ロアルド・ダールが生み出し、『夢のチョコレート工場』(71)ではジーン・ワイルダー、『チャーリーとチョコレート工場』(05)ではジョニー・デップが演じた人気キャラクター、ウィリー・ウォンカ。そんなウォンカの夢のはじまりを描くファンタジー大作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』がいよいよ12月8日(金)に公開される。本作のプロデュースを手掛けたのは映画「ハリー・ポッター」「ファンタスティック・ビースト」シリーズのデヴィッド・ヘイマン。公開に先駆けて来日したヘイマンが、主演ティモシー・シャラメの起用理由やファンタジー作品を製作する際に大事にしていることについて語ってくれた。(取材・文:奥村百恵)

“(ティモシーは)ウォンカ役に必要な要素を全て持っているように感じました”

ーー本作をミュージカルシーンでいっぱいにするというアイデアは最初からあったのでしょうか?

「最初はミュージカルシーンを多くする予定ではなかったのですが、本作の監督と脚本を務めたポール・キングが、脚本を書いている最中にミュージカルの要素を入れていき、最終的にミュージカル作品になりました。ただ、『バービー』(デイビッドがプロデューサーを務めた映画)の時みたいに、コンテンポラリーなものではなく、かといってクラシックすぎない、タイムレス(時代を超えた)なミュージカルシーンになっています」

画像: デヴィッド・ヘイマン

デヴィッド・ヘイマン

David Heyman
1961年7月26日イギリス生まれ。「ハリー・ポッター」「ファンタスティック・ビースト」「パディントン」などの人気シリーズから『バービー』(23)まで話題作を多数手がける。今後も「ハリー・ポッター」のTVシリーズや、「進撃の巨人」の映画化など大忙し!

ーー主人公であるウィリー・ウォンカ役のティモシー・シャラメが歌って踊るミュージカルシーンや、映画のサウンドトラックも楽しみです。

「『夢のチョコレート工場』の「Pure Imagination」や『チャーリーとチョコレート工場』でウンパルンパが歌う曲はとても素敵で印象深いですよね。もちろんそういう曲もありますが、本作はジョビー・タルボットが作曲した、優しくて、ちょっと面白くて、とても美しい曲がたくさん流れますので楽しみにしていてください」

画像: “(ティモシーは)ウォンカ役に必要な要素を全て持っているように感じました”

ーー話題作が続く人気俳優のティモシーを、ウォンカ役に起用した理由をお聞かせいただけますか。

「若い頃のウォンカは、人に対してとてもオープンで、純粋であるがゆえに傷つきやすい少年のような心の持ち主です。また、この頃は皮肉屋な感じもないんですよね。そんなウォンカには誰が良いのか考えているときに、ティミー(ティモシーの愛称)の出演作やインタビュー映像などを見たらウォンカ役に必要な要素を全て持っているように感じました。それで彼にオファーしました」

ーー撮影現場でのティモシーはどのような感じでしたか?

「カットをかけたあと、監督は俳優たちに撮ったシーンをモニターに映して見せるのですが、その時に自分の芝居に納得がいかなくて落ち込んでしまう俳優がいるんです。ところがティミーの場合は、“作品をもっと良くするためにどうすれば良いのか”を考え、次のテイクで違う芝居をしてみせるんですよね。もちろんそれは監督が彼に対して“自由にやってください”というスタンスでいたのも大きいと思うのですが、特別なシーンの撮影の時だけじゃなく、どんな時も意欲的に作品作りに参加していたので、本当に素晴らしい俳優だと思いました」

ーーティモシーが撮影でチョコレートを食べすぎて大変だったみたいなエピソードはなかったですか?

「ティミーはチョコレートを作る側だったので食べすぎてはいなかったと思いますが、ポール監督はすごく食べていましたよ(笑)。ものすごく美しいデザインの美味しいチョコレートを作ってくださる職人の方がいて、撮影現場のセットに次から次へとチョコが置かれていくので、私も結構食べちゃいました(笑)。ぜひ劇中のチョコレートにも注目してみてください」

“現実の世界とファンタジーの世界に何かしらの接点や共感性がなくてはならない”

ーーデヴィッドさんはこれまで「ハリー・ポッター」シリーズや「ファンタスティック・ビースト」シリーズなどファンタジー作品を数多くプロデュースしてらっしゃいますが、ファンタジー作品を製作するときに大事にしていることは何かありますか。

「私はただのファンタジーには全く興味がなくて、どちらかというと物語に登場するキャラクターの内面や人間らしい部分がしっかりと描かれている作品に惹かれることが多いです。というのも、映画にするからには、自分たちが生きている現実の世界とファンタジーの世界に何かしらの接点や共感性がなくてはならないと思っているからです。

私が子供の頃に通っていた学校は、ホグワーツ魔法魔術学校のようなところだったんですね。もちろん魔法は教えてくれませんが(笑)。でも外観はよく似ていたんです。それから『パディントン』のブラウン一家が住むウィンザーガーデン32番地は、実在しないけれど私がよく知っている場所がモデルになっています。そんな感じで、共感できるキャラクターがたくさん出てくることと、“現実にこういう場所ってあるよね”と思うようなロケ地を探すことを大事にしています」

画像: “現実の世界とファンタジーの世界に何かしらの接点や共感性がなくてはならない”

ーー先ほど「ウォンカは傷つきやすい心を持っている」とおっしゃっていましたが、そこに共感する人も多いのではないかと思います。

「誰しもが“どこかこの世に馴染めない”とか“自分はアウトサイダーな存在なのではないか”と感じたことが一度はあると思うんです。幸せを感じる日々を過ごしていても、ふと寂しくなったり孤独を感じたり。ウォンカもそれと同じような悩みを抱えていて、なんとなく自分がいる場所に馴染めないと思っている。だけど、同じような孤独を抱えた人たちが集まって何かを共有することで、世界が少し素敵になるかもしれないですよね。本作のウォンカは、自分が作ったチョコレートを多くの人と共有したいと思っている。それこそが本作のテーマになっているので、あらゆる世代の人たちに観ていただきたいです」

ーーみんなで同じものを共有するといえば、映画館が思い浮かびますが、デヴィッドさんの思い出に残る映画館での体験をお聞かせいただけますか。

「昔、名作映画を上映する映画館で、ローレンス・オリヴィエというイギリスを代表する名優が出演した『嵐が丘』や『ヘンリィ五世』などの映画を観るのが好きだったんです。そういった映画は自分の知らない世界に連れて行ってくれますし、劇場のスクリーンで観ると没入感があって感動も大きいんですよね。それを大勢の観客と共有できる映画館が私は大好きです。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』も映画館で楽しんでいただけたら嬉しいです」

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
12月8日(金)全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画 
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