本作で描かれるのは「時間軸が半日進み、肉体が3日若返る」という微妙すぎるパワーを持ったヘンな穴。この穴にハマったせいで、平凡な夫婦が胸の奥底に封印していた欲望と衝動が呼び覚まされていく。監督は、殺人タイヤの『ラバー』や鹿革男の狂気『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』などのカンタン・デュピュー。キャストには、デュピュー監督作品の常連俳優アラン・シャバ、『ジュリアン』のレア・ドリュッケール、『彼は秘密の女ともだち』のアナイス・ドゥムースティエ、そしてブノワ・マジメルなどフランスを代表する顔ぶれが揃っている。
今回公開となったのは、そんなマジメル演じるジェラールの登場シーン。
今作では、主人公アランの保険会社の上司で長年の友人でもあるジェラール。アランを無理やり射撃場に呼び出し、覇気のない部下であり友人のアランに「“男とは何か”これが答えさ」と一昔前の映画で聞いたようなセリフを恥じらいもなく語り、銃に弾を詰め込む。しかし、観客の予想通りに、得意げにぶっ放したショットガンの衝撃に耐えられず、ズッこけてしまい、悔しさのあまり駆け込んだトイレに閉じこもり暴言を吐き暴れだす始末。マジメルのハイテンション演技に要注目の映像となっている。
『夜の子供たち』(96)でセザール賞有望若手男優賞にノミネートされ、ミヒャエル・ハネケ監督『ピアニスト』(01)で、カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞。若くしてその美貌で世界的な注目を浴びた美形俳優ブノワ・マジメル。近年は『パリ、憎しみという名の罠』(17)などのフレンチノワール作品でも男の渋みで存在感を発揮。新作に控えるエマニュエル・ベルコ監督、カトリーヌ・ドヌーヴ共演『愛する人に伝える言葉』(22/10/7日本公開)ではセザール賞主演男優賞受賞を果たし、円熟味を増した演技で48歳にしてキャリアのセカンドハイを迎えている。
『地下室のヘンな穴』
9月2日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他 全国公開
配給:ロングライド
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