「午前十時の映画祭13」にて70年代に世界的オカルトブームを起こした「エクソシスト」のディレクターズカット版が9月1日(金)より公開された。
エクソシストとは悪魔祓いの祈祷師のことで、作家ウィリアム・ピーター・プラッティが1949年に実際に起こった「メリーランド事件」を元に書き上げた原作をウィリアム・フリードキン監督が映像化してオカルトブームを起こした。
映画のヒットを受け近代映画社ではスクリーン臨時増刊「恐怖!オカルト映画のすべて」を発売。その中では荒俣 宏 氏が特別読物「悪魔はキミを狙っている やさしい悪魔学」を執筆している。モデルとなった事件とは? 悪魔とは? 悪魔祓いとは? 当時の記事を一部抜粋にて掲載する。
(文・荒俣 宏)

悪魔とはなにか?

画像2: 映画「エクソシスト」より

映画「エクソシスト」より

では、悪魔とは何だろう? ひとくちに悪魔といっても、それを英語に訳せば次の三とおりのことばに分裂してしまう。
デビル(Devil)
――キリスト教の神に対立する悪の王者。闇と恐怖の大魔王。
サタン(Satan)
――試練の天使。もとは天使だったのが、天国で罪を冒し地上へ堕ちた。サタンは人間に試練をあたえ、その人間が最後の審判日に天国へ召されるのにふさわしいかどうか判定する。
デーモン(demon)
――悪霊、あるいは小悪魔。超自然的な力を持ち、人間に災いをもたらしたり、乗りうつったりする。

以上の区分からも分かるとおり、「エクソシスト」で少女リーガンに乗りうつる悪魔は、正しくいえば邪悪な力を持つ精霊――つまりデーモンを指しているわけだ。
悪の王デビルは、ペルシャの古い宗教ゾロアスター教に登場するアーリマンという闇の支配者から生まれた存在だ。いっぽう、堕ちた天使サタンは、天国に暮らしていたころの名をルシファーといい、光かがやくように美しい天使だった。事実、ルシファーとは「光の王」という意味を持つ名前であり、夜空に早やばやと輝きだす宵の明星(金星)は、このルシファーの生まれ代わりだと信じられていた。
さて問題はデーモンだ。世界各地には超自然的な力を持つ精霊がそれこそ無数に存在しいる。そして日本ではアマツキツネ(つまりオキツネさま)や犬神がこのデーモンに当たり、日本で起きる「キツネ憑き」や「犬神憑き」は西洋の「悪魔憑き」とまったく同じ現象を示すことになる。また、映画『エクソシスト』でメリン神父がイランの砂漠で堀り出したあの悪魔の像は、パズズといって、南風の精と信じられていた悪魔だ。イランでは南風が疫病を運んでくるからである。

This article is a sponsored article by
''.