『熊は、いない』(9月15日(金)公開/ジャファル・パナヒ監督)
ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞した、ジャファル・パナヒ監督の最新作。リモートで極秘に映画撮影をする映画監督が、撮影で訪れていた小さな村で起きたあるトラブルに巻き込まれていく物語。パナヒ自らが映画監督役として主演をつとめ、監督を軸に迷信や圧力、社会的な力関係によって妨げられる2組のカップルに起きる想像を絶する運命を描いている。
2つの物語から浮かび上がるのは、女性蔑視や宗教的な原理主義など、イランを襲っている暴動の現状。当然の自由を求める者と、規律を保守する側の軋轢を見事な構成力と緊迫感溢れる展開で描き世界を驚かせた。しかし、厳格なイスラム国家であるイラン政府に目をつけられ、2010年に逮捕され映画制作を禁じられているパナヒ監督。
以来、極秘に映画を撮り続けるも自国イランでは映画の上映が許されていない。さらに本作完成後、パナヒ監督はふたたび政府に拘束されてしまい世界に衝撃が走った。
9月15日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:アンプラグド
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『罪の手ざわり』
(2013年/ジャ・ジャンクー監督)
村の共同所有だった炭鉱の利益が実業家に独占されたことに怒った山西省の男。妻と子には出稼ぎだと偽って強盗を繰り返す重慶の男。客からセクハラを受ける湖北省の女。ナイトクラブのダンサーとの恋に苦悩する広東省の男――。彼らが起こす驚愕の結末とは? ごく普通の人びとである彼らはなぜ罪に触れてしまったのか?
中国で実際に起こった4つの事件を基に、急激に変貌する社会のなかで、もがき苦しみながらもひたむきに生きる人たちをパワフルかつセンセーショナルに描く濃厚な人間ドラマの傑作。カンヌ国際映画祭 最優秀脚本賞を受賞したが、シリアスで暴力的な内容が中国の検閲に引っかかり上映禁止に。
『ラフィキ:ふたりの夢』
(2018年/ワヌリ・カヒウ監督)
いまだ同性愛が違法とされ、禁固刑に処されることもあるケニアで上映禁止となった作品(のちに監督自らが熱心に活動し1週間だけ上映は行えた)。
看護師になるのが目標のケナは、古いしきたりにとらわれた周囲の人たちに満たされない想いを抱えていた。両親は離婚し、ナイロビで母と暮らしていたが、国会議員に立候補した父のことは応援している。そんな時、父の対立候補の娘で自由奔放なジキと出会う。互いに強く惹かれたふたりは、「私たちは本物になろう」と誓い合う。だが、友情が愛情へと変わり始めた時、ふたりはこの恋は命がけだと知る。強くひかれ合う2人の少女を、音楽やダンス、ファッション、アートなど現代のアフリカンカルチャーにのせて描いた、カンヌ国際映画祭 初のケニア出品作。
『少年たちの時代革命』
(レックス・レン監督、 ラム・サム監督)
2019年の香港の民主化デモに参加した若者たちが、自殺しようとする少女を救うため、民間捜索隊を結成して香港を駆け巡る姿を描いた作品。友情、恋愛、仲間割れ、出会い、家族…。岐路に立たされた2019年の香港で、若者たちは何を見つけ出すのか。
香港国家安全維持法施行により映画への検閲、規制も厳しくなり、香港の言論と表現の自由が狭まってきている一方、本作は海外映画祭を席巻、台湾アカデミー賞の最優秀新人監督部門をはじめ数々の映画賞を受賞。香港映画界に彗星のごとく現れ、大きな衝撃を与えた。
『白い牛のバラッド』
(2020年/ベタシュ・サナイハ監督、マリヤム・モガッダム監督)
愛する夫を死刑で失い、ろうあの娘を育てながら必死で生活するシングルマザー。1年後に突然、夫の無実が明かされ深い悲しみに襲われる。賠償金よりも判事に謝罪を求める彼女の前に、夫の友人を名乗る男が現れる。親切な彼に心を開き、3人は家族のように親密な関係を育んでいくが、ふたりを結びつける“ある秘密”には気づいていなかった・・・。
死刑執行数世界2位の国イランの懲罰的な法制度を背景に、シングルマザーの生きづらさ、理不尽に立ち向かう女性の姿を巧みに描き出した冤罪サスペンス。イランでは、2020年2月のファジル国際映画祭で3回上映された以降、政府の検閲により劇場公開の許可が下りず、上映がなされていない。