甫木元空監督『はだかのゆめ』が、11月25日(金)より渋谷シネクイントを皮切りに全国順次公開となり、26日(土)に主演の青木柚、唯野未歩子、甫木元空監督、および音楽を担当した菊池剛(Bialystocks)が上映前の舞台挨拶に登壇した。
画像: 『はだかのゆめ』舞台挨拶に青木柚らキャスト&甫木元空監督が登壇

高知県四万十川のほとりに暮らす一家、息子のノロ、母、祖父の親子3代にわたる時間と、その時間の境界線を飛び越えた触れ合いを描く『はだかのゆめ』。大学時代の恩師である青山真治監督による初プロデュース作品『はるねこ』(2016)で監督デビューした甫木元空の監督第2作目であり、TV ドラマ『きれいのくに』(NHK)、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)、さらに Amazon Original『モアザンワーズ』など、話題作への出演が続いている青木柚が主演を務めた。

5年前に高知県に移住した甫木元空監督が、祖父や病気で余命宣告を受けた母の言葉を書き留めていくなかでできた小説から再抽出して、今回の映画の脚本は生まれた。甫木元監督は「(自身のバンドである)Bialystocks のミュージックビデオの予算をかき集めて、映画を一本撮らせてもらえないかと提案したらその企画が通った」と製作の経緯を打ち明け、「5年ぐらいずっと一人で書いていた脚本。自分のなかではこの5年間のうちに起きたこと、高知で聞いたこと、考えていたことが詰め込まれている」と語った。

『はだかのゆめ』のパンフレットには、撮影に入る前のシナリオが収録されている。だが、実際の本編とは違う部分も多いことを司会から問われると、甫木元監督は「自分の世界で、台本のなかだけで完成しないように。そこで完成を決めてしまうと自分だけの話になってしまう。それだと映画にしなくてもいいんじゃないかなと思っていたので、現場で撮りながら変えたところや、編集で変わっていったところも多かった。いろんなことが介入して変わっていくことも含めて楽しめたらと思いながら作っていた」とその理由を述べた。

主人公ノロは“お盆にも遅れるノロマな幽霊”という役どころ。青木はシナリオについて「甫木元さんの脳内の感覚とか言葉が感じられるもので、魅力的に感じつつも、演じる側の視点をいれてみると、どうすればいいのかなと思ったのが第一印象。景色、感覚的なものがしみこんでいるような脚本だった」とのこと。そこで、司会が青木のパンフレット掲載のインタビューから抜粋し、<正解でも不正解でもない間をずっと漂うみたいな関係性><組み立てるという考えを放棄した状態で演じた>という役作りについての発言を改めて読み上げると、青木は「そこだけを取り出しちゃうと、なんかかっこつけた言葉で恥ずかしい……やめましょう!」と照れる場面も。演じるにあたっては「頭で考えるのではなくて、実際にその土地に行ってみて分かったことが多い。あまりにも本物の景色と時間と川と、甫木元さんがお祖父さんと実際に住んでいる家があって、かつてお母様が使われていたものなどもすべてが本物。それと唯野さん演じる“お母さん”としての佇まいとに、もう完全に身を任せている状態でした」と撮影当時を振り返った。

また映画の劇伴は Bialystocks が手がけていることについて話題が及ぶと、甫木元監督は「バンドメンバーである菊池剛に本編をつないだものをまず観てもらったあとに、音楽はいらないんじゃないですか、と言われたことで、この映画のなかでは音楽がなにか気持ちを代弁したり、語らなくてもいいのかなと解釈した」という。劇中ではBialystocks のもともと録音していた歌をストリングスアレンジした曲や、菊池によって新たに映画のために作られた曲のほか、映画の最後には甫木元が作詞作曲をした主題歌である「はだかのゆめ」が流れる。唯野は「今回撮影にあたって Bialystocks を初めて知ったんですが、もうすっかりファンになった。この映画とともに Bialystocks の曲も何度も何度も聞かれていってほしい」と彼らの音楽を絶賛した。

最後、甫木元監督は「たとえば死や、なにか悲しいことを飲み込むには、それぞれ方法があると思うし、この日を境になにかを乗り越えた、というのはあんまりないと思うんですよね。それぞれかかる時間も違うし、取り繕うように生活しているうちに気がついたら薄れていったりするもの。この映画の登場人物はそれぞれが違う時間を持っている。言わば、そんな彼らがさまよっていくうちに、少しだけ「死」を飲み込めるようになって終わるという映画。本当だったらここから物語が始まるような。その隙間に落ちているものを贅沢に撮らせてもらった映画です」と語り、青木は「人が人を一心に思うこととか、土地とそれぞれのなかに流れる時間の結びつきみたいな、そういう純度の高いものが映画のなかに流れている。僕自身、人の温度を感じる映画にこれからもずっと関わっていきたいと思います。『はだかのゆめ』は自分のなかでもとても大切な作品」と語り、舞台挨拶は幕を閉じた。

渋谷シネクイントでは、公開記念イベントとして、11/29(火)19:00~ 『はだかのゆめ』 と甫木元監督の長編デビュー作『はるねこ』2 本立て上映+監督トーク、また 11/30(水)19:15~ 『はだかのゆめ』 と甫木元監督の大学時代の卒業制作として発表された初期中編『終わりのない歌』の 2 本立て上映に加えて、『はだかのゆめ』にも出演している前野健太と甫木元監督によるミニライブがおこなわれる。詳細はシネクイントおよび映画の公式サイトにて。

はだかのゆめ
渋谷シネクイントにて公開中!ほか全国順次ロードショー
配給:boid/VOICE OF GHOST
©PONY CANYON

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