唯一無二の世界観で映画ファンを魅了するウェス・アンダーソン監督。1950年代を舞台にした長編第11作目『アステロイド・シティ』でも、その“らしさ”は健在! (文・渡辺祥子/デジタル編集・スクリーン編集部)

ウェス・アンダーソン最新作『アステロイド・シティ』いよいよ公開

新作が生まれるたびにビックリに出会えるのがウェス・アンダーソンの映画。今度はなんと四方数百メートルにわたってさえぎるものがないスペインはチンチョン郊外にセットを組み、透明感のあるパステル・カラーを駆使して撮影したアメリカ南西部にある砂漠の町アステロイド・シティを舞台にドラマが進行する。ときは第2次大戦で連合軍側アメリカが勝利したあとの1950年代。テレビに追われて、映画が続々大型化していた時代だ。

その昔、隕石の墜落で出来た巨大クレーターが唯一の観光名所だという人口87人のこの町にやって来たのは、科学賞を受賞したことでジュニア宇宙科学賞の祭典に招かれた超優秀な子供たち5人とその家族たち。

受賞した息子と幼い妹3人がいるジェイソン・シュワルツマン演じる戦場カメラマンの父は、妻の死が子供たちに伝えられないままだが、車が壊れれば娘婿の彼が気に入らない妻の父に来てもらう。トム・ハンクスの登場だ。

こちらもスカーレット・ヨハンソンが演じる、受賞者の娘の母であり演技に目覚めた時代のマリリン・モンローばりの女優は、セリフの練習に余念がない。やがて天才少年少女たちもビックリの大事件が発生した。町中が表彰式に集合、そこへ宇宙人が…。

というような物語を持つ新作芝居の内容と演出を見せる過程はカラーだが、テレビでオンエアされた部分はモノクロになって(1950年代のテレビはまだモノクロだった)上演中の劇場にいる作家、演出家、それを放送しているテレビ番組の司会者を見せて進んでいく。

これは脚本家のコンラッド・アープが書いた芝居で題して『アステロイド・シティ』。話の展開が唐突でよくわからない、と出演俳優は演出家に詰め寄るので演出家は頭が痛い。

ウェス映画らしい凝った映像でドラマが作られ、それを包み込むもう一つの物語がある入れ子作りになった話の原案はウェス・アンダーソンとロマン・コッポラ。それをもとにウェスが脚本を書いて監督、ロマン・コッポラは製作総指揮。出演俳優の多さが大変! 先の見えないエピソードの数々はエピローグへと続いていくのだろうか。

ドラマが子供たちの存在感と行動によって大人たちを困惑させながらステキな楽しさを生み出すのはいかにもウェス映画。出演はウェス映画の常連が大半だが、お馴染みビル・マーレイはコロナで倒れたそうで欠場、彼の代わりが名優トム・ハンクス!?

あらすじ

画像: あらすじ

隕石落下で出来た巨大クレーターが観光名所のアメリカ南西部の砂漠の町がアステロイド・シティ。ここへ子供たちの母の3週間前の死を伝えられずにいる父親の戦場カメラマン、オーギー(ジェイソン・シュワルツマン)に連れられて3人の幼い妹とやって来た14歳のウッドロウ(ジェイク・ライアン)は、ジュニア宇宙科学賞の栄誉に輝いて招かれた5人の天才子供たちの1人。到着するなり車が壊れて帰りはオーギーの妻の父スタンリー(トム・ハンクス)が迎えに来る。

もう一人の受賞少女ダイナ(グレイス・エドワーズ)の母ミッジ(スカーレット・ヨハンソン)はモンローばりの女優。ホテルの部屋で台詞の稽古中だ。そのあとの隕石落下記念のアステロイド・デイのセレモニーで町をあげての全員集合の中に宇宙人が出現! 警察・軍隊がかけつけて大騒動になった。

──というような話の芝居が上演される様子を司会者(ブライアン・クランストン)が説明してテレビ番組が放送されている。時は1950年代、TV画面はカラフルな砂漠の町とは関係なくモノクロに。この芝居はコンラッド・アープ(エドワード・ノートン)が書いたもの。芝居の意味が分からなくなった演出家シューベルト(エイドリアン・ブロディ)は困惑気味だが大丈夫、ドラマの中のアステロイド・シティでは来訪者はみんなさっさと帰宅中だ…。

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『アステロイド・シティ』
公開中
2023/アメリカ/1時間44分/配給:パルコ
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ジェイソン・シュワルツマン、 スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、ジェフリー・ライト、ティルダ・スウィントン、ブライアン・クランストン、エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディ、リーヴ・シュレイバー、ホープ・デイヴィス、スティーヴン・パーク、ルパート・フレンド、マヤ・ホーク、スティーヴ・カレル、マット・ディロン、ホン・チャウ、ウィレム・デフォー、マーゴット・ロビー、トニー・レヴォロリ、ジェイク・ライアン、ジェフ・ゴールドブラム

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