TOPIC1
「マーラーの交響曲第5番第4楽章」
劇中、ターが録⾳に執念を燃やす楽曲。トッド・フィールド監督は、当初、⾃⾝が⼤好きなこの曲を劇中で中⼼的な存在として取り上げることについて、悩んでいたという。その理由について「ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』に使われたことで、⼤衆的な曲だと⾒なされるようになった」と監督は話す。
しかし、本作の脚本の監修を担当、ハリウッド・ボールで毎年開催され、満員の観客を動員している「Movie Nights」の指揮者を数年間務めるなど、クラシック⾳楽好きが映画⾳楽に触れられる機会に貢献しているジョン・マウチェリから「本当にクラシック⾳楽を分かっている⼈なら、第4楽章に対して⽪⾁を⾔ったりしない。『ベニスに死す』で使われていたから何だ。マーラーの交響曲第5番を基にストーリーを作ればいい」と怒られ、彼の言う通りにしたという。
TOPIC2
「エルガーのチェロ協奏曲」
ターが夢中になる新⼈チェリスト・オルガの奏でる楽曲。フィールド監督は「エルガーがこの協奏曲を書いた当時、⼥性奏者がオーケストラに参加するなんてもってのほかだった。だけど、最初の録⾳時、EMI(現在のアビイ・ロード・スタジオ)の第1スタジオで、当時まだ全員が男性奏者だったロンドン交響楽団の前で演奏したのは、ベアトリス・ハリソンという⼥性チェロ奏者だった。しかも、その演奏の指揮を務めたのが、エルガー本⼈だったんだ」と、この曲が⽣まれた当時のエピソードと、本作に流れる必然性とを語っている。
TOPIC3
「本物のチェリストが演技初挑戦!」
本作の主要キャストの⼀⼈、オルガを演じたのは、本作で俳優デビュー、実際にチェロ奏者として活動しているソフィー・カウアー。フィールド監督は「キャスティングにあたり、オルガ役を探すのが⼀番の試練になることは分かっていた。当初イメージしていたのはロッテ・レーニャとジャクリーヌ・デュ・プレを合わせたような魅⼒的な⼥性だった」と振り返る。
全く適任者が⾒つからなかった時、1本のテープが届いた。ロンドン郊外に住む中流家庭出⾝の当時19歳のチェロ奏者の映像だった。フィールド監督は「ソフィーは想定していたオルガとは似ても似つかなかった。だけど、彼⼥が演技を始めると、彼⼥こそオルガだった。どうやって(オルガが話す設定の)ロシア訛りをマスターしたのか聞くと、彼⼥は『YouTube』と答えた。演奏も本当にうまく、並外れた才能を持つチェロ奏者だった。彼⼥と出会えたことは本作成功の⼤きなカギとなった。ソフィーは、まさに本作の『⼒』ともいえる存在だ」と絶賛する。
演技初⼼者であるカウアーは、⾃分の撮影がない時もセットに現れ、ニーナ・ホスやケイト・ブランシェットの演技を⾒て勉強し、それに加え、こちらも英国が誇る名優マイケル・ケインの「YouTubeの指導映像を参考した」という。現代ならではの勉強法である。
『TAR/ター』
5月12日(金) TOHO シネマズ日比谷他全国ロードショー
配給︓ギャガ
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