ヴァルダ、仏本国最大のヒット作が2K 修復を経てスクリーンに甦る
2019 年3 月に、生涯現役を貫いて90 歳で逝去した、映画作家アニエス・ヴァルダ。
28 歳の時に、「ヌーヴェルヴァーグの最初の映画」と評されることになる『ラ・ポワント・クールト』(54)を発表し、仏映画界に新風を巻き起こし、『幸福(しあわせ)』(64)で第15 回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞、名実ともにフランスを代表する映画監督に。以後もフィクションとドキュメンタリーを縦横無尽に行き来し、常に市井に生きる人々の飾らない姿を活写し続け、2015 年にはカンヌ国際映画祭名誉パルムドールを、2017 年には米アカデミー賞名誉賞を受賞。グレタ・ガーウィグ、ケリー・ライカ―トやレナ・ダナム、アリーチェ・ロルヴァケルといった今をときめく映画監督たちもヴァルダからの影響を公言し、世界中の人々から敬愛される、唯一無二の映画作家だ。
そんな彼女の劇映画の最高傑作との呼び声が高い作品が、1985 年に発表された『冬の旅』。フランス片田舎の畑の側溝で、凍死体として発見された少女モナ。彼女の死に至るまでの数週間の足取りを、路上で出会った人々の証言から辿っていく―。
本国フランスでは当時のアートシアター映画としては異例の100 万人を超える動員を記録、第42 回ヴェネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞に輝き、主演を務めたサンドリーヌ・ボネールも第11 回セザール賞最優秀主演女優賞を受賞。日本では1991 年に劇場公開され、その後も限定的な上映は何度かあったが、今回は、2014 年にアニエス・ヴァルダ本人と撮影監督を務めたパトリック・ブロシェによる監修で2K 修復されたDCP 素材による上映で、初公開から30 年以上の歳月を経てのリバイバル公開となる。
このたび解禁となった予告編は、サンドリーヌ・ボネール演じるモナが、寝袋と大きなバックパックを背負って、路上をあてどなくさすらい、出会った人々と言葉を交わす姿を捉え、ケリー・ライカ―ト監督の「ヴァルダはいつも刺激的!」というコメントも挿入されている。
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