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キー・ホイ・クァン
1971年8月20日、ベトナム・サイゴン生まれ。ベトナム戦争の影響により一家で香港を経て、アメリカへ移住。1984年に『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』のショート・ラウンド役を務め子役としてデビュー。翌年『グーニーズ』にも出演し、人気を集める。その後『X-MEN』(2000)や『ザ・ワン』(2001)では、コレオグラファー(武術指導)としても活躍。待機作は、マーベル・シネマティック・ユニバースのドラマシリーズ「ロキ」シーズン2。
“自分の人生全体や、今までの様々な人生の段階を振り返り、それらすべてをウェイモンドに落とし込みました”
── アカデミー賞ノミネートが分かった瞬間のことを教えてください。
いやもう、最高の気分ですね。自分がオスカー候補の役者だなんて信じられないし、びっくりしちゃいます。20年以上遠ざかっていたのに、復帰作がエブエブで、更に、このような評価をいただけるなんて、とてもとても光栄です。本当に、信じられない気持ちでいっぱいです。
── 本作の脚本を読んだ最初の感想をきかせてください。
エブエブの脚本を初めて読んだ時は感無量でしたね。こういう脚本をずっと読みたかったからです。当時は、アジア人の俳優のためにこのような脚本を書かれなかった。だから、読んだ時、絶対に参加したいと思ったんです。しかも、ずっとファンだったミシェル・ヨーとも一緒に仕事ができるかもしれなかったし。監督・脚本を務めたダニエルズがウェイモンド役に起用してくれた時は、とても驚いたし、嬉しかった。思わず快哉を叫びました。お菓子屋さんにいる子供のように、飛び跳ねちゃいましたね(笑)
そして映画の公開以来、この旅は僕にとって本当にエモーショナルなものになりました。というのも、かなりのブランクがありましたから、観客が僕を覚えているとは思っていなかったからなんです。だけど、観客・ファンの皆さんに実際に会えて、エブエブをどれだけ楽しんだかを聞くことができ、僕のカムバックをすごくポジティブに、大きな優しい気持ちで受け止めてくださっていて、本当に心が温かくなりました。
── 撮影中、いちばん苦労したところは?
いちばん苦労したことですよね。たくさんありましたね。多くは20年以上ブランクがあったことに起因していました。(でも大変だったのは)まずフィジカル面。例えば、ウェスト・ポーチ・ファイトのシークエンスですね。これは縄鏢(Wu Shu Rope Dart)と呼ばれるスタイルを使ったのですが、初めての僕には何もわからなかった。長年、武術を学んできてはいますが、テコンドーなので、手と足を使うことには慣れている。でも、スタイルが違ったんです。だから、アクションチームと一緒に長い間トレーニングをしました。肉体面はそんな感じですね。
それから、1人のキャラクターの3バージョンを演じるので、観客が今どのバージョンなのか、見分けられるようにすることが重要だと考えました。そこで、演技コーチ、ボイス・コーチ、ダイアログ・コーチ、そしてこれが最も重要だったのですが、ボディ・ムーブメントのコーチを雇って臨みました。たくさんの方に助けてもらったんです。
感情面でも、このキャラクターのために、自分もとても正直になる必要があると思いました。だから、時間をかけて自分を説得して、自分の人生全体や、今までの様々な人生の段階を振り返り、それらすべてをウェイモンドに落とし込みました。自分自身に対してもオープンに、正直であることを心がけました。やることはたくさんあって大変でしたが、でも、正直言うと、もう二度とこんな経験はできないと(エブエブまでは)思っていたので、最高の時間を過ごせました。好きなことを仕事にできることは、本当に恵まれていることです。
── ゴールデングローブ賞でのスピルバーグ監督へのメッセージも感動的でした! まさにキャリアの出発点だった、『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』、そして日本でも大人気を博した『グーニーズ』はあなたにどんな影響を与えましたか?
『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984)は一生大好きな作品です。まず、スティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスという、巨匠監督2人が初めて大きなスクリーン用にアジア人をキャストした映画ですからね。しかもハリウッド超大作で、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981)という、当時最もヒットし得ていた作品のひとつの続編ですよ。だから感謝の念しかないです。
また、この映画は僕の人生を変えもしました。僕の人生の軌道を変え、そのおかげで僕の人生は良くなった。また、何年も経った今でも愛されるような作品に参加することができたのは特別なことです。未だに「あなたはもしかして『インディ・ジョーンズ』に出てた子供? ショート・ラウンド?」って聞かれるんですよ。そして、あの映画と僕の演技を今でも愛してくれる人たちがいることが嬉しいです。
ゴールデングローブ賞の受賞スピーチでも言いましたが、長い間、もうこれで終わりなのかなと不安だったんです。(子供の頃に)達成したことを、もう一生、超えることはできないのではないかとね。でも、感謝すべきことに、エブエブという小さな映画がやって来て、それがすべてを変えたんです。今は、外にいると、たくさんの人がエブエブのウェイモンドだ! と声をかけてくれます。と同時に、『インディ・ジョーンズ』のショート・ラウンドだ! とか『グーニーズ』(1985)のデータだ! とも声をかけてくれる。そうなりたいと僕が望んでいたことが起きているんです。だからエブエブは僕にとって本当に大きな贈り物となった作品なんです。
『エブリシング・エブリウェア・ オール・アット・ワンス』
全国公開中
破産寸前のコインランドリーを経営している中国移民のエブリン。ある日、確定申告をしに父と夫・ウェイモンドを連れて国税庁へ向かう途中に突如、夫の身体に乗り移った別宇宙(アルファバース)のウェイモンドに「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」とこの世界の命運を託される。果たして、エブリンは世界を救うことが出来るのか…。
監督・脚本:ダニエルズ
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス
配給:ギャガ