『クラッシュ』『イグジステンズ』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』など数々の受賞歴と共に物議を醸してきた映画作家デヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』がいよいよ8月18日(金)に公開となる。今回SCREEN ONLINEでは、クローネンバーグ監督へのWEBインタビューを実施。脚本や美術、描き続けてきたモチーフ、さらには盟友ヴィゴ・モーテンセンとの関係などについて語ってもらった。(取材・文/平沢薫、編集/SCREEN編集部)

カバー画像:Photo by JB Lacroix/WireImage

私のユーモアの感覚はちょっと変わっているんだが、
ヴィゴも同じ感覚を持っているんだ

ーー監督の1970年の映画『クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確率』と同じタイトルですが、この2作に関連性はありますか。

「共通点は、タイトル通り"未来の犯罪"を描いていることだね。テクノロジーが進化すると人体が変化し、文化も変わり、犯罪の定義も変わる、というコンセプトは同じだ。でも、共通点はそれだけかと思っていたら、先日、見直して驚いたことがあった。以前の映画に、人体の奇妙な臓器をガラス瓶に入れるシーンがあるんだが、今回も同じようなシーンがあるんだ。頭の中にこのシーンがこびりついていたのかもしれないね」

ーー監督がこの脚本を書いたのは98年ですが、脚本は当時のままなのでしょうか。

「そう、1文字も変えていない。プロデューサーに、この脚本を映画化したらどうかと追われた時は驚いて、相当リライトしなくてはならないだろうと思って読み始めたんだが、変える必要はまったくなかった。テクノロジーはすさまじい変化を遂げているし、世の中は変わったのに、この脚本は環境破壊にも触れているし、逆に今のほうが現代性を帯びた物語になっていたんだ。

 ただ、撮影を始めてから、調整しなくてはならない部分は出てきた。もっとも変わったのはロケ地だ。脚本の舞台はトロントだったが、アテネで撮影することになったんだ。しかし結果としては、よかった。トロントの歴史はせいぜい300年だが、アテネは5000年だから、景色が全然違うんだ。アテネの土地の文化、形状、朽ちた雰囲気に抵抗せずに、どんどん吸収して映画に取り入れた。映画に出てくる壁に描かれたグラフィティも、もともとそこにあったものを使ってる」

画像: 私のユーモアの感覚はちょっと変わっているんだが、 ヴィゴも同じ感覚を持っているんだ

ーー今回のモチーフも、監督がこれまでずっと描いてきた"身体の変容"です。監督がこのモチーフに興味を抱くようになったのは、いつ頃からなのでしょうか。

「小さい頃から、生物の生態に興味があった。特に夢中になったのは昆虫だ。そして、昆虫は変態する。子供の頃、イモムシがサナギになり、チョウになるのを観察して、こんなに形が違うのに同じ存在なのかと考えた。それが原体験だと思う」

ーー監督の『戦慄の絆』の手術器具や『裸のランチ』のタイプライターのように、この映画にも印象的な小道具がいくつも出てきます。こうした小道具を作るとき、ずっと美術を担当しているキャロル・スピアとはどんな話をするのでしょうか。

「映画はそれぞれが別の宇宙を持っているから、小道具はその宇宙に相応しいものを考える。観客は小道具を見て、過去作との関連性を考えるかもしれないし、それを悪いことだと思わないが、私自身は過去の作品を意識して小道具を作ることはないよ。

 美術のキャロルとは、大きなイメージの話はしないんだ。その代わり、細かい部分についての検討を、数えきれないほど何度も重ねていく。脚本には"昆虫の殻のよう"とか"亀の甲羅のよう"としか書かれていないから、まずキャロルが脚本を書いた時とイメージは変わっていないのか聞いてくる。それからスケッチを描いてもらって、立体を作ってもらって、それらの各段階ごとに話合いを重ねていくんだ。

 とても細いところまで話し合うよ、扉は開くのか、スライドさせるのか、開くとしたらどの方向に開くのか、そこまで話し合う。形だけではなく、質感や手触りも重要だ。そうやって細かな部分を一つずつ組み立てて作っていくから、小道具を作るのは、まるで自動車やコンピュータを設計していくようなものなんだ」

ーー本作の主演俳優ヴィゴ・モーテンセンとは、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)、『イースタン・プロミス』(07)、『危険なメソッド』(10)に続く4度目のタッグですね。

「彼とは、お互いにプロフェッショナルとして付き合える真のコラボレーターであるだけでなく、友人だと思ってる。

 彼はハンサムで、映画を引っ張っていく主演俳優であるだけでなく、キャラクター俳優でもある。彼は詩人、ミュージシャン、出版もして、俳優でもある。いろんな才能を持つ人物だから、演じる役柄に様々なテクスチャーを与えてくれるんだ。

画像: ヴィゴ・モーテンセン

ヴィゴ・モーテンセン

 それにヴィゴは自分の役以外の部分についても、意見や質問したりしてくる。監督によってはそれを歓迎しないかもしれないが、私は彼のそういうところが好きで、大歓迎。いいコラボレーションができてるし、監督としていい刺激を受ける。

 それと、私のユーモアの感覚はちょっと変わっているんだが、ヴィゴも同じ感覚を持っているんだ。だから撮影中だけではなく、映画のプロモーション中も、よく2人で笑い合ったりしているんだよ」

ーー配信作品が増えて、映画の未来については悲観的な発言をする監督もいますが、監督はどのように考えているのでしょうか。

「私自身は映画館にはあまり行かず、TVやiPadで映画を見ている。ベネチア映画祭でスパイク・リーと話した時、彼は『映画館は私たちの教会だ、大事にしなくてはならない』と言ったけど、私は『映画は私の時計でも見られる。『アラビアのロレンス』の1000頭のラクダもよく見えるよ』とジョークを言った。私は、真の映画は映画館でしか見ら得ないとは思わないんだ。真の映画は、時計でもiPadでも見ることが出来ると思っているよ」

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』
8⽉18⽇(⾦)より全国公開

そう遠くない未来。⼈⼯的な環境に適応するよう進化し続けた⼈類は、⽣物学的構造の変容を遂げ、痛みの感覚も消えた。“加速進化症候群”のアーティスト・ソールが体内に⽣み出す新たな臓器に、パートナーのカプリースがタトゥーを施し摘出するショーは、チケットが完売するほど⼈気を呼んでいた。しかし政府は、⼈類の誤った進化と暴⾛を監視するため“臓器登録所”を設⽴。特にソールには強い関⼼を持っていた。そんな彼のもとに、⽣前プラスチックを⾷べていたという遺体が持ち込まれる...。

配給︓クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES
提供︓東北新社 クロックワークス
© 2022 SPF (CRIMES) PRODUCTIONS INC. AND ARGONAUTS CRIMES PRODUCTIONS S.A.
© Serendipity Point Films 2021

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