我が心の「理想の男No.1」アイアンマン／トニー・スタークの魅力を深掘り！【コラム：英雄ですよね？】

“財力・頭脳・ウィットの3つが揃っているところが、トニーのトニーたるゆえん”

“MCUで好きなヒーローは誰ですか？”

その問いかけへの私の答えは、もちろんアイアンマン／トニー・スターク。何を隠そう、2008年、『アイアンマン』に出会った瞬間から、ロバート・ダウニー・Jr.が演じるトニー・スタークは、我が心の「理想の男No.1」として君臨し続けている存在です。

赤いマントを翻し、ムジョルニアを振り下ろすソーの豪快さ。キャプテン・アメリカの堅物と呼びたくなるほどの高潔さ。ウィンター・ソルジャーの瞳にたたえられた哀しみ。新たなキャラクターが登場するたびに、その持ち味を増幅する俳優陣の魅力とあいまってときめきつづけてきたなかでも、トニーの魅力は絶対的。億万長者の実業家でもある天才科学者が、自ら開発したパワード・スーツに身を包み、世界を守るために闘っちゃうんですから。マリブの断崖に聳えるスターク邸が象徴する「すべてを手にした男」感とあいまって、憧れるなというほうが無理でしょう。

MCU以外にも大富豪のアメコミヒーローはいるし、MCUにも王国の君主や後継者といったステータスの高いヒーローは少なくない。そんななかでトニーを格別の存在にしているのは、シニカルなユーモアと破天荒さ。

アイアンマンになる以前は、授賞式をすっぽかしてカジノで遊んでいたりと、亡き父・ハワードに愛されていなかったと思い込んで享楽的に生きてきた御曹司の孤独や寂しさを、皮肉の奥に隠している感がありました。けれども、スターク・インダストリーズが製造した武器が、罪のない人々の命を奪っていることを知り、自らがアイアンマンとして平和のための抑止力となることを決意してからは、苦悩や葛藤をそのユーモアや破天荒さの奥に隠すことになったのはご存じの通り。

ウィットに富んだアメコミヒーローは珍しくないけれど、財力・頭脳・ウィットの3つが揃っているところが、トニーのトニーたるゆえん（そもそも彼の破天荒さは、あの財力があればこそではありますが！）。パワード・スーツを改良しながらのジャーヴィスとの会話も、軽妙で機知に富んでおりました。そうして開発されたスーツの性能そのものもさることながら、スーパーヒーローものの醍醐味である変身シーンを堪能させてくれるのも、アイアンマンの大きな魅力。落下しながらでも、トニーめがけて飛んでくるスーツが装着できる、あのカタルシス！ 第1作のラストで自分がアイアンマンだと明かしてしまう破天荒さのおかげで、活動初期のスパイダーマンみたいに路地裏でこっそり着替えるなんてこともしなくていい。モナコのレース会場でウィップラッシュに襲われるなか、マーク5を装着するシーンがお気に入り装着シーンという方も多いのでは？ 大観衆の面前というあたりが、外連味たっぷりでシーンの派手さを盛り上げてましたよね。

もちろん、そんなトニーの魅力が陰影豊かになったのも、演じるのがロバート・ダウニー・Jr.だからこそ。アベンジャーズが危険な存在として警戒されはじめ、MCUがシリアスさを増していくなかでも、スパイダーマン／ピーター・パーカーとの擬似親子を思わせる師弟関係は、トニーの真髄を堪能させてくれました。トニーとの初対面シーンといい、シビル・ウォーでの戦いぶりといい、その帰路の車中といい、憧れのスタークさんとの出会いに興奮しまくり喋りっぱなしのピーターとのシーンのかずかずは、演技派揃いのMCUの中でも俳優同士のケミストリーを楽しませてくれて、愛さずにいられません。

とはいえ、財力を活かした奨学金で優秀な学生たちを支援する一方、地元業者の仕事を奪ったことに気づいていなかったり、セレブ育ちのトニーは、庶民の苦労を想像できない部分もあった。『アベンジャーズ／エンドゲーム』（2019）までの11年は、決して完璧な存在ではかったトニーの、人として、ヒーローとしての成長物語でもある。「I am Ironman」という言葉の重みがシリーズを重ねるごとに増していったのも、その証明ですよね。