最新インタビューを通して編集部が特に注目する一人に光をあてる“今月の顔”。今回は女優として活躍する一方で、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)で監督としても高い評価を得たオリヴィア・ワイルド。待望の長編監督2作目で全米初登場1位の大ヒットを飛ばしている『ドント・ウォーリー・ダーリン』について話を聞きました。
カバー画像:Photo by Robby Klein/Contour by Getty Images

“外見上はエンターテインメントだけど、そこには複雑な何かがある。私はいつもそういう映画を作りたい。”

『トロン:レガシー』(2010)『リチャード・ジュエル』(2019)など映画やテレビ、舞台など多くの作品で女優として活躍し、プロデューサー、慈善事業団体コンシャス・コマースの共同創立者などいくつもの顔を持つオリヴィア・ワイルド。2019年に『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で監督デビューを果たすと、インディペンデント・スピリット賞最優秀新人作品賞を受賞するなど絶賛を浴び、ハリウッドの次代を担うフィルムメーカーの一人としても大きな期待が寄せられている。

そんな彼女が長編監督2作目として手掛けたのが『ドント・ウォーリー・ダーリン』。“青春コメディ映画の革命”といわれた前作から一転、本作は驚くことにサイコサスペンス。自ら出演も兼任し、予想できない展開で観るものを惹きつける本格スリラーを作り上げた。発表された瞬間から話題を呼んだ本作は、脚本の入札に18社以上のスタジオが集まり、激しい争奪戦が繰り広げられる事態に。先日公開された全米では初登場1位の大ヒットを記録し、彼女のクリエイターとしての類いまれなセンスと底知れない才能を再び証明することになった。

画像: Photo by Robby Klein/Contour by Getty Images
Photo by Robby Klein/Contour by Getty Images

オリヴィア・ワイルド プロフィール

1984年3月10日、アメリカ・ニューヨーク州生まれ。『トロン:レガシー』(2010)『ラッシュ/プライドと友情』(2013)『her/世界でひとつの彼女』(2013)など女優として数々の話題作に出演。2019年に『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』で監督デビューを果たし、その演出スタイルも絶賛を浴びた。『ドント・ウォーリー・ダーリン』のハリー・スタイルズと交際中。

── 前作『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)を経て、2作目となる監督作品ですが、前作とうって変わって本作はサイコスリラー作品となりました。最初にこの題材を選んだ理由、またどのように物語を膨らませていったのか教えてください。

私はサイコスリラーが好きなので、作るきっかけが欲しかった。子どもの頃は姉と一緒に明かりの前にカーテンを張って影絵でスリラー劇を作ったりしていた。それ以外にも自分の寝室で“ホラー本図書館”を開き、一冊につき1セントの貸出料を徴収したりしていた。スリラーやホラー映画は昔から大好きだし、コメディと並んで、観客の感情を操る究極の方法だと思う。人の心の奥深くにある琴線に直結することだから、それは監督としては大きな喜び。観客を笑わせたり、意表をついたりするのがコメディなわけだけど、スリラーでも同じことだと思う。

加えてラブストーリーを作りたいという思いもあり、「スリラーでありながら、ラブストーリーでもあり、政治的でもある作品を作れないものか」と考えていた。興味のあるさまざまなことに触れるチャンスだった。ただ、これはあまりにも野心的な作品だったから、誰も作らせてはくれないだろうと思い込んでいた。スケール感においても、どこで誰とどう撮るかという点においてもとにかく野心作だった。そんな中、想像以上の作品を作ることができ、本当にラッキーだった。

── 主演を務めたフローレンス・ピューとの仕事はいかがでしたか? アリスは難しい役柄だったと思いますが、彼女の才能について教えていただけますか?

フローレンスは、ドラマ女優として素晴らしい技術を持ちながらコメディアンとしても優れていて、皮肉のセンスが見事。とても珍しい組み合わせだと思う。アクション・ヒーローでもある。彼女の走り方は「まるでトム・クルーズのよう」と言ってよく笑い合っていた。どこを走ってもまるで『ミッション:インポッシブル』のように、完璧なフォームで、ありえないスピードでひたすら走り続ける。加えて、“ここはまだ彼女のキャリアのファーストステージに過ぎない。これからますます活躍することになるだろう”という可能性が感じられた。

画像: © 2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
© 2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

もちろん『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)でアカデミー賞にノミネートされたり、『ミッドサマー』(2019)や『レディ・マクベス』(2016)など素晴らしい実績を残したりしていて、すでに確固たる地位を築いているのは言うまでもないし、それは驚くべきことでもない。フローレンスにはオールド・ハリウッドのような魅力があって人を惹きつける。まるで別の時代から来たかのような存在感と強さがある。どんな障壁が立ちはだかっても彼女は前進するはず。とても意志の強い人だと思う。

── 主人公の夫ジャックを演じたハリー・スタイルズのキャスティング理由と演技の感想を教えてください。

ジャック役は、後半の展開がとても予想できないような、温厚でチャーミングな存在感のある役者でなければならなかった。つい好きになってしまいそうな、信じてしまいそうな人が必要だった。ジャックの場合、大事なのは真心感。危険な組織の一員かもしれないという疑念があっても、「彼は何も知らないのかもしれない」と思わせるような無垢さが欲しかった。そして何より、アリスとの相性が良くなければならなかった。フローレンスとハリーは、本物で温かく繊細な人間関係をふたりでつくり上げ、スクリーンに紡ぎだしてくれた。

── 本作は『危険な情事』(1987)や『幸福の条件』(1993)といった作品から触発されたと発言されており、インスピレーションの源として『インセプション』(2010)『マトリックス』『トゥルーマン・ショー』(1988)といった作品を挙げられていますが、これらの作品は本作にどのような影響を与えましたか?

各作品、それぞれの影響がある。エイドリアン・ライン監督の映画について発言したのは、現在のアメリカ映画であまりみられなくなったエロティシズムがあると思うから。そして『マトリックス』や『トゥルーマン・ショー』のような映画は、私たちの現実に対する認識を覆し、非常に複雑で哲学的なテーマを提示しつつ、大勢が理解し、楽しめるエンターテインメントに仕上げている。

また、見た後に考えさせられる。『トゥルーマン・ショー』はコメディだけど、実存的な問いを投げかけている。一番面白いタイプの映画は“トロイの木馬”のような映画だと思う。外見上はエンターテインメントだけど、見始めると、そこにはもっと複雑な何かがあることがわかる。私はいつもそういう映画を作りたいと思っている。

ドント・ウォーリー・ダーリン
2022年11月11日(金)公開

監督: オリヴィア・ワイルド
出演: フローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、オリヴィア・ワイルド、ジェンマ・チャン、キキ・レイン、ニック・クロール、クリス・パイン
配給: ワーナー・ブラザース映画

青春コメディ映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)で長編監督デビューを果たしたオリヴィア・ワイルドが今度は本格スリラーに挑戦。完璧な生活が保証された街に住む主人公・アリスを襲う不気味な現象と恐怖を描く。『ミッドサマー』(2019)のフローレンス・ピューをはじめ、ハリー・スタイルズ、クリス・パイン、ジェンマ・チャンなど豪華キャストが集結。

© 2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

This article is a sponsored article by
''.