「パイレーツ・オブ・カリビアン」の伝説は20年前の夏に始まった
今から20年前。ディズニーランドの人気アトラクション「カリブの海賊」をモチーフに、ハリウッドの大物ヒットメイカーの一人、ジェリー・ブラッカイマーが仕掛けた海洋アドベンチャーが夏の話題作として公開された(日本では8月2日公開)。
当初は「海賊映画は当たらない」とか、「インディーズ映画の演技派ジョニー・デップがディズニー映画の主演というのは疑問」とか、ネガティブな前評判もあったが、ふたを開けてみれば全米では『マトリックス リローデッド』(2003)『ターミネーター3』(2003)『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(2003)などライバル作品を上回る大ヒット。年間2位の興行成績を叩き出した。
日本でもこの人気は同様で、まだシリーズ作ではなかったにもかかわらず、「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」などのおなじみシリーズに続いて、外国映画では年間5位のヒットになっている。本誌SCREENの翌年の読者選出年間ランキングでも作品部門1位の栄光に輝いた。
その内容は18世紀のカリブ海の港町を舞台に、幽霊船ブラックパール号のバルボッサ船長の一味に誘拐された総督の娘エリザベスを救うため、彼女を愛する鍛冶屋の若者ウィルが奔走しようとするが、そこにブラックパールの元船長で風変わりな海賊ジャック・スパロウが現われ、ウィルは彼の助けを借りようとする、というもの。
以前と違って海賊に野蛮な荒くれのようなネガティブな古いイメージでなく、自由に生きるロックンローラーのような魅力を、新しい世代を中心としたファンに吹き込んだのは、ジャックを演じたジョニー・デップのおかげ。
“ザ・ローリング・ストーンズ”のキース・リチャーズをモデルに役作りをしたジョニーに、「これが海賊?」と最初は誰もが驚かされたが、ジョニーの感覚は正しく、見た目からしゃべり方まで従来の海賊の固定観念を覆して、なんとジョニー自身初のアカデミー賞主演男優賞候補になる栄冠を手に入れた。
この役でジョニーはそれまでになかったファン層を獲得し、長きにわたって人気ナンバーワン男優の座を不動のものにした。またジョニーだけでなく、ウィルを演じたオーランド・ブルーム、エリザベスを演じたキーラ・ナイトレイのフレッシュ英国若手コンビもトップ・アイドルに
第1作の大ヒットによって、3年後には『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006)さらに『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(2007)が製作され、三部作として完結かと思われたが、ファンのラブコールは止まることなく、2011年に第4作『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』が、2017年には第5作『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』が次々製作され、衰えない人気ぶりを示している。