本日7月7日は、2021年7月7日パーキンソン病との闘病の末85歳でこの世を去ったロバート・ダウニー監督の一周忌。この度、まもなく日本公開されるダウニーの代表作『パトニー・スウォープ』について本人が語る10年前のインタビュー内容が公開された。インタビュアーは彼を師と仰ぐポール・トーマス・アンダーソン監督がつとめている。

現在日本で『リコリス・ピザ』が公開中のアンダーソン監督は『パトニー・スウォープ』を最も影響を受けた作品の一つに挙げ、『ブギーナイツ』でドン・チードルが演じるバック・スウォープというキャラクターを創造しオマージュとしている。また、ダウニーの死後アメリカ公開された『リコリス・ピザ』は「ロバート・ダウニーに捧ぐ」という献辞で終わり弔意を示している。

そんなアンダーソン監督が2012年にダウニーへのインタビューを行っており、アメリカでは『パトニー・スウォープ』DVD発売の特典となっていたが、このほど7月22日(金)の『パトニー・スウォープ』日本初公開に際し、翻訳され日本でも解禁された。

画像: 『パトニー・スウォープ』

『パトニー・スウォープ』

アルフレッド・ヒッチコックへのフランソワーズ・トリュフォーによる「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」、ビリー・ワイルダーへのキャメロン・クロウによる「ワイルダーならどうする?―ビリー・ワイルダーとキャメロン・クロウの対話」などのインタビューと同様、成功した監督となっても、尊敬する大監督の前では映画青年となってしまうポール・トーマス・アンダーソンのまなざしが初々しく感じられる。

低予算であることもあり、町角やパーティでスカウトした見知らぬ「一般人」をキャスティングしていたことや、『パトニー・スウォープ』公開前は、映画会社にまったく気に入られなかったことなどをリラックスして話すダウニー。インディペンデント映画の伝説となってもなお権威を嫌っていた彼らしさがうかがえるインタビューとなっている。

画像: Robert Downey Sr. and Paul Thomas Anderson on Putney Swope www.youtube.com

Robert Downey Sr. and Paul Thomas Anderson on Putney Swope

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ポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA):どうしてprinceとクレジットに入れているのですが?(注:『パトニー・スウォープ』本編では Written and Directed by Robert Downey (a prince )とクレジットされている)

ロバート・ダウニー(以下RD): もう話したよ。

PTA: ええ、知ってます。(注:すでにダウニーは「あの頃は、映画のクレジットはめちゃくちゃに作っていた。●●●の映画とか●●●作品とかのところにプリンス作品っていうのが出てきたら面白いと思ったんだ」と説明していた)。でも、もう一度お願いします。

RD:『パトニー・スウォープ』の宣伝で、「ジョニー・カーソン・ショー」に出た。そこで、「なぜプリンスと言うのですか?」としつこく聞かれたんで、「キングになるのには若すぎてクイーンには真面目すぎる。」って答えたらすごくウケたな。カーソンが『パトニー・スウォープ』のミミオ大統領役の小人症の俳優のことを凄く褒めてくれてキャスティングの経緯を聞かれた。彼は、声が魅力的で、役者たちの中で最もうまく台詞を読んだ。それで、キャスティングした。素晴らしかったよ。

PTA:あと、物凄い長身の男がいましたね。

RD:彼の名前はスタン・ゴットリーブ。ブリーカー・ストリートの電話ボックスで電話しているところを見かけて気に入った。その場で「映画に出てみる気はあるか?」と聞いたんだ。素人がガッツを出すと凄いってのはわかるだろう。

PTA:ほかにもたくさん素晴らしい素人を見つけて使ってますね?

RD:ボーマン役のラリー・ウルフ(ローレンス・ウルフ)にはうちでやったボール・パーティーで出会った。彼とは先月も会ったけど、全然変わっていない。

PTA:まるで赤ちゃんみたいだった。(笑)

PTA:あのニキビの薬のCMの女の子は誰です?

RD:ああ、君も知っている女優の母親だよ。マーサ・プリンプトンの母親(注:シェリー・プリンプトン)なんだ。

PTA:そうなんですか?

RD:当時『ヘアー』や『ジーザス・クライスト・スーパースター』や『レニー』といったミュージカルの舞台監督だったトム・オホーゲン(Tom O’Hogan)が私の作品の音楽もやってくれていたんだけど、彼の勧めでミュージカルを見に言ったら良い子がいて。それが彼女だったのさ。

PTA:あの「エアコンは食べられないわよ」っていう僕のガールフレンドはどうですか?

RD:彼女が君のガールフレンドだって?なんてことを、、、 確かに彼女には完全にノックアウトされたよ。今でもきれいだ。当時スタッフ全員が彼女を見て涎を垂らしたよ。大きなOKサインを出してね。やっと良いものを拝ませてくれた、ってね。ブリーカー・ストリートにあるフィガロっていうレストランのウェイトレスだったんだ。

PTA:これはあなたの作品で一番成功しましたよね。

RD:ああ、でも最初はだれもやりたがらなかった。でもある配給会社に見せる試写会で遅れてきたやつがいて、ドアをドンドンたたくんだ。わたしは「だれですか?」と聞いたら「ドン・ルゴフ(注:『パトニー・スウォープ』ヒットの立役者。ハーバード大卒業後、家業の映画館経営を拡大しさらには配給部門にも進出しアートシアターの“父”と称えられている)だ」って言う。「だから?」と言ったら「遅れてすまない」と言ったので入れてやったんだ。彼は試写の後「自分は理解はできなかったけど、いいね」と言った。彼は劇場を持っていて1か月遅れで公開した。あの刺激的なポスターは彼のアイデアだよ。ポスターの方が映画より出来が良いって言ったら、バカ言ってんじゃないといわれた。彼は素晴らしい男だ。映画を愛していた。

「パトニー・スウォープ」-デジタル・レストア・バージョン-
7月22日(金)渋谷ホワイトシネクイントにて公開 順次全国公開
配給:RIPPLE V

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