最新インタビューを通して編集部が特に注目するキーパーソンに光をあてる“今月の顔”。今回は、名匠サム・メンデス監督が映画と映画館、そして自身の人生にオマージュを捧げた『エンパイア・オブ・ライト』より、キャリア史上最高の演技との呼び声も高いオリヴィア・コールマン、そして新鋭マイケル・ウォードのインタビューをお届けします。

オリヴィア・コールマン(画像右)

1974年1月30日、イギリス・ノーフォーク州生まれ。俳優デビューは2000年。TVシリーズ「ナイト・マネジャー」(2016)でゴールデングローブ賞、『女王陛下のお気に入り』(2018)でアカデミー賞を受賞。直近も『ファーザー』(2020)、『ロスト・ドーター』(2021)など話題作に続々出演。待機作に「チャーリーとチョコレート工場」の前日譚『Wonka(原題)』などがある。

マイケル・ウォード(画像左)

1997年ジャマイカ生まれ。ギャングの若者たちの実態を描く『ブルー・ストーリー』(2019)で主人公の一人を演じ、犯罪ドラマ「トップボーイ」(2019-22)でも主役を務めた。2020年の英国アカデミー賞では、ライジング・スター賞を受賞したほか「スモール・アックス」で助演男優賞候補に。新作は、ホームレスのサッカー選手を描くビル・ナイ共演作『The Beautiful Game(原題)』。

『女王陛下のお気に入り』(2018)でアカデミー賞主演女優賞を受賞、『ロスト・ドーター』(2021)でも同賞にノミネートされた名優オリヴィア・コールマン。本作では、初タッグとなるサム・メンデス監督の母の経験が投影されたヒラリーを演じているが、役を作り上げるにあたり不安もあったと話す。

オリヴィア:彼にとって大切なことなので、怖さはありました。サム自身も取り組むのが難しいと感じるような、とても感情的で生々しいシーンというのもありましたね。私は脚本に描かれたヒラリーが大好きです。つながりを感じられる部分がたくさんあるんです。映画には他にも共感できる人物がたくさん登場します。

例えばトム・ブルックが演じるニール、トビー・ジョーンズが演じるノーマンなどですね。彼らはヒラリーが直面する心の病を理解し、優しく接してくれます。そうした意味で、彼らは時代の先駆者なのです。サムは心の病がどういうものであるかを理解し、必要なのは優しさであることを知っています。しかし、当時も今も、この病に苦しむ人々に対して、とてもひどいことを言う人たちがいます。でもヒラリーは優しい人で、皆に共感してもらいたいと考えているのです。心の病は彼女のせいではないのです。

本作の舞台は、1980年代の人種差別に満ちた英国。ヒラリーと心を通い合わせていく黒人青年スティーヴンもまた、時代の荒波に飲まれていく。同役を演じた新鋭マイケル・ウォードは、スティーヴンのストーリーについて現実味を感じたという。

マイケル:スティーヴンのストーリー…それは現実です。このようなストーリーを語れることに喜びを感じました。これまで私が演じてきた役は、「スモール・アックス」(2020)を除き、どれもよく似たものでしたから。本作は、彼が自分自身を見つけ出し、世界について知るという成長の物語です。特に1980年代において、彼はこのような世界で歩むことの意味をより深く理解していきます。当時、黒人の人々には多くのひどいことが起きていたんです。

しかしそれと同じくらい、スティーヴンはストーリーの面からだけではなく、多くの黒人青年たちが信じられるキャラクターとして大きなインパクトを与えると思いました。黒人青年や子供たちにとって、このような物語の中に自分自身を見出すことはとても重要です。自分にも、さまざまなストーリーを語ることができると信じられるようになりますからね。

それぞれが苦しみを抱えながらもお互いを支え合っていくヒラリーとスティーヴン。演じた二人は関係性についてどのように捉えたのだろうか。

オリヴィア:最初は、何となく彼に好意を抱いていたのだと思います。彼は若く美しい青年ですから。二人はよく似ているのです。確かに音楽の趣味は違いますが、二人とも知的です。しかし、やがて二人は、全く異なる理由とはいえ、お互いに相容れない、理解されない存在であることに気づきます。だから、お互いを守ろうとするのです。

マイケル:私にとって明確だったのは、彼らはお互いに何かをもたらし合っているということです。二人とも行き先が分かっているとは思いませんが、スティーヴンにとっては、自分と同じように感じてくれる人と出会えたことがとても嬉しいのです。だから、彼は年齢差をものともしないのです。人と違う存在の人は、とても際立っています。スティーヴンはそれをヒラリーに見出し、彼女も彼に対して同じ気持ちなのだと思います。

最後に、オリヴィアとマイケルそれぞれにお互いについて話してもらった。

オリヴィア:(マイケルは)まだ若い青年ですが、映画について勉強したい、まだ経験がないから演劇をやってみたいと言っています。彼は自分の仕事を愛していますし、もっともっと上手くなりたいと思っているので、きっと舞台で素晴らしい演技ができるでしょう。それに素敵で素晴らしい人です。一日中撮影していると、私は膝が腫れてくるのですが、彼は元気一杯ですし(笑)。

マイケル:(オリヴィアは)素晴らしかったです。彼女は間違いなく、これまで一緒に仕事をした最高の俳優の一人です。多くのテイクを撮影し、台詞を行ったり来たりすると、ある種ラリーをしているような感覚になります。オリヴィアとの共演は、全くそうではありませんでした。彼女が自然に、シーンに身を任せながらたった一言でも言葉を変えると、それは全てを変えてしまうほどの力を持つのです。彼女の存在は、私に多くのことを教えてくれました。

名優と新鋭の活躍に、今後も目が離せなさそうだ。

『エンパイア・オブ・ライト』
劇場公開中

画像2: 名優オリヴィア・コールマン&新鋭マイケル・ウォード 最新作『エンパイア・オブ・ライト』で感じた怖さや現実味【今月の顔】

舞台は1980年代初頭のイギリスの静かな海辺の町、マーゲイト。過去の辛い経験から心に闇を抱えるヒラリー(コールマン)は、地元で人気の映画館「エンパイア」で働いている。ある日、映画館で働く新たな仲間としてスティーヴン(ウォード)が加わる。それぞれ苦難を抱えながら生きてきた二人はやがて意気投合し、心を通わせていくが…。

監督: サム・メンデス
出演: オリヴィア・コールマン、マイケル・ウォード、トビー・ジョーンズ、コリン・ファース
配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン

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