『サスペリア』(1977)などイタリア発祥の“ジャッロ映画”の第一人者としても知られるダリオ・アルジェント監督が10年ぶりに復帰した作品。現代のローマを舞台に発生する猟奇的な娼婦連続殺人のターゲットとなった盲目のコールガールが、彼女を慕う中国系移民の少年と恐ろしい殺人鬼の魔手から逃れようとするが……。出演は『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015)のイレニア・パストレッリ、監督の実娘でアソシエイト・プロデューサーも務めるアーシア・アルジェント、子役のシンユー・チャンら。脚本はアリジェント監督とフランコ・フェリーニの共同。
「ジャッロ映画」とは?
“ジャッロ”とはもともと、イタリアでの文学のジャンルを表す言葉で、黄色い表紙の小説は、犯罪小説やホラー小説が多かったことから、それらのジャンルを指す言葉として“ジャッロ”が使われるようになった(黄色はイタリア語でGiallo:ジャッロ)。そして、ジャッロ小説を映画化したものを「ジャッロ映画」と呼ぶようになり、その後、「ジャッロ映画」はホラー・サスペンス映画のジャンルとして広まった。
あらすじ
ローマでコールガールをしているディアナ(パストレッリ)は車で帰宅する途中、白いバンに追い回された上、交差点で弾き飛ばされた車が中国系移民家族の乗る車に衝突。ディアナは失明し、中国人一家の父親が死亡、母親が意識不明、幼い子供のチン(チャン)だけが無傷という悲劇に見舞われた。これはローマ中を震撼させている連続殺人鬼の仕業だった。視力を失ったディアナは歩行訓練士のリータ(アルジェント)、盲導犬のネレア、養護施設を脱走してきたチンに支えられ日常を取り戻していくが、そこにディアナを執拗に狙うシリアルキラーが再び現れる。
注目ポイント
本作についてアルジェント監督は「幼少期からエドガー・アラン・ポーに影響を受けていた運命に刻まれた作家としての自分の集大成」と語っている。また「時代が変わったからといって物語の本質も解釈のスタイルも変えたくない」としながらも、「これまでの作品と異なり、感情や優しさという新しい要素を加えた非常に強烈なジャッロ・スリラー」と新基軸もあることを認めている。
イタリアン・ホラーの巨匠ダリオ・アルジェント(監督・脚本)とは?
ホラー映画の金字塔『サスペリア』(1977)の大ヒットで世界的に知られるようになったイタリアの監督。1940年ローマ生まれ。セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』(1968)の原案に加わり、脚本を書きながら1970年『歓びの毒牙』で監督デビュー。わずか数年でジャッロ映画の人気監督に。『サスペリア』のヒット後、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(1978)の製作にも携わる。その後も数々のホラー、サスペンスを手がけこのジャンルのレジェンドに。娘で女優のアーシアを起用した作品も多い。2019年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の特別賞を受賞。
主要監督作品
1970 『歓びの毒牙』
1971 『わたしは目撃者』
1971 『4匹の蠅』
1975 『サスペリアPART2』
1977 『サスペリア』
1980 『インフェルノ』
1982 『シャドー』
1985 『フェノミナ』
1987 『オペラ座/血の喝采』
1993 『トラウマ/鮮血の叫び』
1996 『 スタン ダール・シンド ロ ーム 』
2001 『スリープレス』
2007 『サスペリア・テルザ 最後の魔女』
2009 『ジャーロ』
2012 『 ダ リオ・ア ル ジェント のド ラキュラ』
『ダークグラス』
2023年4月7日(金)公開
イタリア・フランス/2021/1時間25分/ロングライド
監督:ダリオ・アルジェント
出演:イレニア・パストレッリ、アーシア・アルジェント、アンドレア・ゲルペッリ、シンユー・チャン
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