「韓流映画祭2023《第3弾》」が、9月22日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にて開催中。この度、第3弾の上映作品の中から見逃し厳禁の必見作『晩秋』(‘82)について、映画ライター・佐藤結氏による鑑賞コラムが公開された。

4度リメイクされた韓国メロドラマの代表作である1966年版『晩秋』

90年代の後半以降、世界を驚かす作品を次々と生み出してきた韓国映画界。しかし、さらに時代を遡って60年代には、10年間で1500本以上の新作が作られ「ルネサンス」と呼ばれていた時代があった。

スリラーやアクション、コメディ、時代劇など、多彩なジャンルの中で特に多くの観客を引き付けていたのが男女の恋愛を描くメロドラマ。そして、この時代を代表する名作として名高いのが、イ・マニ監督の『晩秋』(66)だ。特別休暇をもらって刑務所の外に出た受刑者と列車の中で彼女と出会った逃亡中の男との束の間の恋を描いたこの作品は、残念ながらフィルムが失われてしまっているため、現在、見ることができない。

しかし、限定された空間と時間が切なさを高めていくストーリーが見るものを引きつける『晩秋』は、日本の斎藤耕一監督が手がけた『約束』(72)を皮切りに、『下女』(60)のキム・ギヨン監督の『肉体の約束』(75)、イ・マニと並んで60年代を代表する巨匠として知られるキム・スヨンの『晩秋』(82)、ヒョンビンとタン・ウェイが主演し、舞台をアメリカに移した『レイトオータム』(11)と、4本ものリメイクが作られてきた。このことだけでも、オリジナル作品がいかに優れていたかをうかがい知ることができる。

今回、「韓流映画祭2023」で上映されるのは、82年版の『晩秋』。暴力に耐えかねて夫を殺した罪で大邱の刑務所に収監中の女ヘリムが、母の墓参りをするために列車に乗り、江原道の海沿いの町、束草へと向かう。その後、列車に乗り合わせていた男ミンギと、乗り換えたバスの中で再会した彼女は、彼に対して次第に好感を持つようになるが、刑務所へと戻る時間が刻々と迫ってくる。

ヘリムを演じているのは、ポン・ジュノ監督の『母なる証明』(09)やドラマ「わたしたちのブルース」(22)でおなじみの名優キム・ヘジャ。前半はほとんどセリフがないような暗い役柄だが、人生に絶望していたヘリムがミンギと出会ったことで少しずつ人間らしさを取り戻していく姿を繊細に演じている。当時、40代前半だった彼女の美しさも際立っている。ミンギ役は「冬のソナタ」(02)をはじめ、多くのドラマに出演してきたチョン・ドンファン。また、長く韓国ドラマを見てきた人にとっては、ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」(03)のヨ・ウンゲがヘリムに付き添う刑務官役で顔を見せているのもうれしい。

撮影は『春香伝』(00)、『酔画仙』(02)など、イム・グォンテク監督と組んだ秀作で知られるチョン・イルソンが担当。かなりケレン味の強いキム・ギヨン監督版(『肉体の約束』)に続く二度目の『晩秋』で、実力を発揮している。

80年代の韓国の風景を美しく収めた今作を堪能した後は、ぜひ、他のリメイク作も見てみてほしい。

Text:佐藤結(映画ライター)

『晩秋』作品概要 

上映期間:2023年10月27日~11月2日
上映館:シネマート新宿、シネマート心斎橋

原題:만추 英題:Late Autumn 
監督:キム・スヨン 出演:キム・ヘジャ、チョン・ドンファン
1982年/韓国/95分/配給:BBB

《あらすじ》 殺人罪で服役中の模範囚ヘリムは、特別休暇を取得し母の墓参りのために江陵行きの列車に乗る。その車内で青年ミンギと出会い、彼から執拗なアプローチを受ける。ミンギとの出会いで、刑務所生活で凍りついた心が次第に溶けていくヘリムだったが……。

©Boram Entertainment、Music&Film Creation、North by Northwest Entertainment

韓流映画祭2023《第3弾》

9月22日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にて開催中
[鑑賞料金]一般:2,000円/大学生:1,500円/TCG会員1,400円
高校生以下:1,000円/シニア(60歳以上)1,300円 ※各種サービス、利用可
公式HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/o/hanryu-2023.html
Twitter:@hanryu_2023

おうちでCinem@rt同時開催
[視聴料金]550円
[視聴期間]48時間
HP:https://www.cinemart.co.jp/vod/

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