1999年に公開され大ヒットした『シックス・センス』を始め、2021年公開された『オールド』に至るまで、常に多くの映画ファンを虜にしているM・ナイト・シャマラン監督。そんな彼のユニークで愛おしい作品たちの魅力に迫ります。3月号で募集した「いちばん好きなシャマラン映画」の読者アンケート結果も発表します!

私たちがM・ナイト・シャマランに惹かれる理由

ネタバレ厳禁「観たことのない、意外な展開」

映画ファンがM・ナイト・シャマラン監督の作品に惹かれるのは、「観たことのない、意外な展開」を用意してくれるから。24年前、長編第3作『シックス・センス』の圧倒的なインパクトと感動でその作家性を確立したことで、シャマランはドンデン返しを期待される監督になった。それを本人も自覚し、新作のたびに公開前は「ネタバレ厳禁」を自ら通告。こちらの欲求をさらに煽ってくれる。

基本的にどの作品も、ラスト近くには思いもよらぬドラマへなだれ込むわけだが、まさかのオチに驚くこともあれば、たまに「これでいいの!?」と戸惑うこともあったりして、だからこそ自分で確かめたくなるのが、シャマラン映画だ。オリジナルの脚本を自分で手がけるケースが多く、原作があっても大幅に変えるので、独創性という点では無敵の存在である。

センセーショナルな題材といい意味での“ユルい描写”

エイリアンや幽霊、モンスター、不死身のヒーロー、時間のスピードの変化といった超常現象の題材は、それだけで映画としてセンセーショナルだし、映画監督になる前は医学を勉強していたシャマランなので、解離性同一性障害(多重人格)などの描き方もリアル。

一方で、緊迫の流れの中に挿入される、いい意味での“ユルい描写”もシャマラン映画の魅力で、たとえば『サイン』(2002)で、ホアキン・フェニックスらが心を読まれないために頭にアルミホイルの帽子を被ってるシーンなど、ほとんどギャグにしか見えないが、笑わせるための演出なのか、真剣なのか意図が不明なのも、シャマラン映画の特徴だ。観る人それぞれ、ツッコミどころを探せるのも、これまた楽しい。

シャマランにとって家族の絆は最優先事項

インタビューなどで接するシャマランの素顔は、インテリジェンスに溢れた人という印象。変化球の質問にもユニークな答えを瞬時に返してくる。おそらく頭の中には無数の映画のアイデアが詰まっているのだろう。また、『オールド』(2021)やTVシリーズ「サーヴァント ターナー家の子守」といった近作では、2人の娘が音楽やセカンド・ユニット・ディレクターを担当するなど、シャマランにとって家族の絆は最優先事項。そのせいか多くの作品のメインテーマは「家族」で、子供たちの活躍がキーポイントになる。

『シックス・センス』のハーレイ・ジョエル・オスメントをはじめ、シャマランは子役や若手俳優の才能を開花させるのを得意としてきた。新作の『ノック 終末の訪問者』も、まさにこのパターン。子供たちのピュアな目線によって物語の驚きと感動がさらに増すことを、シャマランは自覚しているのかも!?

SCREEN読者の選んだシャマラン映画TOP6

3月号で募集した「あなたの好きなM・ナイト・シャマラン監督の作品は?」の読者アンケート結果を発表! 1990年代の作品から最近の作品まで幅広くランクインし、シャマラン監督が常に愛される作品を作り続けていることが分かる結果に。読者の皆さんが選んだ必見の6作を、見どころと共にご紹介します!

第6位 『ヴィジット』(2015)

POVと定点カメラの絶妙なバランス

画像: 第6位 『ヴィジット』(2015)

『エアベンダー』(2010)『アフター・アース』(2013)と“らしからぬ”作品が続き、監督としてのキャリアに不安も感じさせたシャマランが、低予算ながら得意のジャンルで大復活した快作。15歳と13歳の姉弟が、初めて会う祖父母の家を訪れ、信じがたい恐怖を強いられる。姉弟がカメラを回すという設定で、その映像がPOVとして効果的に使われ、祖父母の謎めいた行動や家の秘密を臨場体験してしまう。怖がらせることを得意とするシャマランの原点を実感。

画像1: 私たちがM・ナイト・シャマランに惹かれる理由/SCREEN読者が選んだシャマラン映画TOP6

『ヴィジット』
DVD&ブルーレイ発売中
発売元:NBCユニバーサル・ エンターテイメント
© 2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

第5位 『スプリット』(2016)

恐怖の先にある過去からの解放

画像: 第5位 『スプリット』(2016)

多重人格者の男が3人の女子高生を誘拐・監禁するサスペンスで、犯人役のジェームズ・マカヴォイが、23人もの人格を瞬時に入れ替える演技で圧倒。初期の代表作のひとつ『アンブレイカブル』(2000)との繋がりがあり、さらに続編の『ミスター・ガラス』(2019)も作られたので、シャマラン作品の中では唯一の“シリーズもの”として楽しめる。いま大人気のアニャ・テイラー=ジョイが女子高生の一人を熱演。ブレイクのきっかけとなった一作として必見。

画像2: 私たちがM・ナイト・シャマランに惹かれる理由/SCREEN読者が選んだシャマラン映画TOP6

『スプリット』
DVD&ブルーレイ発売中
発売元:NBCユニバーサル・ エンターテイメント
©2016 Universal Studios. All Rights Reserved.

第4位 『ヴィレッジ』(2004)

絶対に破ってはいけない村の掟

画像: 第4位 『ヴィレッジ』(2004)

19世紀末のアメリカで、外部から隔絶され、自給自足で生活を続ける村。周囲を囲む森には恐るべき怪物がいるとされ、住民たちは「絶対に入ってはいけない」という掟を守り続けるが……と、その設定といい、ドンデン返しといい、シャマランらしさが濃厚な一本。途中までファンタジーなのか、リアルなドラマなのかわからない作りに引き込まれる。シャマラン作品の中では賛否が激しく分かれるのも特徴的で、だからこそ自分の感性で確認したい一本。

画像3: 私たちがM・ナイト・シャマランに惹かれる理由/SCREEN読者が選んだシャマラン映画TOP6

『ヴィレッジ』
デジタル配信中
©2004 TOUCHSTONE PICTURES

第3位 『サイン』(2002)

巧みな演出力と“何か”が強める家族愛

画像: 第3位 『サイン』(2002)

公開前に徹底した秘密主義がとられたが、結末の衝撃というより、シャマランの演出が冴えわたった一作。牧師から農夫になったグラハムだが、農場のトウモロコシ畑にミステリーサークルが出現。その後、グラハムの家の周囲には怪しい“何か”がうろつき始め、彼の娘が予言めいたことを口にするなど奇怪な現象が続く。ミステリーサークルなので当然、出てくるものは予想がつくのだが、“何か”が見えそうで見えず、緊張の糸が途切れない。

ディズニープラスのスターで配信中
© 2002 Touchstone Pictures

第2位 『オールド』(2021)

時間が異常なスピードで加速する恐怖

画像: 第2位 『オールド』(2021)

リゾートの高級ホテルが、ゲストを特別に案内するプライベートビーチ。しかしそこは、現実より速いスピードで時間が過ぎていく場所で、子供たちはどんどん成長。大人たちはあっという間に老化していく。オリジナル作品が多いシャマランだが、これはフランスのグラフィックノベルが原案。美しい風景の中、俳優たちの外見が変わり、死も迫る恐怖と、ビーチの秘密が絶妙に絡み合い、物語&ビジュアルともシャマラン映画ではわかりやすさが魅力。

画像4: 私たちがM・ナイト・シャマランに惹かれる理由/SCREEN読者が選んだシャマラン映画TOP6

『オールド』
DVD&ブルーレイ発売中
発売元:NBCユニバーサル・ エンターテイメント
© 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

第1位 『シックス・センス』(1999)

映画史に残る最強のどんでん返し

画像: Photo By Getty Images
Photo By Getty Images

精神科医のマルコムと、「死者が見える」という特殊能力に苦しむコール少年。コールが目にする死者たちによるホラーテイストと、マルコムとコールの心の交流、コールの母も交えた感動のヒューマンドラマが見事に融合。そして映画史に残ると言ってもいい驚きの結末で、シャマランの才能を全世界に知らしめた。アカデミー賞でも作品賞など主要5部門ノミネート。未見の人にはネタバレ絶対厳禁というアイデアの大胆さは、時を経ても色褪せない。

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