約40年にわたってハリウッドを中心に映画記者活動を続けている筆者が、その期間にインタビューしたスターは星の数。現在の大スターも駆け出しのころから知り合いというわけです。ということで、普段はなかなか知ることのできないビッグスターの昔と今の素顔を語ってもらう興味津々のコーナーです。今回は、ケイト・ウィンスレットのパワフルで刺激的なエピソードに注目です。(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

外見ばかり気にする業界を非難し次世代へのリーダーシップを発揮する

ハリウッドは今、男優、女優という性別を止めて、全て平等に「俳優」として評価しようという動きが始まった。「ノンバイナリー」と言われる、男性でも女性でもなく、呼びかけも、He(彼)とか、She(彼女)でなく、They(彼ら)という言葉を使うように設定されている。人々、人種、年齢などで判断してはいけない、などなど革命期に入ってきたのである。

ケイト・ウィンスレットもここに来て「新人の頃は何かとプロデューサーや監督にもう少し痩せて欲しいと言われて、落ち込んだことがしばしばあったけれど、もう人の指図で体重を変えたりしませんよ。これからの新人たちに自分の権利を知ってほしい」と外見ばかり気にするハリウッドを批判、持ち前の姉御肌のリーダーシップを発揮している。

画像: 1996年ころのケイト

1996年ころのケイト

現在47歳、『愛を読むひと』(2008)でオスカー主演賞受賞、英国演劇一家の出身で13歳から舞台に立って来た経験と自信に加えてケイトにはユニークな「ナマの迫力」が備わっているからコメントにも重みが加わって嘘っぽさのかけらもない。

初めて会ったのは175人の応募者から選ばれた『乙女の祈り』(1994)の時。ケイトはまだ18歳だったが、肝っ玉が座った健康美に溢れた乙女だった。

世界中で注目された『タイタニック』(1997)では、まだ坊やっぽかったレオナルド・ディカプリオを支えて、頼りになる姉貴ぶりを発揮(実際にはケイトの方が一つ年下)、以来、二人はお互いにアイドル時代を乗り切ったスター同士として固い結びつきを保っている。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ではトム・クルーズを破る記録も

2011年にレコード会社、航空会社などの富豪のオーナー、リチャード・ブランソンの別荘に滞在している時、火事が発生してブランソンの90歳の母親を背負って避難したというのも有名なエピソードで、ケイトの正義心、体力と責任感の強さ!にびっくり。何とこの火事救助が縁でケイトはブランソンの甥っ子と3度目の結婚、二人の間に息子が生まれた時は、火事を記念してベア・ブレイズ(炎の熊)と名付けたというのも凄い!

画像1: 筆者とケイト

筆者とケイト

最近の『アンモナイトの目覚め』(2020)ではシアーシャ・ローナンとベッドが壊れそうな程にダイナミックなレズビアン・セックスシーンを激演。そして待望の新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022)では新参加ながらロナルという役をパワフルに演じきっている。

「特別なトレーニングを受けて肺活量を大幅に増やしたのよ。何とトム・クルーズが2015年に『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』の時に記録した6分を大幅に上回って7分15秒も潜水したのだから。この潜水は絶対に一人でやっては駄目。3週間、毎日酸素を体の細胞に配るという訓練を受けてから潜ったの。ただ、普通に潜って頑張ると気を失ってしまう筆者とケイトからとっても危険。この映画では潜水も初めてだったけれど、モーション・キャプチャーという体に点々を貼り付けてそれを画面でアバターにするという初体験をして毎日が刺激的だった。でもね、今は以前のように仕事、仕事の日々は止めて子供たちの学校がないホリデーのときだけ、撮影に入るようにしている」

結婚しても戸籍の名字を変えず、ハリウッドの美人女優ルールを無視し、潔く、情に厚く、自分の信念に沿って、積極的に行動を取り、素朴で、ストレートなパーソナリティーは現代女性の最高のお手本であろう。

お次は『リー』Leeという映画で、第2次大戦の従軍カメラマンをした実在の元ファッションモデルの役を演じるそうで、戦場での勇気溢れる姿を見せてくれるに違いない。

画像2: 筆者とケイト

筆者とケイト

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