『ぼくのエリ 200歳の少女』でセンセーションを巻き起こし、豪華キャスト結集の『裏切りのサーカス』ではヴェネツィア国際映画祭はじめ、海外の映画賞から圧倒的な称賛を浴びた名匠トーマス・アルフレッドソン。待望の最新作は、とぼけた愉快な窃盗集団の大胆不敵な一大プロジェクトを痛快に描いた、初挑戦のコメディ作品となった。原案は80年代よりスウェーデンで子供から大人までを魅了してきた伝説の人気コメディ映画シリーズ“イェンソン一味”。日本で例えるならばルパン三世のように、スウェーデンの子どもたちが夢中になって視聴し、それを見ながら育った国民的人気を博す怪盗団シリーズである。
実はスウェーデン出身の監督もまた子供時代から“イェンソン一味”を観て育った大ファン。監督の代名詞ともいえる映像美と緩急のある演出で、シックで洒落た、大人も堪能できるクライムコメディに仕上げている。
画像: トーマス・アルフレッドソン監督

トーマス・アルフレッドソン監督

――本作の監督のオファーを受けた際、即断で引き受けたとお聞きしましたが、その際はどのようなお気持ちでしたか?

「家族に向けた素晴らしい機会だと思いました。自分が子供の頃、親や家族と映画館に行った事を今もすごく覚えています。誰かと一緒に何かを観に行って分かち合う体験、特に笑いやエンタメを分かち合う体験はとてもユニークだと思うんです。最近は少し変わってきて、家で映画を観ることが増えて一緒に映画館に行くという“儀式”というか、そういう機会は少なくなってきたかなと思うけれど、一緒に何かを体験する事は人間の原始的なものなので、本作だったらそれが実現できると思いました」

――スマートさとポンコツな部分を兼ね備えた、とてもチャーミングな登場人物でしたが、キャラクター作りはどのようにされていますか?

「完璧なキャラクター造形だと、観客は好ましく思わないんじゃないかと思うんです。短所があるから、そのキャラクターを気に入ってくれる。本作でも、キャンディー好きのハリィというキャラクターが、七か月もかけて計画した作戦の途中でキャンディーに夢中になって食べてしまうシーンがあるのですが、それってとても人間的なリアクションだと思います。同じような事ではなくても、観客は自分もそうだなと投影して観ることができると思うんです。自分のドジな事をキャラクターが代わりに映像の中でやってくれる、ある意味それがコメディですよね。だから、『Mr.ビーン』がここまで人気があるんだと思います。僕たちがしてしまいそうなドジな事やバカな事をビーンが代わりにやってくれる。やっぱり笑うという事に関しては、自分自身の短所を笑うよりも、他人を笑う方が楽でもありますからね。だからキャラクターを作る時は、短所があること、パーフェクトでは無いことは非常に重要な要素だし、そうであることで観客がキャラクターの中に自分を見ることができると考えています。また、観客が自分を映画の中で認識できるかということも、映画にとってとても重要な要素なんです。
さらに、この映画のキャラクターたちは、知的というわけではないけれど、それぞれにスキルを持っています。本作のキャラクターはアーミーナイフのパーツみたいなものだと思うし、皆がお互いを必要としています。それって、個人主義を大事にする今の時代にとって、すごく重要な、あるいは素敵なメッセージなんじゃないかなと思います。計画を成立させるために、全員の力を合わせないといけないんだ、と」

画像: ――スマートさとポンコツな部分を兼ね備えた、とてもチャーミングな登場人物でしたが、キャラクター作りはどのようにされていますか?

――映画製作をする際に、他作品など何か参考にしているものがあれば教えてください。

「映画が大好きなので観に行ったりはしますが、自分の映画を製作している時は、他の作品に影響されないように何も観ないようにしています。創作のインスピレーションは、例えば絵画とか、アートから得ることが多いです」

――本作や過去の作品も含めて、全くジャンルの違う作品ですが、何か共通点はございますか?

「映画を作る際、ジャンルについてはあまり考えない方が良いと思っています。例えば『ぼくのエリ 200歳の少女』を作った時、周りからはヴァンパイアものだね、ホラーだねと言われたけれど、あの作品は僕にとってはラブストーリーで、大人にならんとしている少年の恋愛映画として作ったんです。公開後にホラー映画のオファーが沢山来たんですが、僕は‟ホラーは知らないし、特に興味も無いし…”と思いました。だからジャンルをよく知らないことが、逆に何か違うものをもたらしたという意味で、良い巡り合わせだったのかなと思っています」

画像: ――本作や過去の作品も含めて、全くジャンルの違う作品ですが、何か共通点はございますか?

――過去に撮られた経験で本作に活かせた部分を教えてください。

「僕の映画作りで何か特徴的な部分があるとしたら、それは僕自身がそれを掘り下げるべきではないと思っています。自分自身が映画作家として、そういうところに興味を持つべきでないと思っているんです。映画作りでこれは自分っぽいなと意識をすることは、映画にとって良くないと思うので。大事にしていることは直感や、童心に戻って子供の目で見て、その感覚で映画を作ること。あとは、観客とうまく通じ合えるような、そういう作品をつくること。知性で考えて作るよりは、本能を大事に作っています。自分が何か脚本などを読んだ時も、自分のリアクションに耳を傾けることを大事にしています。何かを読んだ時に笑ったり泣いたり、身体が反応することは大抵良いことだったりするので、そういうことを大事にしています」

――最後に日本の皆さんへメッセージをお願いいたします。

「豊かな文化を生み出してきた日本で『ギャング・カルテット 世紀の怪盗アンサンブル』が公開される事をとても嬉しく思っています。日本は何度か訪れたこともあるとても好きな場所です。僕らがこの作品を観て笑うのと同じくらい、日本の方々にも笑ったり、何か共感して貰えたら嬉しいです。皆さんがどんなリアクションをするのか、今からとても楽しみにしています!」

ギャング・カルテット 世紀の怪盗アンサンブル

9月2日より kino cinéma横浜みなとみらい他にて全国順次公開

監督:トーマス・アルフレッドソン

脚本:トーマス・アルフレッドソン、ヘンリック・ドーシン、リカード・ウルヴスハマール

出演:ヘンリック・ドーシン、ヘダ・スターンステット、アンダース・ヨハンソン、ダーヴィド・スンディン

配給:キノフィルムズ

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画像: スウェーデンで人気の怪盗団映画シリーズで、初のコメディを手掛けたトーマス・アルフレッドソン監督インタビュー

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