巨匠リドリー・スコット最新作『ナポレオン』が2023年12月1日(金)公開。ナポレオンの妻を演じるヴァネッサ・カービーとリドリー・スコット監督のインタビューをお届けします。

ヴァネッサ・カービー

ヴァネッサ・カービー

画像1: 『ナポレオン』リドリー・スコット監督&ヴァネッサ・カービーにインタビュー

『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023)など話題作への出演が続くイギリスのトップ女優の一人。

1988年4月18日生まれ、イギリス・ロンドン出身。舞台女優としてキャリアをスタートさせ、「ザ・クラウン」(2016〜)のマーガレット王女役で脚光を浴びる。『私というパズル』(2020)でアカデミー賞主演女優賞にノミネート。

2025年公開予定の「ミッション:インポッシブル」シリーズ第8弾にもホワイト・ウィドウ役で続投。

画像1: ヴァネッサ・カービー

ホアキン・フェニックスは見ているだけですごいと思わせる人です

──『ナポレオン』はナポレオンと妻ジョゼフィーヌのラブストーリーでもあります。ジョゼフィーヌ役の役作りはどのように行ったのでしょうか?

脚本をもらった晩にすぐ読んで、とても気に入りましたが、私はフランス史について何も知りませんでしたし、こんなに自分が知らなかったことに驚きさえしました。少なくとも準備に3ヶ月は必要なのですが、今回は1ヶ月でしたのでとても大変でした。

二人に関する読める限りの本を読むことにしました。調べ物をしようとすると、ナポレオンに関する本は何千冊もあるのに、ジョゼフィーヌに関する本は60冊程度しかないのです。そのことが印象的でした。

そして彼女について学ぶのはとても楽しいことでした。パリ郊外のマルメゾン(晩年ジョゼフィーヌが暮らした場所)にも行き、市内の小さな教会の裏にある彼女のお墓も訪れました。ナポレオン博物館やマルメゾンでその歴史と時代に没頭し、彼女について学ぶことができたのはとても光栄でしたし、彼女を演じることに大きな情熱を感じました。

──ジョゼフィーヌがどのように生きてきたのか、監督と一緒に掘り下げていったそうですね。

ジョゼフィーヌは独りで生きられる力を持っていたのに、皇帝となるナポレオンとの関係によって、その力はゆっくりと失われていきました。ナポレオンは独裁者で、ジョゼフィーヌのことも他の国々のことも支配し、多くの人を殺しました。そして彼女の中の炎も消えてしまったのだと思います。

激しいエネルギーを秘めつつ、本当の自分であることを許されなかったジョゼフィーヌのような人物を演じるのは、とても複雑でとても難しい挑戦でした。

『何てことなの。彼女のように可能性や能力、炎を持ちながら、それを表現する場を与えられなかった女性が、歴史の中にはたくさんいるに違いない』

と思いながら演じていました。

画像2: ヴァネッサ・カービー

──ナポレオン役のホアキン・フェニックスとの共演はいかがでしたか?

ホアキンは、特異な心理描写を見事にやってのけていました。ナポレオンの中にある真っ黒で不穏な部分に恐れずに踏み込んでいくホアキンの姿は、本当に驚異的でした。

それでいて、セットから離れるとみんなと一緒に笑ったり楽しい時間を過ごしたりしていて、本当に見ているだけですごいと思わせる人です。

──『グラディエーター』以来のタッグとなるリドリー・スコットとホアキン・フェニックスの関係を間近で見てどのように感じましたか?

リドリーは紛れもない巨匠ですし、とても親切で愛情深くて温かい人です。そして楽しそうに仕事する人です。昔からずっと、そして今も変わらず映画作りが大好きでたまらないのでしょうね。そして、その愛が周囲に伝播していくんです。

リドリーとホアキンが再タッグを組んで密接に仕事をする姿を見られてうれしかったです。2人の間にはとても強い絆があるんです。『グラディエーター』のときからの歴史があり、きっと家族のような関係なのだと思います。

リドリー・スコット監督

リドリー・スコット

画像2: 『ナポレオン』リドリー・スコット監督&ヴァネッサ・カービーにインタビュー

『エイリアン』(1979)や『ブレードランナー』(1982)など映画史に残る名作を生んできた現在85歳の世界的巨匠。

1937年11月30日生まれ、イギリス・サウス・シールズ出身。『デュエリスト/決闘者』(77)で長編映画デビュー。

アカデミー賞作品賞など5部門で受賞した『グラディエーター』(2000)をはじめ『キングダム・オブ・ヘブン』(2005)『エクソダス:神と王』(2014)など数々の歴史スペクタクル大作を手掛け、今回の新作『ナポレオン』はその集大成ともいえる一本。

2024年には『グラディエーター』の続編が公開予定。

画像1: リドリー・スコット監督

歴史に惹かれるのは私たちがその過ちから学んでいないから

──なぜナポレオンに惹かれるのか理由を教えていただけますか?

人々が今でもナポレオンに魅了される理由の一つは、彼がとても複雑な人物であったことだと思います。彼の人生を簡単に定義することはできません。伝記を読めば何が起きたのかは分かりますが、私が映画監督として惹かれたのは彼の人物像であり、それが歴史を超えて心の中に入ってくることです。

そして、ナポレオンの歴史は現代史の始まりです。彼は世界を変え、ルールを書き換えました。素晴らしき戦略家で、優秀で、直感的で、そして無慈悲な政治家であることは別として、私はなぜモスクワを征服しようとしているような男が、その間パリで妻が何をしているのかについて気を揉むのだろうかということに魅了されました。

そして、彼はすすり泣く羽目になります。私たちが知るヨーロッパ王座への道を切り開く男、戦術の天才が、小さな、無力な男になるのです。

彼はソファの隣に座る女性を心から愛しており、彼女なしでは自分は無価値だと認めているのです。彼女への手紙は滑稽なほど無作法で幼稚で、過度にロマンティックで、かなり卑猥です。彼は彼女に心酔していました。

画像2: リドリー・スコット監督

──デビュー作である『デュエリスト/決闘者』に始まり、前回ホアキン・フェニックスと組んだ『グラディエーター』、最近の『最後の決闘裁判』など、キャリアの中で歴史ドラマが重要な位置を占めていますね。

私は、歴史ドラマが好きなのです。歴史はとても興味深いものです。なぜなら、私たちはそのすべての過ちから学んでいないのですから。

『グラディエーター』を製作した約1年後、ある有名大学の講師から手紙を受け取りました。そこには、『ローマ帝国に命を吹き込んでくださったことに感謝を申し上げたい』と書かれていました。そのおかげで、彼の学生たちはこの題材に熱中するようになったそうです。

歴史映画を作ることは、“これが起こったかもしれないし、あれが起こったかもしれない”という研究から導かれたものを選択することです。

──『グラディエーター』以来となるホアキン・フェニックスとの再タッグはいかがでしたか?

ホアキンを見て、すべてが鮮やかに蘇りました。彼が『グラディエーター』にどのように取り組んだか、あのキャラクターを演じることでどのような経験をしたのか。彼こそがナポレオンだ、と思いました。

彼は私にとって、撮影の何週間も前から一緒に話をし、ただおしゃべりをしたりキャラクターについてオフィスで討論したりする唯一の俳優です。最終的に、私たちは同じ考えを共有します。彼は正直でいてくれますし、私も彼に対して誠実さを大事にするので、お互いにとって良い存在です。

身体的にも彼は役にぴったりです。彼の顔の特徴のいくつかは、驚くほどナポレオンに似ています。ホアキンは彼の歩き方、話し方、座り方に着目していました。私たちは、彼がどのような人物であるかについて絶えず話し合っていました。

『ナポレオン』
2023年12月1日(金)公開
アメリカ=イギリス/2023/2時間38分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:リドリー・スコット
出演:ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、ルパート・エヴェレット

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