増村保造、市川崑ら日本映画界の巨匠を助監督として支えた近藤明男監督
「人間は恋と革命のために生れてきた」―太宰治の名言が刻まれた名著「斜陽」執筆から75年を記念する映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』。今もなお若い読者を獲得し読み継がれている「斜陽」は、戦後の日本を舞台に没落貴族の娘かず子と彼女が想いを寄せる売れっ子作家との“恋と革命の物語”である。
近藤明男監督は、吉村公三郎、増村保造、市川崑ら、日本映画界の巨匠監督を助監督として支えてきた。『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』は、師と仰ぐ名匠、増村保造監督と脚本家の白坂依志夫が遺した脚本を基に脚本を再構築、現代を照射する作品に仕上がっている。近藤監督は、早稲田大学在学中から数々の映画の助監督としてキャリアをスタート。卒業後、名匠・吉村公三郎監督『襤褸の旗』(74)、増村保造監督『大地の子守唄』(74)『曽根崎心中』(78)などに参加。自身の監督代表作には、高橋惠子に毎日映画コンクール女優助演賞をもたらし異例のロングラン上映となった『ふみ子の海』(07)、東日本大震災の被災地石巻市の失われた風景が記録され、中国金鶏百花映画祭で吉井一肇が史上最年少主演男優賞に輝いた『エクレール・お菓子放浪記』(11)がある。
世界的な大監督である増村保造は、東大法学部を卒業後、大映東京撮影所に助監督として入社。その後東京大学文学部に再入学し、52年にはイタリアに留学。イタリア国立映画実験センターでフェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティらに学ぶ。ヨーロッパ映画の演出術を学んだその作風は大いに注目を浴び、大映の絶頂期を支え多くの作品を発表、名女優、若尾文子を主演の傑作を数多く生んだ名匠でもある。脚本界の大御所、八住利雄を父に、山本夏彦を母方の叔父に持つ白坂依志夫が共同脚本をつとめている。白坂は、三島由紀夫原作の『永すぎた春』(57)で注目され、『青空娘』(57)や『大地の子守歌』(76)、『曾根崎心中』(78)で増村保造監督作品に参加、85年に近藤明男監督『思い出を売る店』が遺作となった。
師と仰ぐ増村、白坂の遺稿を基に、近藤監督が全情熱を込めて完成させた本作は、真っ直ぐに生きる女と自由に生きる男の「恋と革命の物語」。太宰治の名著「斜陽」を現代に蘇らせた近藤監督の情熱の結晶である本作をぜひ劇場で鑑賞して欲しい。
『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』
10月28日(金) よりTOHOシネマズ甲府、シアターセントラルBe館にて先行公開
11月4日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開
【配給】彩プロ 映倫G
©2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会(オフィス近藤 アップサイド 実正寺 スペースT ぱあとなあ ハーモニー ライジングシネマ 山梨日日新聞社 山梨放送)