左手の肘から先の形をした呪物を握り「トーク・トゥ・ミー」と話しかけると、正体不明の霊に憑依される。ただし、90秒間以内に手を離さなくてはならない。このSNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」に挑戦した女子高生ミアを描くホラー映画『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』が全米大ヒット。この映画を生み出したオーストラリアの双生児監督ダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟が来日。人気YouTuberコンビとしても活動中の2人は、取材中もまるで漫才コンビのような陽気さで、お互いの発言に追加し合い、しばしば爆笑しながら、映画についてたっぷり語ってくれた。(取材・文/平沢薫)

ダニー「この映画にはサブテキストがたくさん仕込んである」

――この映画は人気監督たち、『ミッドサマー』のアリ・アスターや『NOPE/ノープ』のジョーダン・ピールが絶賛したことでも話題を集めました。彼らからは直接、接触があったんでしょうか。

ダニー「この映画の全米公開中は、僕らが大好きなクリエイターたちから、次から次へとメールが来たので、夜も眠れなかったよ(笑)。アリ・アスターはもう友達だ。彼はサンダンス映画祭のプレミアで見て、声をかけてくれたんだ。あの『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督もメールをくれて、会いたいと言ってくれたよ」

マイケル「ピーター・ジャクソンは、そのメールの引用をこの映画の宣伝に使えるようにと言ってくれたんだ、ほら、これだよ(と言ってスマホのメールを見せて、読み上げて)『またこういう興奮を感じられるとは思わなかった、子供の頃みたいにワクワクしている、僕はこの映画の大ファンだ』と書いてる。ものすごく嬉しかった」

画像: (左から)ダニー・フィリッポウ、マイケル・フィリッポウ

(左から)ダニー・フィリッポウ、マイケル・フィリッポウ

――この映画は、ホラー映画としてだけではなく、さまざまな捉え方が出来るストーリーも魅力です。映画のティーンたちの間で流行する「#90秒憑依チャレンジ」は、ドラッグやアルコールのような危険物のメタファーでもあります。

ダニー「そうなんだ、この映画にはサブテキスト(表面には描かれていない暗示的なもの)がたくさん仕込んである。彼らが、呪物の左手を握った時に、何の霊が降りてくるのかにも、サブテキストがあるんだ」

マイケル「どういう霊が降りてくるかは、その子供たちの中に何があるのかによる。霊は、彼らの中にある何かに引き寄せられてくるんだ。ドラッグやアルコールと同じで、よくない状態で左手を握ると、あまりいい霊に憑依されない」

画像: ダニー「この映画にはサブテキストがたくさん仕込んである」

ダニー「似たようなシーンが『対』になって出てくることも意識した。冒頭のハイウェイで鹿を殺せないシーンと、ラスト近くのハイウェイのシーン。憑依されたダニエルと犬のシーンと、憑依されたミアとダニエルのシーンという具合に」

マイケル「オープニングのシーンはワンショットで、ラスト近くの病院のシーンもワンショットで『対』になっている。冒頭のワンショットのシーンを入れたのは、映画を見ている人をこの世界に引き込むためだよ」

ダニー「何回も反復して出てくるイメージもあるよ。ビジュアル面にも聴覚面でも、隠されているものがたくさんある。毎回、映画を見直すたびに、何かが見つかるようにしたんだ」

マイケル「リアルな10代が描けたのはキャスティグの成果も大きい」

――現代のティーンたちをリアルに描いていることもこの映画の魅力です。彼らの状況をよく知っているのは、お2人のYouTuberとして活動しているせいもありますか。

マイケル「僕らはYouTuberを10年以上もやっているから、ティーンがどんなものに反応するか、どんなものに興味を持つか、よく知ってる。それは役に立ってるね」

ダニー「SNSだけじゃなくて、リアルな友人も参考にしてるよ。映画の登場人物ライリーは、僕らの近所に住んでるライリーが元になってるんだ。そのライリーにも映画と同じように、ジェームズという親友がいる。2人が普段、どんなやり取りをしているのかも参考にしている」

マイケル「リアルな10代が描けたのはキャスティグの成果も大きいと思う。この人なら信じられる、信憑性があると思う俳優を選んだから。そのためにキャスティングには2年間くらいかけたんだ」

ダニー「時間がかかったのはコロナのせいもあるけどね。オーストラリア中の俳優をオーディションしたんじゃないかな(笑)。でも、その役にピッタリの俳優が来たときは、これがミアだ、これがヘイリーだ、と最初のオーディションで分かる」

マイケル「オーディションで見せてくれなかったものは、本番でも見せてもらえないしね」

ダニー「そうやってぴったりの俳優を選んだから、脚本はあるけど、彼らが自然に話せるように、彼ら自身にセリフを自由に変更してもらった。僕らは強いビジョンを持って脚本を書いたけど、実際に俳優たちが反応しあって、脚本を超えて作品を高めていくのを見るのは最高だったよ」

――さて、お2人はホラー映画などのジャンル映画が大好きだと伺っていますが、好きな映画を教えていただけますか。

マイケル「僕らの趣味はものすごく似てるんだ、ダニーの方が僕より批評的だけど」

ダニー「僕の方が賢いから」

マイケル&ダニー「(爆笑)」

画像: マイケル「リアルな10代が描けたのはキャスティグの成果も大きい」

マイケル「僕はポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』(03)。それと、新藤兼人監督の『鬼婆』(64)。古い映画なのに、今見ても怖いっていうのはスゴイことだと思う」

ダニー「僕はTVシリーズの『イン・トリートメント』(08~)。セラピストと患者の会話劇なんだけど、登場人物に入れ込んでしまう。コップの水をかけただけでも、自動車の衝突事故みたいな衝撃を受けるんだ」

――お2人はYouTuber出身ですし、現在は誰もが動画を撮る時代です。今、映画製作を志している人にメッセージをお願いします。

マイケル「今、映像を創るツールは簡単に手に入る。だから、とりあえず作り始めることだ。僕らは6、7歳の頃から動画を撮り始めて、9歳くらいから真剣にやり始めた。やればやるほどスキルは上達する」

ダニー「すごく失敗しても、それは次の参考になる。だから、とにかく今すぐ撮り始めることだ」

『TALKTO ME/トーク・トゥ・ミー』
12月22日(金)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

画像: 『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』本予告【YT】 12.22(金)公開! youtu.be

『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』本予告【YT】 12.22(金)公開!

youtu.be

監督:ダニー&マイケル・フィリッポウ
出演:ソフィー・ワイルド, アレクサンドラ・ジェンセン, ジョー・バード
配給:ギャガ
© 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia

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