多くの名監督に愛される名優ハーヴェイ・カイテル
ハーヴェイ・カイテルは1939年、アメリカはニューヨーク・ブルックリン生まれ。現在はアル・パチーノ、エレン・バースティンと共に、俳優養成所「アクターズ・スタジオ」の学長も務めている。映画デビュー作は、マーティン・スコセッシの初監督作『ドアをノックするのは誰?』(67)。その後、スコセッシ監督作『ミーン・ストリート』(73) 『アリスの恋』(74)『タクシードライバー』(76)にも出演。近年でも『アイリッシュマン』(19)にも出演しており、スコセッシとは盟友中の盟友。
ほかにもリドリー・スコット(『デュエリスト/決闘者』(77)、『テルマ&ルイーズ』(91))、ウェイン・ワン(『スモーク』(95))、テオ・アンゲロプロス(『ユリシーズの瞳』(95))、アベル・フェラーラ(『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(92))、ウェス・アンダーソン(『ムーンライズ・キングダム』(12)『グランド・ブダペスト・ホテル』(14))、パオロ・ソレンティーノ(『グランドフィナーレ』(15))など錚々たる監督たちとタッグを組み、いずれの作品でも唯一無二の存在感を放っている。
『レザボア・ドッグス』では製作面でも大きな支えとなったカイテル
『タクシードライバー』や『デュエリスト/決闘者』などを観て、カイテルといつか一緒に仕事をするのが夢だったというタランティーノ。そんな彼が『トゥルー・ロマンス』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の脚本を売ったお金を元手に「3万ドルで撮ろう」と書き上げたのが『レザボア・ドッグス』の脚本だった。その脚本はツテをたどってカイテルに渡り、映画の企画が急速に動き出す。
脚本を読んだカイテルはすぐに直接タランティーノに電話して「脚本が素晴らしい。出演はもちろん、プロデュースをしてもいい」と伝えた。他のキャストと会うための旅費やオーディションの会場なども提供し、ティム・ロスやマイケル・マドセン、スティーヴ・ブシェミなど個性的で実力のある俳優の出演が決まっていった。そして何より、カイテルが参加したことでタランティーノの話に耳を傾ける人が増え、ハリウッド作品としては低予算ではあるものの資金調達にも成功し、1991年に撮影が始まった。
カイテルは『レザボア・ドッグス』の共同製作者として大いに貢献しただけでなく、劇中ではMr.ホワイトとして渋い魅力を存分に発揮。鮮烈なインパクトを残している。そして「この素晴らしい作品、素晴らしい才能を世界に送り出す手助けをしたい」というカイテルの思いの通り、『レザボア・ドッグス』は後世に残る作品となった。一緒に働く夢が叶っただけでなく、製作の手助けまでしてもらったタランティーノ。後年、インタビューでは「最初の電話を留守電のテープに録音し、大事にとってある」とカイテルへの感謝の思いを明かしている。カイテルとタランティーノ、二人の映画人の初コラボレーション作品『レザボア・ドッグス』。ぜひこの機会に映画館で楽しんでみてほしい。
『レザボア・ドッグス デジタルリマスター版』
2024年1月5日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
計画を遂行するためだけに集められた6人の男たち。狙いは宝飾店。準備も万全だった。しかし、襲撃と同時に彼らは罠にハメられていたことに気づく。男たちは集合場所にたどり着くが、ある疑いを捨てきれない。裏切者がいるのではないか? 男たちはぶつかり合い、やがて予想しなかった結末を迎える。
監督・脚本: クエンティン・タランティーノ
プロデューサー:ローレンス・ベンダー
製作総指揮:リチャード・N・グラッドスタイン、ロンナ・B・ウォーレス、モンテ・ヘルマン
共同プロデューサー:ハーヴェイ・カイテル
撮影監督:アンジェイ・セクラ
美術デザイン:デヴィッド・ワスコ
衣装デザイン:ベッツィ・ヘイマン
音楽監修:カリン・ラットマン
編集:サリー・メンケ
出演:ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、クリストファー・ペン、スティーヴ・ブシェミ、ローレンス・ティアニー、カーク・バルツ、エディ・バンカー、クエンティン・タランティーノ
1992|アメリカ|99分|スコープ|原題:RESERVOIR DOGS|字幕:齋藤敦子 キングレコード+ハピネット・メディアマーケティング共同提供|鈴正+フラッグ共同配給 PG-12
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