“ナートゥ・ナートゥ”のパフォーマンスが授賞式会場を大いに沸かせ、インド映画初となる最優秀歌曲賞を受賞した『RRR』。本作に主演し劇中でこの“ナートゥ・ナートゥ”を踊ったNTR Jr.とラーム・チャランがいま世界的な人気者になっています。ホットな2人のバックグラウンドはどんなものでしょうか。(文・村上淳子/デジタル編集・スクリーン編集部)
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オスカー2023を沸かせた2人
様々な話題を提供してくれた今年のアカデミー賞。その中でユニークな組み合わせが注目されたという視点から、今気になる2人を3組ピックアップ。彼らの栄光への道のりを探ってみましょう。

共通点の多いダブル主演の2人が生んだ“ナートゥ・ナートゥ”の名場面

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NTR Jr.とラーム・チャラン

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最優秀歌曲賞受賞 『RRR』

今年のアカデミー賞でまさに注目の的となったのがインド映画初、最優秀歌曲賞を受賞した『RRR』。その挿入歌「ナートゥ・ナートゥ」の生パフォーマンスは会場を大いに沸かせました。

インド映画史上最高の制作費を投入し、2022年インド映画世界興行収入1位を獲得。日本でも大旋風を巻き起こしロングラン上演されている本作は、イギリス植民地時代のインドを舞台に、実際には会うことがなかった実在した独立運動の闘士をモデルに、友情と権力への戦いを描いた骨太の超級エンタメ大作です。

主演は共に濃すぎる髭フェイスのNTR Jr.とラーム・チャラン。ガチムチ体型に強烈な目力を持つNTR Jr.が、英国軍に捕らわれた村の少女を救い出す使命を背負ったビームをワイルドに、筋肉質ボディと鋭い眼光のチャランが内なる大義を秘め英国側の警察官となったラーマをスタイリッシュに演じ、アドレナリンが出っ放しのケレン味たっぷりのアクションで圧倒的な存在感を放ち地上最強のバディを誕生させました。

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共通点の多いNTR Jr.とラーム・チャラン

これまでインド映画ではスター俳優が対等な役でダブル主演する作品はほとんどなく、本作は異例中の異例。しかもS.S.ラージャマウリ監督はまずキャストありきで脚本を当て書きし、ふたりの魅力を存分に引き出したのです。

インドでは“メガパワー・スター”と称されるチャランとトップスターのNTR.Jrのふたりには共通点が多い。NTR Jr.は1983年生まれで現在39歳。チャランは1985年生まれの38歳とほぼ同い年。どちらもインド南東部のテルグ語圏の出身。(※)さらに揃って芸能一家のサラブレッドなのです。
※広大なインドでは各言語圏ごとに一大映画産業があり、テルグ語映画はヒンディー語映画に継いで2番目の規模を誇る。

NTR Jr.の祖父であるN.T.ラーマ・ラオは有名な俳優で州の首相も務めた人物。父親も俳優かつ政治家というセレブな家庭で育ち、早くも7歳で映画デビュー。2001年にラージャマウリ監督のデビュー作で『STUDENT NO.1』でブレイクのきっかけを掴み、2007年監督との3作目のタッグ『YAMADONGA』が大ヒットし、フィルムフェア賞テルグ語映画部門最優秀主演男優賞を受賞。

かたやラーム・チャランは圧倒的なダンスとアクションで伝説のスター俳優と讃えられるチランジーヴィの息子。2007年に22歳でデビューし、続く主演第2作目の『マガディーラ 勇者転生』(2009)が記録的大ヒットで演技賞を総ナメ。2017年から父親の150本目の主演作でプロデュース業にも進出し、自らもゲスト出演し共演も果たしています。NTR Jr.もチャランもテルグ語映画界で最も高いギャラを誇る俳優と評価されているのです。ふたりの濃厚すぎるオーラと問答無用のカッコよさは、芸能ファミリーの濃いDNAの賜物かもしれません。

共演できたことは「ハッピーなショック」

もともと長年の友人であるふたりですが、共演できたことをNTR Jr.は「ハッピーなショック」と表現し、「『RRR』があったから絆があるんじゃない、絆があったから『RRR』ができたんだ」と語っています。

友人だけに「競演」することの弊害も危惧したそうですが、撮影中も撮影後も変わらずいい関係だそうで、仲良しのふたりはときにロケ中もふざけ合ってリラックス。現場を和ませていたとか。

昨年10月の来日インタビューのなかで、自分を動物に例えると?という質問にチャランは「馬と犬を合わせた感じ」と回答。犬の忠誠心と馬の俊敏なところがイメージにぴったり。でも、限りなく体脂肪ゼロに見える身体と強面の顔に似合わず甘いものに目がないという意外な面も。

NTR Jr.の答えは「虎」。ファンからは“ヤング・タイガー”と呼ばれている彼は威厳があり獰猛な虎に心惹かれるそうですが、弱点はジェットコースター。橋から飛び降りるサーカス顔負けのアクションをやってのけたにもかかわらず、なぜかジェットコースターには怖くて乗れないそう。

『ナートゥ・ナートゥ』と聞いただけでも足が痛くなる

SNSを中心に驚異的な回数が再生された本作のミュージカルシーンで、ふたりが歌いながら完璧なシンクロを魅せる高速ステップダンスは、もはや“芸術”の領域まで達しているといっても過言ではないほどですが、「『ナートゥ・ナートゥ』と聞いただけでも足が痛くなる」(NTR Jr.)「膝にきた」(チャラン)と辛さを訴えていました。完璧主義の監督から100%のシンクロ率を求められ、ふたりにとってこれまででいちばんキツいダンスシーンだったそうで、「あれをやりきれるのは僕たち以外にいない」とNTR Jr.は断言。

ふたりの信頼関係と多芸多才なスキルがあったからこそダンスシーンを含む数々の名シーンが生み出され『RRR』が世界的に大ブレイクしたに違いありません。

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