2021年第74回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品、2022年ノルウェーのアカデミー賞アマンダ賞で、監督・撮影・音響・編集の4部門受賞。世界の映画祭で16映画賞を受賞し、アメリカの批評家サイトRottenTomatoesでは満足度96%を獲得。ジャンル映画ながらそのクオリティの高さを、世界が認め絶賛した北欧サイキック・スリラー『イノセンツ』。舞台はノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友達になった4人の子供たちは、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。近所の庭や遊び場で、新しい力を試す中で、無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめるのだった。近年、『ミッドサマー』『ハッチングー孵化ー』『LAMB/ラム』など北欧スリラーは映画界の最先端に君臨し、映画ファンの心を掴んで離さないが、本作もまたその唯一無二の美しくも不気味な世界の虜になる観客続出必至である。監督を務めたのは、『わたしは最悪。』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされたエスキル・フォクト。ヨアキム・トリアー監督の右腕として、『母の残像』『テルマ』『わたしは最悪。』の共同脚本を共に手がけてきた。本作はフォクト監督の長編二作目で、日本劇場初公開の監督作品となる。団地を舞台に子どもがサイキック・バトルを繰り広げると言えば、大友克洋の「童夢」を想起する人も多いはずだが、まさにフォクト監督は「童夢」からインスピレーションを受けて本作を創り上げた。
今回エスキル・フォクト監督に、本作の主役である子供たちのキャスティングについて伺った。
——この映画の主役は子供たちです。彼らがうまく演じられなければ本作は失敗していたのではないでしょうか。監督として緊張感はありましたか?
はい。子供たちの演技も、重度の自閉症の子供を演じられる子役を見つけることにも緊張感がありました。もしそれがうまくいかなければ、映画になりませんから。長い時間をかけて子役を探し、キャスティング・ディレクターのシャルティ・ポールセンには、キャスティングから撮影前、撮影中にかけて、子供たちの近くで動いてもらいました。通常、子役のキャスティングをする際には、大人の俳優のように演じてほしいとか、ブロンドの長髪のお姫様をイメージしたりしますよね。シャルティは、「それでは固定観念にとらわれない才能を持った子供たちを見逃してしまう」と言っていました。脚本家としてキャラクターのアイデアはありましたが、それは置いておいて、何よりもまずは面白い子供を見つけようと思いました。そして、脚本の中で彼らを生かしていくのです。最終的には、彼らの才能に合わせジェンダーや人種を変えることになりました。
——ご自身のお子さん以外の子供たちもリサーチしましたか?
はい、いつも子供たちと話していました。撮影が始まるまでの1年半、キャスティングやワークショップを行ったんです。その過程で、子供たちに強い想像力があるかどうかを見極めていました。想像力が重要になるからです。そこでは、彼らの思考の中に興味深いものを見ました。たとえば、同じ写真を見せてそこからストーリーを作ってもらいます。そうすると、彼らの想像力や内側の世界が明らかになりました。それが魅力的で、作品をより豊かなものにしてくれました。
——イーダ役ラーケル・レノーラ・フレットゥムさんと母親役エレン・ドリト・ピーターセンは本当の親子ですか?
そう。面白い話なんだけど、今回子供の役のキャストを選ぶのに、幅広く公募して、千人以上の子供が履歴書や動画を送って申し込んできた。その中から数百人を呼んでオーディションをしたんだけど、結果的に僕は、自分の初監督映画の主役を演じた女優の娘に今作の主役を抜擢したんだ。エレン・ドリト・ピーターセンは『ブラインド・視線のエロス』で主人公を演じていて、彼女の娘が今回主役を演じている。最初にイーダ役にラーケルを選んだ時に、母親のエレンに、母親役を演じてくれないかと依頼したんだけど、決める前にテストも行なった。というのも、子供の中には、親が見ている前だと演技ができなくなってしまう子供もいるから。エレンもそのことをわかってくれて、自分の娘が今作で重要な役を演じるとわかっていた。なので、ある日エレンに現場に来てもらって、ラーケルには「お母さんに今日いろいろ手伝ってもらうんだ」と伝えて、エレンにいろんな子供を相手に演じてもらった。自分の娘を相手にする時は流石に緊張していたよ。でも、二人が凄くいい雰囲気だったので良かった。見せかけでできるものではないからね。本物の母と娘の関係を見ると、どことなく似ている部分などが自然と出るから、映画にとってもそれは素晴らしかったよ。
この夏、必見!世界が身震いした衝撃の北欧サイキック・スリラー『イノセンツ』は7月28日(金)新宿ピカデリーほか全国公開。
『イノセンツ』
7月28日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ロングライド
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