映画祭での交流を通して『この映画を作って本当に良かった』と実感
ーー まず一言ご挨拶をお願いします。
（日本語で）「こんばんは。イ・ジョンジェです。よろしくお願いします」
ーー 来日は何年ぶりでしょうか？
「コロナ禍になる前に来ましたので、約3年半ぶりくらいだと思います」
ーー 初監督作品ですが、俳優業との違いや監督業について気づいたことを教えていただけますか。
「俳優だけに専念する際はキャラクターにひたすら集中することができますが、演出を兼ねると、本当に多くのことをチェックする必要がありますし、悩まなければならず、様々な判断や決定をすることがたくさんあります。色々な意味で違いがあると思いました。
撮影現場はこれまでも長い間経験してきました。また同時に演出家の方々とも親しくお付き合いをさせていただく中で、監督の悩みを聞いたり、一緒にその悩みを分かち合ってきました。ですが、いざ自分が演出をしてみるとなると、俳優だけに専念している時とは違うなという風に思いました」
ーー カンヌ国際映画祭やトロント国際映画祭など世界中の映画祭で上映され話題となっていますが、観客の方の反応をご覧になっていていかがでしたか？
「シナリオを書いている段階から、国際映画祭に出品できればいいなと思っていました。もちろん、自分の作った映画を海外の映画祭に出品したいという個人的な希望だけではありません。この映画を通して伝えたかったテーマやメッセージが、韓国の観客だけでなく、様々な国々の観客の方たちに届いてほしい、そして、その観客の方達とコミュニケーションを取ったり話したいという思いが強くあったんです。
この映画では誤ったイデオロギーがテーマとして描かれています。そのテーマに対する悩みをずっと持ちながら色々考えてこの作品を作り上げていきました。海外の映画祭に招待されたことによって、本当に多くの海外の方々と触れ合うことができました。
カンヌ国際映画祭だけでなく、トロント国際映画祭、シッチェス映画祭などで記者の方々や映画人の方々と一緒にこの映画について様々なことを語り合うことができたんです。公開前に映画祭に招待されることで多くの皆さんと出会うことができたので、私の気持ちの中では既に『あぁ、この映画を作って本当に良かった』と思えました。
それだけ多くの皆さんに共感していただけたので、僕にとってはこの映画が伝えたかったストーリーを皆様に届けることができて、それが本当に意味のあることだと思えたんです」
撮影序盤はお願いを遠慮する部分もあった、盟友チョン・ウソンとの共演
ーー 初監督作品で盟友のチョン・ウソンさんを主演に抜擢された経緯をお聞きできますか。仲が良いだけに監督と演技者として演出する時にやりづらかった事やかえって良かったことはありますか。
「1998年に『太陽はない』という映画でご一緒しています。その時以来、本当にいい思い出として自分の中にあったので『2人で早くまた違う作品で一緒にやりたいね 』という話をずっとしていました。
そのために、シナリオをいただいたり、または一緒にそのシナリオを共同で開発したりということもしていたんですけども、それがなかなか上手くいかなかったんです。そうこうしてる内に私の方で本作『ハント』のシナリオを書くことになったので『これ以上遅くならない内にぜひ一緒にまたやりましょう！』と伝えて、キャスティングさせていただきました。
親しいからこそ、撮影現場で大変だったことがあるとすれば、親しいせいか、逆にむしろ何かをお願いするのがすごくためらわれるような感じがあったことです。
例えば撮影の最初の方では『もう1回撮影しましょう』と中々言い出せませんでした。ちょっとお願いをしているような、そんな感じがしたんです。なので、初日撮影を終えた後に早くこのぎこちなさを解消しなければならないと思いまして、次の日からは僕がこれまで考えてきたシナリオを書いていた時に考えていた表現やテンポについて全てチョン・ウソンさんにお話をしたんです。説明を十分にしたところ、快くそれを受け止めてくれて、撮影現場では本当に助けてもらったと思っています」
ーー イ・ジョンジェさんとチョン・ウソンさんが演じた二人の男は背景に違いはありますが、お二人のどちらがどちらを演じられても良さそうだなと思いました。配役についてはどのように決められたのでしょうか。
「チョン・ウソンさんはとてもヒューマニズムのある方で、折り目正しく多くの方達にいいイメージを持たれている方なんです。普段から多くの人たちと心を分かち合う、そんな方として知られています。
そんなイメージを持たれているチョン・ウソンさの魅力を、最大限にこの映画の中でキャラクターとして引き出したい、表現したいという気持ちがありました。
ウソンさんのキャスティングが決まってからは、ウソンさんのそんな面を深く見せたいという思いがありましたので、シナリオのキャラクターをよく活かすためにシナリオの修正を加えていきました。
2人の役を入れ替えることもできたと思うんですけども、ウソンさんさんが本来持っているその姿に今回最もよく似合うキャスティングになっていると思いますし、またその最もよく似合っているキャスティングを最大限に引き出す役どころとして表現したいと思っていたんです」
『ハント』「イカゲーム」「スター・ウォーズ」が同時進行だった激動の日々
ーー 以前に来日されてから3年半の間に「イカゲーム」の大ヒットや「スター・ウォーズ」スピンオフへのご出演決定などがありました。どのようなお気持ちで激動の日々を過ごされていましたか。
「これまでも作品には、絶えず一生懸命ベストを尽くして取り組んできましたが、そこについては変わったことはないと言えると思います。そんな風に一生懸命作品を撮り続けてきたところ『イカゲーム』という作品で、多くの国の方々から人気を博すことになるという大事件が起きました。
アメリカでは大きな賞をたくさんいただきましたし、こんなに大きな福がもたらされるんだなぁと信じられない気持ちでした。どう受け止めていいかわからないくらい、自分にとっては実感の湧かない現実味のない状況だったんです。
その後、『ハント』の公開を韓国で準備している最中に『スター・ウォーズ』のキャスティングのオファーがありました。そのことは誰にも言ってはならないと言われていたので、私以外はマネージメント事務所のおそらく1人か 2人だけが知っている状況で、それを秘密にしている矢先に『ハント』の公開を迎えました。
『ハント』で様々な海外の映画祭にも行かせていただき、そんな中『スター・ウォーズ』の撮影のクランクインが近づいていました。本当に同時進行で様々なことをしながら『スター・ウォーズ』の作品の準備に取りかかり、セリフも覚え、体も鍛え、役作りについても色々考えなければなりませんでした。本当に目まぐるしい状況がずっと続いていたので、時間がどんな風に過ぎていったのかわからない感じがあったんです。
今の状況をお伝えしますと『スター・ウォーズ』を撮り終えて、今また『イカゲーム』の撮影をしているところです。作品の公開時にはプロモーションでまた忙しくなると思います。つまり、その忙しさが延々と終わっていない状況が続いているんです。本当に嬉しいこと、いいことだなと思いますし、こんな時こそもっと体調管理もしっかりしなければなと思っています」
『ハント』
9月29日(金)より新宿バルト９ほか全国ロードショー
配給：クロックワークス
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