ビートルズの記録を破り、シングル「Saving All My Love For You」以降7曲連続で全米シングル・チャート1位を獲得、その圧倒的な歌声は‟THE VOICE“と称され、アルバムやシングルなどこれまでのトータル・セールスは2億枚超。さらにグラミー賞6冠など400を超える受賞歴はギネス世界記録に認定、音楽史に残る大偉業を成し遂げたホイットニー・ヒューストン。本作『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』は、そんな彼女のジャンルも人種も超えた<グレイテストソング>誕生の瞬間や、「歌いたい曲を、自分らしく歌う」ことに命を燃やした栄光の半生を、数々のNo.1ヒットソングとともに臨場感たっぷりに描ききる。
“彼女の本当の物語はまだ語られていない”
本作の脚本を務めたアンソニー・マクカーテンは、アカデミー作品賞にノミネートされた『博士と彼女のセオリー』(15)や『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(18)のほか、クイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』(18)で世界的成功を収めたことでも知られる人物。
ホイットニーの伝記映画の制作について、彼女の生涯に渡っての音楽パートナーであったクライヴ・デイヴィスから相談を受けた当初は「新鮮でまだ語られていないホイットニーのストーリーがあるのかどうかが確信を持てなかった」と言う。
しかし翌日、デイヴィスに見せられた<ホイットニーの“不可能なメドレー”(「I Loves You,Porgy」「And I Am Telling You I'm Not Going」「I Have Nothing」>として未だ伝説を残す、1994年のアメリカン・ミュージック・アワードで披露したパフォーマンスを目にして、その考えを改める。圧倒的な声量と技術を必要とするこのメドレー。「通常ならありえない楽曲を組み、その実際の映像を見たことで、映画の可能性を感じたのです」と振り返る。
同時に、マクカーテンは当然ながら、多くの人を同じように<ホイットニー・ヒューストンの物語は、悲劇ではないのか?>と懸念したことも告白する。しかし「アーティストを、もし生きた年数だけで判断するならば、シェイクスピアの人生は悲劇です」とマクカーテンは言う。「ホイットニーの人生は勝利に満ちています。彼女は私たちに特別な瞬間、素晴らしいパフォーマンスを与えてくれました。彼女の本当の物語はまだ語られていないのです」と本作に脚本家、そしてプロデューサーとして名を連ねることを決意。
「ドキュメンタリーや本では、音楽を伝えることはできません」「音楽なしでホイットニーのストーリーを語ろうとしたら、それはオチのないジョークのようになってしまいます。そして、結末はともかく、ホイットニーの物語は人々に感動を与えます」と本作への想いを語った。
『ボヘミアン・ラプソディ』でマクカーテンと仕事を共にしたプロデューサーのデニス・オサリヴァンも「アンソニーが素晴らしいのは、ストーリーを語る手助けとなる曲を常に見つけること。彼の手にかかると、曲が、その人が経験している感情や出来事を際立たせるのです」「そうして、彼女の人生を語る上で必要な、重要で中心的な役割を果たす曲をすべて盛り込むことができたのです」と付け加える。
そして、「ホイットニーは人生で間違いなく悪魔に直面しました。年間70日ものツアーをこなし、睡眠をとらず、ただ生き延びようとする生活では、解放されるための罠にはまるのは簡単なことです」と話す。だが、製作陣にとっても、物語のこの部分を、共感とニュアンスをもって、しかし、お世辞や迎合することなく、ストレートに伝えることが重要だったと言う。ヒューストンの家族と財団からすべてを語る許可を獲得し、この映画は一切手加減を加えず、そして愛をもって、ホイットニーが本来一番伝えられるべき、歌声と偉業を改めて描き出すことに最大限の敬意を払ったことを明かしている。
『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』
12月23日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国の映画館にて公開
監督:ケイシー・レモンズ
脚本:アンソニー・マクカーテン
出演:ナオミ・アッキー、スタンリー・トゥッチ、アシュトン・サンダース
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント