“本能寺の変”が、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の野望と裏切り、そして運命とともに描かれる本作。
北野武監督を筆頭に、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋の豪華キャスト陣が本会見に出席し、撮影エピソードなどを語った。
北野監督は、ビートたけし名義で“本能寺の変”を策略する羽柴秀吉を自ら演じており「時代劇だとNHKの大河ドラマをよく観るけど、きれいな出世物語が多くて、人間の業や欲、裏切りを描いた作品があまりないんですよね。だから“自分だったら戦国時代をこんな風に撮るよ”といった発想で作った作品です。だいぶ苦労しましたけど、この映画が完成したのは、スタッフや役者さんたちのおかげだと思っています」と本作について語った。
また、羽柴秀吉を演じることについて北野監督は、「ここ最近は歴史ブームで、歴史ものと言えば“本能寺の変”がよく出て来ますよね。これについて、歴史考証家の人の話では80くらいの説があると言っていますし、歴史の本を読んでもそうです。その80ある中で自分が考えるのは、秀吉の恩返しは出来レースであって、彼が裏でかなり動いたんじゃないかと、そんな風に感じて、この映画の構想を練っていきました」と明かした。
キャスト陣は、司会者から撮影時のエピソードや北野組の現場で感じたことなどを聞かれ、
織田信長に複雑な感情を抱く明智光秀を演じた西島秀俊は「初日が安土城・天守閣のセットでの撮影だったのですが、色がとても素晴らしくて、セットを見た瞬間に『オー!』と声を上げた方もいらっしゃるぐらいでした。それが印象に残っています。あと、この作品の登場人物たちは常に“死”がそばにある状況の中で生きているのですが、それを北野監督独特のユーモアで描いているので、クスクス笑った後に信じられないぐらい悲惨な場面が来たりするんです。そういう滑稽なことと悲惨なことが隣り合わせになっている世界観は、北野監督にしか描けない面白さだなと、そんなことを現場で感じました」と監督への思いを語った。
狂乱の天下人・織田信長を怪演した加瀬亮は「自分に信長役をオファーしてくださるのは北野監督ぐらいしかいないと思います。登場人物全員が悪人というか酷い人で、残酷なシーンが多々あるんですね。だけど、北野監督が撮ると結果的に品のいい映像になっているんです。そういう監督は他にいないんじゃないかなと思いますね」と語った。
秀吉に憧れる百姓・難波茂助を演じる中村獅童は「本作では、今までの時代劇であまりなかったような男性同士の愛が描かれていて、あとヒーローとして登場するような人物がいないのが特徴かなと思います。劇中にはハードな場面もありますが、作品としての品格みたいなものを完成を観た時に感じました。あと、普段は歌舞伎の世界で生きていますので、衣装やカツラをつい観察してしまうのですが、カツラがすごくリアルで、衣装の色彩も素晴らしかったです。本当にこの作品に参加させていただけてよかったなと思っております」とコメント。
秀吉を天下人にすべく知略を巡らす軍師・黒田官兵衛を演じた浅野忠信は「監督の現場は撮影が始まってから終わるまでがとても早いんですね。それは皆さん忙しいスケジュールの中で参加したり、監督が他のお仕事もある中でやってらっしゃるということもありますが、そういう現場は力がみなぎってくるんです。ダラダラと進行する現場もありますが、北野監督の現場はその日の撮影が終わると“明日もっといい芝居ができるんじゃないか”という気持ちにさせられるので、やっぱりすごいなと思いますし、感謝しています」と監督への感謝の言葉を述べた。
秀吉の弟である羽柴秀長をユーモアたっぷりに演じた大森南朋は「北野監督は現場で常に頂点に立っておられた印象があります。現場では監督の描きたい世界をちゃんと作ろうという意思が、優秀なスタッフの皆さんやキャストの方々からひしひしと伝わってきました。今回の現場には大勢のエキストラさんにも参加していただいていて、そのシーンをご覧になるとわかると思いますが、この時代にああいう画を日本で撮れる監督は他にいないように思います」とコメント。
最後に北野監督は「この作品を観た関係者がやたらと褒めるのですが、俺は芸人だからそれが本当か嘘かを見抜けるんですね。それで、大多数が本当に褒めていると感じたので、自分としては成功作だと思います。ある程度ヒットしたら、また何本か映画が撮れるので、そうなったらいいなと思います」と語り、会見を締め括った。
取材・文/奥村百恵
●原作 北野武「首」(KADOKAWA刊)
●監督・脚本 北野武
●出演
ビートたけし
西島秀俊 加瀬亮 中村獅童
木村祐一 遠藤憲一 勝村政信 寺島進 桐谷健太
浅野忠信 大森南朋
六平直政 大竹まこと 津田寛治 荒川良々 寛一郎 副島淳
小林薫 岸部一徳
●製作:KADOKAWA
●コピーライト:ⓒ2023KADOKAWA ⓒT.N GON Co.,Ltd
●公開日:2023年 秋全国公開