Photo by Nic Walker/Fairfax Media/Contour by Getty Images、©1991 Studio Canal All Rights Reserved.Photo: Evan Agostini/Getty Images、Photo by 20th Century-Fox/Getty Images、Photo by Mario Tama/Getty Images
『タイタニック』(1997)で全世界歴代興行収入記録1位という金字塔を打ち立て、その記録を自ら『アバター』で塗り替えるという偉業を成し遂げたジェームズ・キャメロン監督。ハリウッドの“王”として君臨するキャメロンとはどんな監督なのか、6つのQ&Aで徹底解説します。(文・相馬学/デジタル編集・スクリーン編集部)
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ジェームズ・キャメロン プロフィール

1954年8月16日、カナダ・オンタリオ州生まれ。トラック運転手などを経て映画業界に入り、『殺人魚フライングキラー』(1981)で監督デビューするも途中解雇の憂き目に。その後自ら脚本も手掛けた『ターミネーター』(1984)で成功を収め、『エイリアン2』(1986)『ターミネーター2』(1991)と大ヒット作を連発、『タイタニック』(1997)で歴代最高の興行収入を記録した。さらに『アバター』(2009)でその記録を自ら更新している。

Q1:ジェームズ・キャメロンって、そもそも何者?

画像: 驚異的なCG技術で革命を巻き起こした『ターミネーター2』(1991)

驚異的なCG技術で革命を巻き起こした『ターミネーター2』(1991)

A:カナダで生まれ、米ハリウッドを拠点に活躍する映画監督です。が、ただの映画監督ではありません。歴代の世界興収を振り返ったとき、『アバター』(2009)を第1位に、『タイタニック』(1997)を3位に送り込んでいる希代のヒットメーカー。メディアの企画で、“もっとも稼いだ映画人”の名を挙げたとき、キャメロンの名前は『E.T.』(1982)のスティーヴン・スピルバーグや『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカス監督とともにランクインし、彼らより上のポジションにいることも珍しくありません。

Q2:ジェームズ・キャメロンの作品には、どんな特色が?

A:とにかく視覚効果にこだわっています。『アビス』(1989)『ターミネーター2』(1991)でCGをいち早く取り入れ、その発展に力を入れてきました。すべては、映像をリアルなものにするためです。作りたい作品があっても、リアルに見せるための技術が追いついていないと判断した場合は、その企画自体を断念することもあります。

一方、ドラマ的な特色を挙げれば、キャメロンは自作について、“すべてがラブストーリーである”と言い切っています。

Q3:世界的にこれほど評価されるのはなぜ?

『タイタニック』でアカデミー賞最多タイの11部門を受賞

A:ワールドワイドなヒット作を放っているということはもちろんですが、やはりクオリティが高いということが最大の理由でしょう。キャメロンは企画から脚本作り、撮影、編集など、すべての段階に目配せをしており、自身のビジョンを徹底的に追求しています。その妥協なき姿勢がもっとも評されたのが『タイタニック』。アカデミー賞11部門受賞は歴代の最多タイ。作品賞はもちろん、キャメロンは製作者として作品賞を受賞したのみならず、監督賞の栄冠をも射止めています。

Q4:『アバター』の続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のトレーラーでは海洋の場面がありますが、“海”を舞台にした作品が多い理由は?

画像: 『タイタニック』を作った理由は「実在のタイタニック号を潜って見るため」と発言したことも

『タイタニック』を作った理由は「実在のタイタニック号を潜って見るため」と発言したことも

A:『アビス』『タイタニック』など海洋を舞台にした作品は確かに多いですね。これはキャメロンがスキューバダイバーでもあることが関係しているのではないでしょうか。3,000時間以上の水中滞在を記録している彼は、ナショナルジオグラフィック協会所属の探検家で、ひとり乗りの探査艇で世界最深のマリアナ海溝に潜るという異例の快挙を達成した人物でもあります。それだけに、海に対して深い愛情を抱いているのは間違いありません。実際、自身が製作総指揮を務め、出演もした『ジェームズ・キャメロン 深海への挑戦』(2014)のようなネイチャードキュメンタリーにも関わっています。

ちなみにキャメロンは環境問題にも熱心に取り組んでおり、『アバター』で描かれていたように、生物と自然の理想的な調和を追求しています。

Q5:『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は前作と同様に3D作品になるとのことですが、どうしてそこまで3Dにこだわるのでしょう?

A:いうまでもなく、映画として作られた作品は映画館で鑑賞してこそ最高の映像体験が可能となります。キャメロンの作品は、つねにそうした姿勢によって作り出されてきました。撮りたい映画に必要な技術の成熟を待ち、満を持して取り組むのが彼の流儀。結果的に、キャメロンはこの25年で3作を演出したのみの寡作な監督となりましたが、自身のビジョンを再現できなければ、撮る意味がないという姿勢の表われかもしれません。

ここ数年で4Dをはじめ、3D以上の臨場感を体感させる上映形態が発展してきましたが、これまで映像技術を発展させてきたキャメロンだけに、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の3D映像は、別次元の体験をもたらしてくれるかもしれません。

画像: キャメロンら製作チームの協力により、『アバター』をモチーフにしたメルセデス・ベンツのコンセプトEVカーが開発された

キャメロンら製作チームの協力により、『アバター』をモチーフにしたメルセデス・ベンツのコンセプトEVカーが開発された

Q6:ジェームズ・キャメロンの名言は?

A:迷言として有名なのは、『タイタニック』でアカデミー賞を受賞した式典でのスピーチで、“僕は世界の王だ!”と劇中のセリフを引用したことでしょう。これは当時、思い上がった発言として冷笑されましたが、『タイタニック』で当時世界興収のトップに立ち、アカデミー賞の栄冠まで射止めたのだから、彼の気持ちもわからないではありません。

その後、『アバター』で再び同賞にノミネートされた際、『タイタニック』の授賞式スピーチの反省を述べつつ、“僕は受賞できないだろう”と語り、“『ハート・ロッカー』(2008)でノミネートされた元妻のキャスリン・ビグロー監督になら、喜んで負けるよ”と話しました。この言葉どおり、ビグローは見事にアカデミー賞を受賞しています。

キャメロンの名言はネットで多く検索できるので興味のある方はぜひ。ここでは、キャメロンの映画作りの姿勢を象徴する言葉を紹介します──

私は完璧主義者と呼ばれているけれど、そうではない。正しいことを目指しているだけだ。物事が正しく行われるまで、それを止めるつもりはない。正しく行われれば私は次へと進むよ

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