カバー画像:『キング・コング』(1933)よりPhoto via John Kobal Foundation/Getty Images
杉山すぴ豊
アメキャラ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」
「力の指輪」は秋の夜長にぴったり
この原稿が出るころには、アメリカでディズニー・グループの大プレゼンテーションD23が終わっているハズです。恐らくマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)についてまたすごい発表があるかと思います。それらについてはまた次回とりあげたいですね。
さて映画ではないですが、ファン待望の大作配信ドラマが相次いでリリース。日本ではU-NEXTで配信の「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」、Prime Videoの「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」です。前者は「ゲーム・オブ・スローンズ」、後者は『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚(プリクエル)。「ハウス〜」は「ゲーム〜」の製作陣が作るスピンオフですが、「力の指輪」は映画版の『ロード〜』『ホビット』とはまた別のクリエイター陣による新作です。
両方とも今年のサンディエゴ・コミコンで大規模なPRをしており気合が入っていましたが、それに見合うだけの内容でした。筆者は幸いにも劇場での試写会で最初のエピソードを拝見しましたが、映画館でみても遜色ないスケール。いっそ映画でやって欲しいぐらいですが、どちらも群像劇にして大河ドラマ。連続ドラマでじっくり楽しむのがいいかも。両方とも「ゲーム〜」や『ロード〜』を知らなくても楽しめるので、本作からそれぞれの物語にハマるのもいいでしょう。秋の夜長にピッタリです。
“モンスター・ヴァース”新作でゴジラとコングが再びタッグ?
さて映画と配信で興味深い話が。2024年3月15日公開を目指し『ゴジラvsコング』(2021)の続編が動き始め、そのストーリーが発表されました。『ゴジラvsコング』は米ワーナーとレジェンダリー・エンターテインメントが東宝のゴジラ系のキャラを借りて作り上げた『GODZILLA ゴジラ』(2014)を起点とする怪獣映画世界。MCUにならい“モンスター・ヴァース”とよばれ『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)がこの中に含まれます。従って『ゴジラvsコング』はモンスター・ヴァース映画として4作目、ゴジラ映画としては3作目、キングコング映画としては2作目。そして“『ゴジラvsコング』の続編”とは正確に言えばモンスター・ヴァース映画の5作目のことです。
なぜこういう書き方をしたかというと、当初“『ゴジラvsコング』の続編”にはゴジラが登場せず、キングコングの息子が活躍すると伝えられていました。ところが8月下旬に発表された公式のあらすじによると、ゴジラとコングが手を組んで新たな脅威(つまり新怪獣!)と闘うというすごい話になるらしい。ゴジラもコングも地球の守護神みたいなものですから、敵怪獣はメカゴジラ系の人類が作ったモンスターかキングギドラ系の宇宙怪獣? さらに“モンスター・ヴァース”を舞台にしたドラマ・シリーズがApple TV+で配信される予定です(日本での配信先は未定)。
ディズニープラスでは別の“コング”作品が
映画×配信ドラマとますますMCU的になってきたモンスター・ヴァースですが、ここに来てさらにすごい話が。ディズニープラスで、ジェームズ・ワン製作総指揮のもと『キング・コング』のドラマ・シリーズが作られるとのこと。しかもこれはモンスター・ヴァースとは無関係。これってどういうことか? 実はキング・コングは1933年の同名の映画を原作としていますが90年近く前なので権利関係が複雑なのかもしれません。モンスター・ヴァースの“キングコング”は劇中で“キングコング”と呼ばれることなく“コング”なんですね。つまり1933年の『キング・コング』からインスピレーションを得たコングという名のサル型怪獣と考えた方がいいかもです。
これに対しピーター・ジャクソンが2005年にナオミ・ワッツ出演で映画化した『キング・コング』は33年版の忠実なリメイク。なのでキング・コングという商標および“美女をさらってNYのエンパイアステートビルで暴れる”というあのストーリーに対してはキチンとした権利があり、ディズニープラスはそれをとったということでしょうか? 怪獣ファンとしてはどっちも楽しみですが(笑)。