかすの姫』Blu-ray&DVDは好評発売中!
国内外で大ヒットした本作のパッケージ版が好評発売中!スペシャル・エディションではスタジオ地図作品初となる4KUHD Blu-ray<Dolby Vision® & Dolby Atmos®>が同梱。特別なブックレットや豊富な映像特典も収録されるのでファンはお見逃しなく!
スペシャル・エディション(UHD&BD)
価格:¥9,680(税込)
映像特典:Making of 竜とそばかすの姫、アフレコ舞台裏、イベント映像集、キャストインタビュー集、細田守監督インタビュー、スペシャル対談(中村佳穂× 佐藤健/中村佳穂 × 幾田りら)、スペシャル座談会(細田守 × 中村佳穂 × 常田大希)、公開記念インタビュー、佐藤健が語る映画の魅力、プロモーション映像集、タイアップ映像集
封入特典: スペシャルブックレット(劇場パンフレット縮刷+新規ページ追加)
スタンダード・エディション(BD/DVD)
BD:¥5,280(税込)/DVD:¥4,180(税込)
封入特典:劇場パンフレット縮刷版ブックレット
発売・販売元:株式会社バップ
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