「アンダー・プレッシャー」の使用は編集時のひらめき
本作『aftersun/アフターサン』は、11歳のソフィが父親とふたりきりで過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴るヒューマンドラマ。2022年カンヌ国際映画祭・批評家週間での上映を皮切りに評判を呼び、話題作を次々と手掛けるスタジオA24が北米配給権を獲得。父親役のポール・メスカルがアカデミー賞主演男優賞のノミネートを果たしている。
本作を彩るのが、クイーン&デヴィッド・ボウイ「アンダー・プレッシャー」、ブラー「テンダー」等のヒットソングたち。脚本を書いていた数年間、イメージした音楽のプレイリストを作り、曲を聴いてはその場所や瞬間にふさわしいと感じてどんどん楽曲が増えていったというシャーロット・ウェルズ監督。そのうちの何曲かは実際に劇中で使用されたという。
「私が初めてカセットやCDを買ったのは1997年か1998年頃だったから、サウンドトラックに使う曲はその年代で区切りました。R.E.M.やブラーは父の影響です。ジャンルをミックスし、80年代かそれより古い曲も取り入れて、もう少し“クール”でインディっぽいものにしようとも考えましたが、場所とキャラクターに忠実でありたかったし、その直感のおかげで、ジャンルは様々でもまとまったサウンドトラックに仕上がったと思っています」と自身の自叙伝的な本作ならではの選曲方法を明かしている。
本作で最も印象的な楽曲のひとつであるクイーン&デヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」については、「あの選曲は本当に予想外でした。編集時にひらめいたんです。」と使用予定がなかったことを明かした。「フレディ・マーキュリーとデヴィッド・ボウイの歌声が素晴らしく、これまでもインスピレーションが欲しい時に聴いていました。だから今回も編集のときに聴いていたんですが、効果は覿面でした。」と当時を振り返る。
しかしはじめは、「これだけ静かな作品なので、どうしても曲の歌詞に意識が向いてしまうのでないかと懸念していました」というが、仮で音源を入れて編集を進めているうちに徐々に“この楽曲しかない”という思いが強くなっていったのだと明かしている。結果的に、登場人物の語られない心の内と歌詞が共鳴し、最も重要な役割を果たす一曲になったのだという。映画ではどのように流れるのか、ぜひ劇場でチェックしてみてほしい。
『aftersun/アフターサン』
5月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022