ヌーヴェルヴァーグを代表する映画監督の一人、アニエス・ヴァルダの代表作の一つ『冬の旅』が、2014年にアニエス・ヴァルダ本人と本作の撮影監督を務めたパトリック・ブロシェによる監修で2K修復されたDCP素材で10月下旬より全国順次公開されることとなった。

本国フランスで大ヒットした、アニエス・ヴァルダ1985年の作品

28歳の時に後に「ヌーヴェルヴァーグの最初の映画」と評されることになる 『ラ・ポワント・クールト』 (54)を発表し、一躍注目を集めたアニエス・ヴァルダ。 『幸福 (しあわせ) 』 (64)では、第15回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞、名実ともにフランスを代表する映画作家として世界に認識された。

以後もフィクションとドキュメンタリーを縦横無尽に行き来し、市井に生きる人々の飾らない姿を活写し続けたヴァルダ。長年の功績が讃えられ、 2015年にはカンヌ国際映画祭名誉パルムドールを、 2017年には米アカデミー賞名誉賞を受賞している。そんな彼女の劇映画の最高傑作との呼び声が高い作品が1985年に発表された『冬の旅』 だ。

フランス片田舎の畑の側溝で、凍死体として発見された少女モナ。彼女の死に至るまでの数週間の足取りを、路上で出会った人々の証言から辿っていく。本国フランスでは、 当時のアートシアター映画としては異例の100万人を超える動員を記録。アニエス・ヴァルダ最大のヒット作と言われている。 第42回ヴェネツィア国際映画祭では最高賞の金獅子賞に輝き、主演を務めたサンドリーヌ・ボネールもセザール賞最優秀主演女優賞を受賞するなど作品も高く評価されていたが、日本では公開までに6年を要した。

しかし、30年以上の歳月を経て、2022年3月に東京・国立映画アーカイブで行われた特集「フランス映画を作った女性監督たち -放浪と抵抗の軌跡」での一度限りの上映は、早々に満席完売となる大盛況 。奇しくも、2022年の日本では、ヴァルダも好きな監督の一人と公言し、同じベルギー出身の 女性監督シャンタル・アケルマンの特集上映が盛況を呈しており 、 また『冬の旅』と同じく、「漂流する女性」を描き高く評価されつつも、長らく日の目を浴びてこなかったバーバラ・ローデンが監督・脚本・主演を務めた『WANDA』も日本初公開を迎えている 。

生涯現役を貫いて2019年3月に90歳で逝去した映画作家アニエス・ヴァルダ。 訃報に際し、マーティン・スコセッシやカトリーヌ・ドヌーブ、 ミランダ・ジュライ、 さらにマドンナやパティ・スミスなど、 映画界に留まらず世界中の人々が哀悼の意を表した。また、 彼女から影響を受けたと語る映画監督もグレタ・ガーウィグ、ケリー・ライカートやレナ・ダナム、 アリーチェ・ロルヴァケルなど枚挙にいとまがない。

『冬の旅』
10月下旬 、 シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
監督・脚本・共同編集:アニエス・ヴァルダ
撮影:パトリック・ブロシェ
音楽:ジョアンナ・ブルゾヴィッチ
出演:サンドリーヌ・ボネール、マーシャ・メリル、ステファン・フレイス、ヨランド・モロー
原題:SANS TOIT NI LOI (英題: Vagabond)/1985年 /フランス /ヨーロッパ・ビスタ /カラー /105分 © 1985 Ciné-Tamaris / films A2
配給:ザジフィルムズ
www.zaziefilms.com/fuyunotabi

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