90年代のハリウッド・アクションを支え、30年以上第一線を走り続けてきたブルース・ウィリス。突然の引退宣言に全世界が驚き、悲しみ、そしてその功績を称えた。長きにわたり映画界を盛り上げてくれた彼に最上級の感謝を込めて、“絶対にくたばらない男”の偉大なる足跡をたどります。(文・相馬学/デジタル編集・スクリーン編集部)

新たな才能を続々キャッチ&あの大ヒット作に出演!

ブルースが長きにわたって第一線で活躍できた理由のひとつに、新しい才能に敏感だったことが挙げられる。『レザボア・ドッグス』で注目されていたクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(1994)や、『レオン』でハリウッド進出を果たしたフランスの鬼才リュック・ベッソンの『フィフス・エレメント』(1997)、当時無名だったM・ナイト・シャマラン監督の『シックス・センス』(1999)への出演は、その好例だ。ハリウッド随一のネームバリューで俊英たちの飛躍を手助けしたブルースの功績も、決して忘れるべきではないのだ。

ブルースの快進撃は続く。1998年に主演した『アルマゲドン』は彼の主演作では最大の世界的なヒット作となり、日本でも83億円の配給収入を記録。『ダイ・ハード』の配給収入が11億円だったことを踏まえると、これはとてつもないジャンプアップ。ちなみに、本作の宣伝でブルースは2度目の来日を果たしたが、このときはお行儀もよく、舞台挨拶をはじめファンとの交流も積極的だった。筆者はこのとき初めてインタビューさせていただいたが、肩肘を張らず、リラックスして話してくれた姿に〝成熟〞を見た気がした。

画像: “絶対にくたばらない男”ブルース・ウィリスの偉大なる足跡

筆者が見た! 『アルマゲドン』来日こぼれ話

『アルマゲドン』での来日時、ブルースの宣伝活動に張り付いたが、印象深いのはどんなときも決してベースボールキャップを脱がなかったこと。インタビュー時の写真撮影の際、カメラマンに脱帽をお願いされても、これだけは譲らなかった。関係者に尋ねると、頭髪の後退を気にしているのでは?との答えが。スターとはいえ髪の悩みからは逃れられないのか……。髪の薄い筆者には、ブルースのことがちょっと身近に感じられた。

21世紀となり、ブルースの成熟は円熟へと発展していく。『シン・シティ』(2005)をはじめとするアクションの分野での活躍はそのままに、ユーモラスな犯罪劇『バンディッツ』(2001)や、シリアスな軍事ドラマ『ジャスティス』(2002)に主演。プロデュース業に進出したのもこの頃で、『ホステージ』(2005)を皮切りに自身の主演作をプロデュース。

一方で、『ベイビー・トーク』(1989)ですでに才能を示していた声優業にも積極的に挑み『森のリトル・ギャング』(2006)などのアニメーション作品にも携わる。『オーシャンズ12』(2004)や『トラブル・イン・ハリウッド』(2008)などで〝ブルース・ウィリス〞役をユーモラスに演じたのも大人の余裕というべきか。ともかく、あらゆることにチャレンジして自分を開拓していくブルースの姿勢が光った時期だ。

映画界へ恩返しするような活動が目立ったキャリア終盤

老境に差しかかった2010年代、ブルースはレジェンドとなりつつあった。同時代を駆け抜けたアクション映画の巨人シルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガーと初共演した『エクスペンダブルズ』(2010)は、その象徴でもある。

画像: 『 エクスペンダブルズ』プレミアにシルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガーと参加

『 エクスペンダブルズ』プレミアにシルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガーと参加

画像: 1991年にオープンしたレストラン「プラネット・ハリウッド」の出資者でもある3人

1991年にオープンしたレストラン「プラネット・ハリウッド」の出資者でもある3人

その一方、『ムーンライズ・キングダム』(2012)でウェス・アンダーソン監督と、『デス・ウィッシュ』(2018)でイーライ・ロス監督と組むなど、面白い才能を見極める選球眼は相変わらずだ。

近年は全米ビデオスルー作品に次々と出演し、口の悪い映画ファンには〝落ちぶれた〞などと言われもした。『ハドソン・ホーク』(1991)以来、縁の深い最低映画の祭典ラジー賞では、ついに〝ブルース・ウィリスが2021年公開映画で見せた最低演技部門〞なる賞まで新設される(注:引退宣言の後、この賞は撤回された)。それらは有名税でもあるのだが、このブルースの近年の活動は、筆者には映画界への恩返しのように思えてならない。

低予算作品に積極的に出演して無名のフィルムメーカーやプロデューサーにチャンスをあたえる。俺の名前で良ければ使ってくれ……引退を発表するまで相当な葛藤があったのは想像に難くないが、ボロボロになっても映画に出続けた彼の姿勢からは、そんな声が聞こえてくるような気がする。ともかく、映画ファンがブルースからたくさんの夢をもらった事実は揺るがないし、今はただ、ありがとうと言うべきだろう。そして、いつの日か復活してくれることを願う。なんといっても、〝簡単にはくたばらない〞スターなのだから!

Photos by Getty Images

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